第十七回  ガン・シューティング(銃の射撃、初体験)

人生で初の、本物の銃を撃つという体験をしてしまいました。

友人数名と共に、シアトル市外にあるガンショップと併設されている銃の射撃訓練場に行き、そこで1時間ばかり数種類の銃を撃ちました。

驚いた事に、受け付けで簡単な用紙の記入を済ませると、後は自分の身分証明書を提示し、簡単なレクチャーを受け、それだけで後は撃ちたい放題です。「こんな簡単に銃を撃っていいのか?」と思うくらいあっけなく手続きが終了し、銃と弾を渡されました。

射撃場に入場する時は、ゴーグルと、大きな音から耳を守る為の耳当てを着用します。そして、決められた自分のレーンに行き、銃に弾込めをし、紙で出来た標的に向かって後は撃つだけです。共に行った友人のうち2名が、以前にも射撃を体験した事があるので、細かい操作方法は彼らに習いました。また、射撃場の監視役をしている人にも色々教えてもらえます。

さて、実際に撃ちはじめてみますと、これが難しい!!的がさして離れていなくても、なかなか当るものではありません。僕などは、結局最後まで的の中心の方を撃つことは出来ないままでした。

銃を撃つ時には、発砲する際に、反動で銃を押さえている手が上に上がってしまいます。相当な力で押さえなければいけません。銃口を下に押し付けるような感覚で引き金を引きます。しかし、実際、女性の腕力では、特にマグナムなどの強力な銃を発砲する際の反動を受け止めるのは大変です。

映画の銃撃シーンなどを見ますと、いとも簡単に銃が使用されていますが、例えば車を運転しながらや、走りながらなど、そんな状況で正確に銃を撃つことは正に至難の技でしょう。警察官達も大勢練習しに来ていましたが、やはり日々相当訓練しない限り銃を扱いこなすのは到底無理です。

本物の銃を撃ってみますと、改めてその殺傷能力の高さ、危険性が身に染みて分かります。確かにこんなものを向けられて発砲された日には、当たり所によっては間違いなく即死でしょう。そして、射撃場には、10歳くらいの子供から、60過ぎの老人まで男女問わず、様々な年齢層の人が来ていました。護身のために銃を打つ訓練をしている人もいるでしょうし、銃を撃つ快感を味わう為に来ている人も多いでしょう。

 

こんな危険な「銃」というものが一般家庭にまで普及してしまっている銃社会アメリカ、は本当に日本とはかけ離れています。日本において民間人が銃を撃つ機会はまず存在しません、日本で銃を携帯し、撃つ為には、警察官になるか、自衛隊に入隊するか、もしくはヤクザになるくらいしか方法がないでしょう。しかし、逆に日本のようにそのくらい使用が制限されていれば、扱う側にも相当な覚悟が要りますので、めったなことはそう起こるものではないと思います。アメリカで相次ぐ銃乱射事件も、その発生の根本的原因はやはりその圧倒的な銃普及度にあることは間違いありません。何らかの方法による規制が不可欠です。

銃の怖さを体験する事で、ますます、アメリカにおける銃規制の必要性を実感しました。銃規制反対派の最大勢力であるNRA(NationalRifleAssociation)の息がかかった共和党ブッシュ政権の元で、どの程度の規制が果たしてなされるのかには、残念ながら全く期待が持てませんが・・・。

最後に一つ、銃を握った瞬間、全ての人に共通する感覚があるとよく言われます。それとは即ち、「自分がまるで強くなったかのような気がする」ということです。確かに、殺傷能力を持つ武器を手にした瞬間、人は変わります。仮に温厚な人であったとしても、銃を握った瞬間別人になるかもしれないのです。銃の持つ怖さのもう一つは、殺傷能力以外に、この点に尽きるを思われて仕方ありません。

銃は人を変えます。そして、少なくとも良い方向に変わるという保証は何処にもありません。

 

射撃場 弾込め 射撃中 慶應SWATチーム