看護形態機能学IV試験問題    山田幸宏/本田智子 平成16(2004)1122

正解を一つ選び,その番号を看護形態機能学IV答案用紙に記入して下さい.

(問題1) 糖質 (saccharide/炭水化物carbohydrate)について正しいのはどれですか.

 

1.ピルビン酸は酸素の供給が不十分であるとミトコンドリアのマトリックス(基質)へ移行し,アセチル補酵素A(acetyl coenzyme A, acetyl CoA)に変化したあと,クエン酸回路(tricarboxylic acid cycle, TCA)へはいる.

2.グルコースを利用する経路としてアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate ATP)を産生する解糖系,還元型ニコチンアミドジヌクレオチドリン(reduced NADP, nicotinamide adenine dinucleotide phosphate, NADPH)を供給し,DNARNA合成系にペントースを供給するペントース(pentose五炭糖)リン酸回路,グリコーゲンの合成と貯蔵の3つがある.

3.肝臓でのグリコーゲンの合成はグルコースがグルコキナーゼにより,グルコース-6-リン酸(G6P)になり,細胞内のATPの濃度が高いときには解糖反応は亢進し,グリコーゲン合成の方向へ進む.

4.糖質は大部分がエネルギー源として利用されるが,一部胆嚢でアセチールCoA,マロニールCoAから脂肪に変換される.

5.オリゴ糖(oligosaccharide)は単糖がペプチド結合(peptide bond)したものである.

 

(問題2) 蛋白質(protein)の代謝について正しいのはどれですか.

 

1.グルタミン酸(glutamate)はグルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenas)によりαケトグルタル酸になり,アミノ基はアンモニアとなり,アンモニアは肝にて尿素回路(urea cycle, ornithine cycle, Krebs-Henseleit cycle)により処理され尿素(urea)になる.

2.アミノ酸がそのカルボキシル基を失って,エピネフリンなどのアミンとなる反応をカルボキシル基(炭酸)反応という.

3.蛋白質は蛋白質分解酵素や,蛋白質キナーゼ(protein kinase)により分解される.

4.糖原性アミノ酸はクエン酸回路に入り,ATPを産生し,糖分解が行われる.

51つのアミノ酸のアミノ基がαケト酸に移され,新しいアミノ酸をつくり,もとのアミノ酸の炭素骨格がケト酸になるのがアミノ酸転移(transamination)反応である.

 

(問題3) 脂質(lipid)について正しいのはどれですか.

 

1.脂肪酸のβ酸化によって生じたアセチルCoAはクエン酸回路へ入り,エネルギー消費を行う.

2.リン脂質(phopholipid)を構成するアラキドン酸(arachidonic acid)からシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase)によりプロスタグランジン(prostaglandin),トロンボキサン(thromboxane)が,リポキシゲナーゼ(lipoxygenase)によりロイコトリエン(leukotriene)がつくられる.

3.トリグリセリド(triglyceride)が分解すると脂肪とグリセロールを生じる.

4.高密度リポタンパク質high-density lipoprotein, HDLは動脈硬化促進因子である.

5.カイロミクロンchylomicronは小腸粘膜上皮から吸収されてリンパ管を通り,胸管を経て右鎖骨下静脈へ移行し,肝臓,脂肪組織などに取り込まれる.

 

 (問題4) 血液(blood)について正しいのはどれですか.

 

l.ヘム(heme)の鉄に酸素が結合している 血色素(ヘモグロビンhemoglobin)を酸化ヘモグロビン(メトヘモグロビンmethemoglobin)という.

2.ヘムの鉄に水素が結合しているヘモグロビンを還元ヘモグロビン(デオキシヘモグロビンdeoxyhemoglobin)という.

3.成人ヘモグロビン(ヘモグロビンAHbA)のほうが,胎児ヘモグロビン(ヘモグロビンFHbF)よりも酸素に対する親和性が強い.

4.ヘモグロビンが分解されると胆汁色素(bile pigment,ビリルビンbilirubin)がつくられ, 血清アルブミンと結合して直接(direct)ビリルビンとなり,さらに肝でグルクロン酸抱合(glucuronidation)され 間接(indirect)ビリルビンとなり胆汁中に分泌される.

