看護形態機能学I試験問題    山田幸宏/本田智子  平成16(2004)831

正解を一つ選び,その番号を看護形態機能学I答案用紙に記入して下さい.

 

(問題1) 細胞小器官(cell organella or organelles)について正しいのはどれですか

1. ゴルジ装置では偏平な嚢の積み重ねとまわりの小胞集団とからなり,細胞から分泌される物質などに対して,たんぱく質を結合させ, ゴルジ装置を出た蛋白質は,細胞膜,分泌顆粒あるいは リソソームなどの固有の行き先に向けて分かれて行く.

2. 中心体は細胞質における運動を担当し,マイクロフィラメントmicrofilamentから構成され,微小管形成中心microtubule organizing centerとも呼ばれる.

3. ミトコンドリアは二重膜に囲まれており,外膜はクリスタcristaeによって仕切られ,細胞内の主なエネルギーであるATP(adenosine triphosphate)の供給源として働いている.

4. リソソームは球形の小体で,多くの加水分解酵素を含み,細胞が外から取り込んだものを消化したり,自分自信が死んだときに,自己消化を起こすために使われる.

 

(問題2) リボソームribosomeについて正しいのはどれですか

1. DNAからの情報はmRNAに伝えられ,核内でリボソームへ伝えられる.

2. リボソームはDNAとリボソーム蛋白質から構成されている.

3. リボソームが付着した小胞体を滑面小胞体smooth  endoplasmic reticulum, 付着していないものを粗面小胞体rough endoplasmic reticulum という.

4. 滑面小胞体では多くの分泌蛋白質が合成され,ゴルジ装置に集められて修飾を受けた後,分泌顆粒となって細胞外へ分泌される.

5.転移transfer RNA(tRNA)は遺伝情報を翻訳してアミノ酸をつなぎ合わせてたんぱく質を合成する.

 

(問題3) 遺伝情報(genetic information)について正しいのはどれですか

1. 遺伝情報はデオキシリボ核酸(DNA)の場合にはアデニン,グアニン,シトシン,ウラシルのヌクレオチドの4種の塩基,リボ核酸(RNA)の場合にはアデニン,グアニン,シトシン,チミンの配列の上に遺伝情報として安定に保存されている.

2. 親核酸と同一の構造と機能もつ新しい核酸分子を生成することDNAの遺伝情報genetic informationという.

3. タンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝情報では,4個の連続するヌクレオチドの塩基配列が各アミノ酸残基に対応したコドンcodonとして使われる.

4. DNA上の塩基配列がメッセンジャーRNAmRNA)に伝わることを翻訳translationという.

5. mRNAがタンパク合成の鋳型となって成熟したタンパク質が合成されることを翻訳translationという.

 

(問題4) 泌尿器系urologic(urinary) systemに関し正しいのはどれですか.

1.腎血管性高血圧では血中レニンreninが増加する.

2.腎性貧血renal anemiaは骨髄から分泌secretionされるエリスロポエチンerythropoietinの過剰分泌が原因である.

3.交感神経sympathetic nerve刺激により膀胱urinary bladder壁の筋が収縮contractionし,また膀胱括約筋urinary bladder sphincterはゆるみ,排尿urinationが起こる.

4.腎小体renal corpuscle(マルピギー小体Malpighian corpuscle)は糸球体glomerulus,ボウマンBowman嚢および尿細管renal tubuleからなる.

5.糸球体濾過値glomerular filtration rateを測定するときにはクレアチンクリアランスcreatine clearance を測定する.

 

〔問題5〕腎kidneyに関連するホルモンの作用ついて,正しいのはどれですか.

1.副腎皮質adrenal cortexから分泌されるアルドステロンaldosteroneは遠位尿細管,集合管でのナトリウムの再吸収reabsorptionを促進する.

2.副甲状腺parathyroid glandから分泌される副甲状腺ホルモンparathyroid hormoneは遠位尿細管distal tubuleにおけるカルシウムの再吸収を抑制する.

3.下垂体後葉posterior lobeから分泌される抗利尿ホルモンantidiuretic hormone(バゾプレッシンvasopressin)は近位尿細管および遠位尿細管での水の再吸収を促進する.

