狩 猟 日 誌
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1999年12月→2000年1月

BECK 『MIDNITE VULTURES』
(GEFFEN/MVCF-24060)


 「今やサラリーマンも聴いているBECK」((C)HMV)です。…聴いて悪いかよ。

 既成の音楽を再構築する方法論は基本的に変わりなく。ただ今まで、再構築過程でぼやけてしまいがちだったメロディーが前面に出てきており、どの曲もとても聴きやすくなっています。オフィシャル盤では最もメロウなんじゃないでしょうか。個人的には『MELLOW GOLD』『ODELAY』以上に愛聴しそうな作品です。

 今回はソウル、ファンクなどが今まで以上に取り込まれいるゆえに、元Princeさんと比較されたりもしていますが、この『MIDNITE VULTURES』を聴いて、私が真っ先に思い浮かべたのはTodd Rundgrenでした。

 あ、Todd Rundgrenって、今何やってんのかなぁ。



デイジー 『甘い悲しみ』
(MIDI/MDCS-1034)


 曲を作った背景。詞の意味。ミュージシャンのバックグラウンド。

 それらのことは、音楽を聴くのに必ずしも知らなくちゃいけないといったものではない。しかし、こんなにも素晴らしい曲を連発されると、やはり知りたくなるのは人間として当然でありまして。

 ましてやデイジー、そして松田マヨ。これだけ謎が多いと、気になってしょうがないです。

 松田マヨのインタビューを各雑誌で読んでいると、インタビュアーの問いに対し「わかんない」を連発。本当に何も考えていないのか、あるいはインタビュアーを煙に巻いているのか。うーん、わからん。次号のQuickJapanで大々的に取り上げられるようだが、さてどうなることやら…。ちょっと期待したりして。

 あ、音のほうは・・・相変わらず冴えています。やはり捨て曲なし。特に1曲目のストリングス。松田マヨ、君は本当に20代?



ナンバーガール 『シブヤROCKTRANSFORMED状態』
(東芝EMI/TOCT-24283)


 メガネ、メガネってうるさいですね、私。

 ギターリフはどこかで聴いたことがありますし、ルックスと音とのギャップだって、PIXIESみたいな例もあるから決して珍しいものではありません。

 ではなぜナンバーガール?そんなの簡単です。単純に格好いいからですよ。

 特にこんなにエネルギーの充満したライブ盤を突きつけられると、冷静に語ろうとしている自分が恥ずかしくなってきますね。このテンションがスタジオ盤に反映されれば、もう言うことないです。

 余談ですが、私はこのライブ盤を聴いて田渕ひさ子嬢に惚れました。



SONIC YOUTH 『GOODBYE 20TH CENTURY』
(SYR 4 [輸])


 John Cage、小杉武久、オノヨーコ、Steve Reichなどの曲を彼らなりに再構築したもの。シリーズモノですが、今までのヤツは聴いたことがありません。ゴメンナサイ。

 V.A.『guitarrorists』みたいなサイケデリックを予想していたのですが、原曲が原曲ですからねぇ。てゆーか、原曲はどれも聴いたことないんですけど。しかし随所で聴かれる彼ららしいギターのフィードバックやノイズは、現代音楽の難解な部分を溶解してくれるようですね。これでメロディーがあれば言うことなし、なんですが。

 このCDには「PIANO PIECE #13」の録音風景がCD-EXTRAで入っているのですが、その映像を観ると、まるで子供がピアノに戯れているようです。もともと音楽なんてそんなに堅苦しいモノじゃないですからね。

 個人的には、ノイズの中にもちゃんとしたメロディーがないとどうも苦手なので、今後あまり聴くことはないかもしれません。しかしたぶん売り払うことはないでしょう。どこか惹かれるモノがある一枚。



GORKY'S ZYGOTIC MYNCI 『SPANISH DANCE TROUPE』
(mantra recordings/TKCB-71829)


 『Bwyd Time』では小山田圭吾やカヒミ・カリィのプッシュでオリーブ少女までもファンにつけてしまいましたが、『Barafundle』以降はメディアにも見放されてしまい、日本でもめっきりファンが減ってしまったと思われるGORKY'Sです(自虐的)。

