要旨

 

第1章では、前提条件として、①データは『会社四季報』である事、②リスクはコーポレートリスクのみを扱う事、③貨幣的インセンティヴのみを経済行為として扱う事、④格付のデータは日本格付研究所(JCR)と日本格付投資情報センター(R&I)の両社の判断基準を併用する事、⑤格付得点は等距離の間隔尺度として扱うという前提条件を立て、格付得点を従属変数とした時の独立変数と成り得る諸変数に正の変数には総資産・自己資本比率・ROEが当てはまり、負の変数として不良債権総額・一株当たり配当金が当てはまると仮定した。

 第2章では、変数の利用につき、個々の変数或いは類型化した変数のどちらを用いるのが適切かを相関係数の強度により判別し、それから合計42の変数を取り扱うにあたって代表変数を抽出しなければならないが、その操作の手始めとして8つの時間軸を取る時間変数を時間軸を一時外生変数とせんが為、標準化を試みるにあたり3つの代表値即ち平均値・中位数・最頻値の内のどれかを採用する事となるが、その内平均値を代表値と決定した。

 第3章では、先ず第二章で相関係数の強度が強かった変数の内、重回帰分析を行うにあたり更に変数を絞り込む必要により、非数値的説明による変数の整理を行うことにより、3変数に迄変数を絞り込み、それから2000年度の期待格付記号を割り出したが、その手法は線形並びに非線形の重回帰モデルによる代入法を用いる事とした。そして、重回帰モデルは3変数の様態をよりよく表している非線形回帰分析の方を採用し、この分析を行うと、全行の格付記号が全体的に上昇していることが見て取れた。

 

結論は、①外部負債や予想ROEは格付記号に対する影響力としては弱い若しくは比較的弱い変数として存在すること、②一株当たり配当は収益に対するリスクプレミアムとしての働きが認められること、③線形重回帰よりも非線形重回帰の方が3変数の曲線の様態をより適切に表していたこと、④『会社四季報』の経常利益及び一株あたり配当の期待値と格付機関の格付けにつき、財務データからの非線形重回帰分析による導きの出力での期待格付記号は全体的に上昇する傾向がみられること、の以上である。