4.副腎皮質から分泌されるアルドステロンaldosteroneは遠位尿細管におけるナトリウムの排泄excretionを促進する.

5.アルドステロンは遠位尿細管でのカリウムの再吸収を促進する.

 

(問題6) 炎症inflammationについて正しいのはどれですか.

1.炎症がある場合には,発赤redness,疼痛pain,発熱heat,腫脹swellingなどを通常伴う.

2.炎症反応の場合,血管は収縮vasoconstrictionする.

3.感染反応性たんぱく質にはC反応性たんぱく質CRP(C-reactive protein)がある.

4.感染部位に好中球neutrophil,  マクロファージmacrophage, 血小板plateletが遊走migrationすることを化学走化chemotaxisという.

5.ヒスタミン,免疫グロブリンは血管の拡張や透過性の亢進を引き起こすメディエーターmediatorである.

 

〔問題7〕リンパ球lymphocyteについて正しいのはどれですか.

lB細胞B lymphocyteは胸腺thymus由来である.

2.細胞障害性T細胞cytotoxic T lymphocyte, CTLの活性化activationは,抗原ペプチドantigen peptideを自己self主要組織適合抗原major histocompatibility complex antigen(MHC) Class Iと結合した抗原提示細胞antigen presenting cell, APCによって行われ,ヘルパーT細胞(helper T lymphocyte)の活性化はMHC Class IIと結合した抗原提示細胞antigen presenting cellによって行われる.

3T細胞T lymphocyteは骨髄芽球myeloblast細胞から分化differentiationする.

4T細胞はガンマグロブリンgammaglobulinを産生productionする.

5.形質細胞plasma cellB細胞から分化し,免疫グロブリンimmunoglobulin(抗体antibody)およびサイトカインcytokineを産生productionする.

 

〔問題8〕血液bloodについて正しいのはどれですか.

1.造血幹細胞hemopoietic stem cellである多能性幹細胞pluripotent stem cellは自己再生能self-renewal potentialはあるが,分化能differentiation potentialはない.

2.血小板が障害を受けた血管内皮細胞の下にある膠原線維collagen fiberにくっつくことを血小板粘着platelet adhesionという

3.トロンボプラスチンthromboplastin(プロトロンビナーゼprothrombinase)はフィブリノーゲンfibrinogenをフィブリンfibrinにする.

4.組織因子tissue factorの活性化による血液凝固経路を内因性経路intrinsic pathwayといい,血管内皮細胞が障害を受けた場合の血液凝固経路を外因性経路extrinsic pathwayという.

5ABO式血液型blood typeの同種赤血球凝集素isohemagglutininIgG抗体であり,Rh式血液型の同種赤血球凝集素はIgM抗体である.

 

(問題9) 線維素溶解現象fibrinolysisについて正しいのはどれですか.

1. プラスミンplasminが分解される現象を線維素溶解現象という.

2. 組織プラスミノーゲン活性化因子tissue plasminogen activatorはプラスミンを活性化してプラスミノーゲンにする.

3. 播種性血管内凝固症候群disseminated intravascular coagulation(DIC)のときには,フィブリン分解産物fibrin-degradation product(FDP)は減少する.

4. アンチトロンビンIIIはトロンビンの作用を阻害するする凝固阻止因子である.

5. ヘパリンが抗凝固作用を示す場合には,アンチトロンビンIIIは必要ではない.

 

(問題10) 赤血球erythrocyteについて正しいのはどれですか.

1.赤血球は造血幹細胞hemopoietic stem cell(多能性幹細胞pluripotent stem cellともいう)に由来する赤芽球erythroblastからエリスロポエチンerythropoietinの作用により分化 differentiationしてくる.

2. ビタミンB12の欠乏時にみられる悪性貧血pernicious anemiaは巨赤芽球性貧血であり,正球性正色素性貧血である.

3. 鉄欠乏性貧血は小球性(平均赤血球容積Mean corpuscular volume, MCVの低下), 低色素性(平均赤血球ヘモグロビンMean corpuscular hemoglobin, MCHの低下)の貧血で,発生頻度の少ない貧血である.