 このGORKY'S ZYGOTIC MYNCI、実はかなり思い入れのあるバンドです。まるめろさんところでの「90年代総括」に入れているくらいですからね。特に4th『Barafundle』はとても唄心に溢れたアルバムで、彼らのメロディーメーカーとしての資質が開花した作品だと思っています。哀しみをもったそのメロディーは、Elliot Smith以上だと思うんですけどねぇ。

 ここまで書いて思ったのですが、『Bwyd Time』までしか聴いていない人にとっては書いている意味がわからないかも。おそらく。

 『Bwyd Time』以前はエキセントリックな音が散在していて、作品群の中でメロディー埋没していたような気がします。まあそのエキセントリックさが彼らのパブリックイメージになってしまって、「もうGORKY'Sはいいや」なんて思う人が出てきたのかもしれません。考えてみれば、『Bwyd Time』がリリースされる直前に出た『LLANFWROG ep』の時から、このメロディー指向は始まっていたのですけどね。

 ともかく『SPANISH DANCE TROUPE』なんですが。

 前作の『Gorky5』で導入されていたストリングスは、全く影を潜めています。あのストリングスは一つの実験として評価はできますが、大味な感じは否めず、ちょっと彼らには合わないかなと思っていましたから、この変化には個人的に大歓迎ですね。

 全体の雰囲気としては『Barafundle』に近いのですが、「憂い」のメロディーはさらに増長しており、さらに曲としてのクオリティーも高く、GORKY'Sの中でも最高の作品と言えるのではないでしょうか。

 『Bwyd Time』をリアルタイムで聴いていない人にはこの作品から聴くことをお勧めします。ともかく聴け。聴けばわかる。



王菲 『唱遊大世界王菲香港演唱會98-99』
(EMI百代/7243 5 21257 22【輸】)


 タイトルから考えるに、年跨ぎで行われたライブ音源だと思います。詳細はヨーワカランのです。

 ベスト的な選曲で進むステージ。せきぐちは、王菲に関して盲目的な信者なので、もうなんでもOKなのですが、個人的には「浮躁」「悶」「暗湧」と続く序盤に涙です。武道館ステージでも演っていた「Bohemian Rhapsody」のカバーはご愛敬、てな感じですが、そんな茶目っ気も彼女の魅力なんですよ。

 うーん、昨年夏にNHKで観たステージ映像が目に浮かびますね。生で観たい。



KRAFTWERK 『EXPO2000』
(EMI ELECTROLA/7243 8 87984 2 6【輸】)


 ドイツのハノーバーで行われる万博のテーマソング。それ以上にKRAFTWERK久々の新曲という点で注目が集まってますね。万博にKRAFTWERK。万博の持つレトロフューチャーさを助長するような組み合わせがなんとも興味深いです。もっともドイツで万博が開催されるなんて知らなかったんですけどね。

 KRAFTWERKの新曲ということで聴くと、いかにも現在的な音空間の広がりはうかがえますが、基本的には何ら変わっちゃいないですね。逆にそんな音の広がりによって、KRAFTWERKと言われなければ聞き流してしまいそうで恐いんですけど。

 まあ、そもそも私のKRAFTWERK体験はそんなに前のことではないので、偉そうなことは言えないんだけど。



キリンジ 『アルカディア』
(WARNER MUSIC JAPAN/WPC6-10064)


 「アルカディア」は、今までのキリンジからは想像できないほど随分と壮大な曲です。重たいギターとそれに絡むフルート。うねり出される叙情感がグサリグサリと痛いですね。ちょうどデイジーの音世界にかなり近い作品と言えるかもしれません。

 うーん。確かに今までにない音なのですが、キリンジをCS&Nに置き換えるとすれば、今まで隠れていたDavid Crosby的な部分がやっと表に出てきただけなのかもしれませんよ。まあそれでも、そんな過去の音楽に比べれば、やっぱり現代的な軽さがあるのは当然ですが。

 逆にエルトンジョンを彷彿とさせるピアノのイントロで始まる「千年紀末に降る雪は」のほうが今までの軽さを孕んでいて聴いていて安心します。安心していいのかどうかはまた別の話。

 これが変化なのか、あるいは突然変異なのか。次作で明らかになるんでしょうね。