5.赤血球が破壊されると鉄はヘモグロビンから離れ,トランスフェリンと結合して貯蔵され,再利用され,またポリフィリン部分は肝に運ばれて,胆汁色素となり排出される.

 

(問題5) (kidney)の機能について正しいのはどれですか.

 

1.アルブミン(albumin)はグロブリン(globulin)よりも分子量が小さいので,糸球体(glomerulus)で濾過(filtration)される.

2.腎における1分間当たりの濾過量(filtration rate)を尿細管濾過量(tubular filtration rate)という

3.糸球体濾過量(glomerular filtration rate)はクレアチン・クリアランス(creatine clearance)で測定する.

4.尿中クレアチニン(cleatinine)は体内の筋組織の量を反映しているので,食事の種類や尿量とは無関係に同一のヒトでは毎日ほぼ一定である.

5. 鉱質コルチコイド(mineralocorticoid)であるアルドステロン(aldosterone)は腎尿細管においてナトリウムの再吸収(reabsorption)を抑制し,カリウムの排泄を低下させる作用がある.

 

(問題6) 炎症(inflammation)について正しいのはどれですか.

 

1.  炎症刺激があると,血管は収縮し,透過性(permeability)は亢進する.

2. 好中球の殺菌作用はリソソーム(lysosome)という酵素により行なわれる.

3. 好中球のスーパーオキシドアニオン(superoxide anion/O2-)は貪食作用を示す.

4. 好中球のスーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase)はスーパーオキシドアニオン(O2-)から過酸化水素(H2O2)を生成し,過酸化水素は殺菌作用を示す.

5. 急性炎症はリンパ球の浸潤(infiltration)が中心であり,慢性炎症は好中球やマクロファージの浸潤が中心となる.

 

 (問題7) 遺伝子(gene)について正しいのはどれですか.

 

1. 逆転写酵素(reverse transcriptase)RNAを鋳型(template)にしてDNAを合成する酵素で,ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus, HIV), 癌ウイルスなどレトロウイルス(retrovirus)に存在する.

2. 伝令RNA(messenger RNA, mRNA)は末端に長いポリA配列(poly A sequence)を持つので,それに相補的なオリゴデオキシチミジル酸(オリゴdT)をプライマー(primer)として転写酵素を用いて相補的DNA(complementary DNA, cDNA)を合成する.

3. サザンブロット(Southern blotting)法はRNA断片を電気泳動し,そのRNAに相補的なDNA あるいはRNAプローブ(probe)のハイブリッド形成(hybridization:相補的結合)を検出する方法である.

4. ノーザンブロット(Northern blotting)法はDNA断片を電気泳動し,そのDNAに相補的なDNA あるいはRNAプローブのハイブリッド形成を検出する方法である.

5. ウエスターンブロット(Western blotting)法は蛋白質を検出する方法であり,抗原を用いて検出する.

 

(問題8) 移植(transplantation)について正しいのはどれですか.

 

1. ヒトからヒトへの移植を異種移植(xenogenic transplantation)という.

2. 一卵性双生児(monozygotic twins)でも組織適合抗原(histocompatibility antigen)は一致しないことがある.

3. 抗体(antibody)により移植片(graft)は拒絶(rejection)される.

4. 移植片対宿主反応(graft-versus-host reaction)は移植片の中に含まれるドナーリンパ球(donor lymphocyte)が拒絶されずに生着し,レシピアント(recipient)に対して起こす免疫応答をいう.

5. 拒絶反応(rejection reaction)を押さえる薬剤を免疫増強剤(immunopotentiater)という.

 

(問題9) 糖質(saccharide:炭水化物carbohydrate)について正しいのはどれですか.

 

1.  D-グルコースとD-マンノースはエピマーである.

2.  D-グルコースはα-アノマーの環状構造から構成されている.

3.  D-グルコースは還元されると,D-グルコン酸あるいはD-グルクロン酸になる.

4.  D-グルコサミンはアミノ基を持つアミノ酸である.

5.  二糖にはマルトース,ラクトース,マンノースがある.

 

(問題10) 糖質(saccharide:炭水化物carbohydrate)について正しいのはどれですか.