4. 二酸化炭素は赤血球内にある炭酸脱水素酵素carbonic dehydrogenaseの作用により,炭酸水素イオンとなって運搬され,肺で二酸化炭素として呼気中へ排出される.

5. 溶血性貧血の場合は低色素性貧血を示す.

 

(問題11) 鉄代謝について正しいのはどれですか.

1. 鉄欠乏性貧血の場合は,血清鉄serum iron値は低下し,鉄を運搬する蛋白質トランスフェリンtransferrin(総鉄結合能total iron binding capacity, TIBC), 不飽和鉄結合能(unbound iron binding capacity, TIBC)値が増加する。

2. 食物中の鉄Fe2+は,胃酸gastric acidで還元reductionされてFe3+となって小腸から吸収される.

3. フェリチンferritinに鉄が結合したものをアポフェリチンapoferritinという.

4. 貯蔵鉄であるフェリチンは, 鉄欠乏性貧血の場合は増加する.

5. 貯蔵鉄にはフェリチンとヘモグロビンがある.

 

(問題12) 赤血球の分解について正しいのはどれですか.

1. 血色素hemoglobinが分解すると,ヘムhemとグロブリンglobulinになる.

2. ヘムが還元されると,黄色のビリベルジンbiliverdinになる.

3. ビリベルジンが還元されて,緑色のビリルビンになる.

4. ビリルビンは肝臓でアルブミンと結合し,間接ビリルビンになる.

5. 間接ビリルビンは肝臓でグルクロン酸と抱合し直接ビリルビンとなる.

 

(問題13) 細胞膜を通る物質の移動について正しいのはどれですか.

1.促進拡散facilitated diffusionは,特定の物質を運ぶトランスポーターとして働く内在性蛋白質の助けを借りた物質の細胞膜を超える移動であり,ATPのエネルギーを必要とする.

2Na+K+交換ポンプexchange pumpNa+の細胞外への汲み出しと細胞内へのK+の取り込みを行うポンプであり,ATPのエネルギーを必要とする.

3.シンポーターsymporterNa+と二次物質が同じ方向に移動する場合の受動輸送passive transportを行う.

4.貪食作用phagocytosisが行われる場合,リソソームlysosomeと食胞phagosomeは融合せず,ファゴリソソームphagolysosomeは形成しない.

5.リンパ球lymphocyteとマクロファージmacrophageは貪食作用がある.

 

(問題14) 心臓について正しいのはどれですか.

1. 心臓の刺激伝導系は房室結節から始まり,洞房結節をへて房室束(ヒス束)へ伝わる.

2. 洞房結節からの興奮が心臓のペースメーカーとなる.

3. 心室から動脈へ血液が駆出されるときには,心室は収縮し,動脈弁は閉鎖され,房室弁は開放されている.

4. 循環して心臓へ戻ってくる静脈を静脈灌流venous drainageという.

5. 胃,小腸,大腸,膵臓,脾臓,腎臓をめぐった血液は門脈を通って肝臓へ運ばれる.

 

(問題15) 胎児循環について正しいのはどれですか.

1. 胎児血液の酸素交換は胎児の肺で行われる.

2. 臍静脈は動脈管を通って下大静脈に入る.

3. 臍動脈は1本あり,臍静脈は2本ある.

4. 右心房において上大静脈からの血液は右心室の卵円孔から左心室をへて大動脈に入る.

5. 右心房において下大静脈からの血液は卵円孔をへて左心房に入る.

 

(問題16) 排尿筋の末梢神経支配について正しいのはどれですか.

1. 下腹神経は副交感神経である.

2. 骨盤神経は交感神経である.

3. 陰部神経は体性神経である.

4. 排尿中枢は腰髄にある.

5. 排尿反射に関与する上位排尿中枢は大脳皮質にある.

 

問題1. 4 問題2. 5 問題3.  5 問題4. 1  問題5.  1 問題6.  1  問題7.  2 問題8.  2  問題94 問題101 問題111 問題12. 5 問題13. 2 問題14. 2 問題15. 5 問題16. 3 

 

 

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