 

1. 澱粉(でんぷんstarch)はアミロースとセルロースから構成されている.

2. グリコーゲン(glycogen)D-グルコースがα-1-4結合した多糖である.

3. セルロースはD-グルコースがα-1-4結合した多糖である.

4. 人乳にはラクトース(乳糖)は含まれていない.

5. 乳酸菌はラクトース(乳糖)を分解して乳酸にする.

 

 

(問題11) 多糖(ポリサッカライドpolysaccharide)について正しいのはどれですか.

 

1. プロテオグリカンは単糖にコアたんぱく質が結合している.

2. グリコサミノグリカンはムコ多糖ともいう.

3. ヒアルロン酸はグリコサミノグリカンではない.

4. ヘパリンはグリコサミノグリカンではない.

5. ヘパリンは好酸球の顆粒中に含まれている.

 

(問題12) 脂質(lipid)について正しいのはどれですか.

 

1. 脂肪酸は親水性のアルキル基と疎水性のカルボキシル基から構成されている.

2. オレイン酸,リノール酸,リノレン酸は不飽和脂肪酸である.

3. パルミチン酸,ステアリン酸,アラキドン酸は飽和脂肪酸である.

4. 生体内の不飽和脂肪酸の二重結合はトランス構造が多い.

5. カルボキシル基から数えて3つ目の炭素原子の位置に最初の二重結合がある不飽和脂肪酸をn-3系あるいはω3系の不飽和脂肪酸という.

 

(問題13) リン脂質(phospholipids),糖脂質(glycolipid)について正しいのはどれですか.

 

1. 脂質二重層の構成成分はリン脂質より糖脂質のほうが多い.

2. リン脂質は親水性の部分はあるが,疎水性の部分はない.

3. 糖脂質の糖鎖は血液型物質である.

4. 血液型物質はリン脂質である.

5. ミセル(micelle)によるリン脂質二重層の外側は疎水性である.

 

 (問題14) リポたんぱく質(lipoprotein)について正しいのはどれですか.

 

1. リポたんぱく質はたんぱく質と糖が複合体を形成したものである.

2.  HDLコレステロールは悪玉コレステロールである.

3. カイロミクロンはトリグリセリドを含む食物由来の脂質を含むリポたんぱく質である.

4.  LDLは肝臓で合成されたコレステロールを末梢組織へ運ぶ善玉コレステロールである.

5.  HDLに含まれるアポプロテインはLCAT(lecithin-choresterol acyltransferase)を不活化する.

 

 (問題15) たんぱく質の構造について正しいのはどれですか.

 

1. アミノ基が10個程度集まったものをポリペプチドという.

2. たんぱく質の三次構造はS-S結合(ジスルフィド結合)などにより形成される.

3. たんぱく質の二次構造において、アミノ酸がらせん状になっている構造をβ構造という.

4. L型アミノ酸とD型アミノ酸は一次構造が異なる.

5. たんぱく質に変性が起こっても高次構造は失われない.

 

 (問題16) たんぱく質の機能について正しいのはどれですか.

 

1. 構造に関与するたんぱく質には、アクチンとミオシンがある.

2. 細胞に存在するレセプターはたんぱく質が構成成分となっている.

3. コラーゲンは収縮性のたんぱく質である.

4. DNAの翻訳の調節に関与するたんぱく質を転写因子(transcription factor, TF)という.

5. 酵素はたんぱく質を変性する作用がある.

 

(問題17) アミノ酸について正しいものはどれですか.

 

1. バリン、トリプトファン、メチオニンは、疎水性の必須アミノ酸である.

2. アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンは、酸性アミノ酸である.

3. アミノ酸は20種類あり、うち必須アミノ酸は10種類である.

4. トリプトファン、フェニルアラニン、リジンは中性の必須アミノ酸である.

5. ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニンは親水性の必須アミノ酸である.

 

(問題18) 核酸の構造について正しいのはどれですか.

 

1. ヌクレオチドにリン酸が結合したものをヌクレオシドという.

2. プリン塩基にはアデニン,グアニンがある.

3.  DNAのピリミジン塩基にはシトシン,ウラシル,チミンがある.

4. 二重らせん構造での水素結合はアデニンとグアニン,シトシンとチミンである.

5. ヘキソースの3’位が-OHとなっているヌクレオチドが3’末端である.

 

(問題19)  tRNA, mRNA, rRNAについて正しいのはどれですか.

 

1.  tRNA5’末端部はCCAが付加されている.

2.  mRNA3’末端部はポリApoly A tailが付加されている.

3.  メチオニンのコドンAUGに対応するtRNAのアンチコドンはUACである.

4.  開始コドンはメチオニンの場合が多い.

5.  mRNA, tRNA, rRNAの中では,mRNAの量が1番多い.

 

(問題20) クレアチン,クレアチニンについて正しいのはどれですか.

1. クレアチンは肝臓で合成される.

2. クレアチンは筋肉,脳,肝臓などにホスホクレアチン(クレアチンリン酸)として保存されている.

3. ホスホクレアチン(クレアチンリン酸)はリン酸を離してクレアチンとなる.

4. クレアチンキナーゼはクレアチンをホスホクレアチン(クレアチンリン酸)にする酵素であるが,ホスホクレアチンをクレアチンにする酵素ではない.

5. クレアチニンの尿中排泄量は運動量に比例する.

 

 

 (問題21) 生理活性アミンについて正しいのはどれですか.

 

1. アミノ酸のアミノ基が脱炭酸反応で取り除かれると,アミンとなる.

2. 脱炭酸反応の酵素はPLP(ピリドキサールリン酸)である.

3.  H1受容体は胃酸分泌に関与する.

4.  H2受容体はアレルギー反応に関与する.

5. セロトニンは血小板中に含まれている.

 

(問題22) 核酸代謝について正しいのはどれですか.

 

1. プリンヌクレオチドは分解されると尿酸になる.

2. ピリミジンヌクレオチドは分解されると尿酸を生ずる.

3. 血中尿酸値が高いと,関節リウマチになる.

4. キサンチン酸化酵素の働きを抑制すると,尿酸の生成は増加する.

5. 尿酸は水に溶けやすい.

 

(問題23) ビリルビン代謝について正しいのはどれですか.

 

1. ビリルビンはグルクロン酸抱合を受けて遊離型ビリルビンになる.

2. 直接ビリルビンは抱合型ビリルビンである.

3. 溶血性黄疸のときは直接型ビリルビンが増加する.

4. 閉塞性黄疸のときは間接型ビリルビンが増加する.

5. ビリルビンが腸管で吸収されて肝臓に取り込まれ,再びビリルビンおよびその抱合型となって胆汁中に排泄されることを腸肝循環という.

 

(問題24) 遺伝情報の転写(transcription)について正しいのはどれですか.

 

1. プロモーター(promoter)領域にあるTATAボックス やCATボックスは転写因子である.

2. プロモーター領域にあるTATAボックス やCATボックスは転写開始部位の下流にある.

3. 遺伝子の遺伝情報となる部分をエキソン(exon)という.

4. 一次転写産物(primary transcript)がスプライシング(splicing)を受けると,エキソン部分が除去される.

5. mRNA3’末端にはキャップ構造(cap structure)がある.

 

(問題25) 遺伝情報の翻訳(translation)について正しいのはどれですか.

 

1. tRNA3’末端部分の塩基はACCである.

2. tRNAのコドンの情報によりアミノ酸はtRNAに結合する.

3. AUGは開始コドンであり,メチオニンを表す.

4. リボソームのA部分にはペプチジルtRNAが結合し,P部分にはアミノアシルtRNAが結合する.

5. 翻訳後のアミノ酸側鎖の修飾では脂質が付加される.

 

 問題1

2

問題2

1

問題3

2

問題4

5

問題5

4

      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題6

4

問題7

1

問題8

4

問題9

1

問題10

5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題11

2

問題12

2

問題13

3

問題14

3

問題15

2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題16

2

問題17

1

問題18

2

問題19

2

問題20

1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題21

5

問題22

1

問題23

2

問題24

3

問題25

3

 

------------0xKhTmLbOuNdArY Content-Disposition: form-data; name="userfile"; filename="filelist.xml" Content-Type: text/xml