d i a r y
b a c k



2000年11月29日

today is …

SUBTLE 『E.P LIFE』
(CNC RECORD/CNC-0001 ['00])

 クラブ系と音響系の中間をいくような音。乱暴に言ってしまえばそういうことになるのかなぁ。だけどこのSUBTLEというユニットには、それだけでは終わらない何かがあると思うのですよ。そう、まるで「今」という時代に密かに咲いた花(もちろん良い意味で)のような、そんな感じがするのです。
 仙台の大学生であるということ以外、何も情報がないのですが、このような音楽をやっているヒトが地理的に近くにいるというのは素直に嬉しいです。『AFTER HOURS』最新号付録CDに彼らの曲が収録されているので、興味のある人は是非聴いてくださいな。メランコリックにメロディーを奏でるギターサウンドは聴いて損はないと思いますよ。

 「×」はある。だけど「○」はない。だから「△」を「○」とし、自分をごまかしながら普通の顔をして生きていく。時々これでいいのかなんて苦悩することもあるが、「○」が分からないのだから結論なんて出やしない。仮に「○」が導き出せたとしても、それが本当に「○」かどうか不安で不安で堪らなくなる。そして結局は「△」のままで生きていく。

 人生は「△」だらけ。

 しかし「△」をポジティヴに受け入れていれば、いずれ本当に「○」になるときもある。それが仮に錯覚であっても、自分が幸せならばそれでいい。

 大体、「○」「×」の判断なんてそんなに当てになるもんじゃないんだから。

   *

 久しぶりでタワーに行ったら、アラン・マッギー自身が選曲したというCreationのコンピが並んでいてちょっとビックリ。試聴ができたので、それではと思い聴いてみると、ジザメリ、ハウス・オブ・ラヴ、スロウダイヴ、プライマル・スクリーム、ライド等々、うわーなんとも懐かしい曲が並んでいるじゃありませんかー。…って、あれ?マイブラが入ってませんよ?どーして?ていうかそんなことより、Creationをレトロスペクティヴに聴くにはまだまだ早いような気がするんですが、どーなの?そこんとこ。

   *

 車を買いました。もちろん中古です。だからwhile my bankbook gently weepsなのです(財布がピーピーいってる、ということを言いたいらしい)。

   *

 自分で言うのも何だが、去年の今頃に比べてネガティヴに考えることが少なくなったと思うのです。これはたぶん、この一年間あの人の「ま、いいか」を何百回と聞いてきたからかもしれません。

 もっとも、状況的には何ら変化はないのですけどね。

 …ま、いいか。



2000年11月23日

today is …

Roy Wood 『Singles』
(The Connoisseur Collection/
              VSOPCD189 ['93])

 THE MOVE、WIZZARD、そしてソロ作品を集めたRoy Woodのシングルコレクション。Roy関係のコンピは他にもいろいろありまして、私も3種類ほど所有しているのですが、最も聴く回数が多いのがこの『Singles』なのですよ。というのも、私がRoyの曲の中で一番好きなWIZZARDの「SEE MY BABY JIVE」が収録されているのが、このCDだけだからなんですよー。
 で、その「SEE MY BABY JIVE」はフィル・スペクターも顔負けのウォール・オブ・サウンド。挿入されるゴスペル風コーラスや音の隙間を作らないSaxが、曲の後半に進むにつれ徐々に盛り上がる、まさに走り泣く名曲。この曲がフロアで流れてきたら、私はきっと泣きながら踊るでしょう。

 さーぶーいー。

 ここ数日、「冬ってこんなに寒かったかね?」などと自分勝手なことも言ってみたくなるような季候が続いてますが、いかがお過ごしでしょうか。私といえば、病気らしい病気にも罹らず、毎日元気に過ごしております。まったくーこんなにも不健康な生活をしているんだから、風邪ぐらいひいてもいいと思うんですけどねー。もう、いい加減丈夫すぎるこの身体に少し腹が立ってきますよ。まぁこれからまだまだ寒くなりますので、油断は禁物。お互い体には気をつけましょうよ。ていうかこれ、誰に向かって書いているんですか、私。

   *

 最近よくトレイに載るCD。

 E.L.O. 『Out Of The Blue』
 Fairport Convention 『Liege & Leaf』
 Martin Newell 『The Greatest Living Englishman』
 Roy Wood 『Singles』
 Stackridge 『Friendliness』

 そう。なんとなく暖かい音、ばっかりなのです。

   *

 夜中、NHKでやっていた参議院予算委員会質疑の録画をなんとなく(ホントになんとなく)ながめていたら、この方がこんな質問をしておられました。

 「最近、この国はおかしいと思う。このことについて総理はどうお考えなのか。」

 限られた時間の中でこんな漠然とした質疑が行われているんですから、ニッポンって幸せな国だなぁと思いましゅにゃー。



2000年11月19日

today is …

イノトモ 『風の庭』
(NIPPON CROWN/CRCP-20250 ['00])

 -花に聞いた キミはどうして
 -そんなに強いのカシラ?
 -花は笑う キミはそこから
 -どこへでも行けるよ。

 -ああ、ボクだって
 -ああ、強くはないのに。

             「星と花」

 相変わらずこの部分に涙してしまうのは、昨年末から何も変わっていない証拠。さて私が約束を果たせるのは一体いつになるのでしょうか?


 東北地方の中心と言われる宮城県。そんな宮城県といえども、県庁所在地である仙台から1時間も車を走らせていれば、目の前には見渡す限りの田園風景が広がります。高校卒業まで関東ローム層の直上で生まれ育った私でさえ見たことのなかったような風景。最近はさすがに慣れてきたとはいえ、己の原風景としてこのような風景がないからでしょうか、南国で育った人が雪山を見てはしゃいだりするのと同じように妙にワクワクしてしまうのは、12年前から何ら変わってはおりません。

 「見渡す限り」とはいえこんな小さな島国ですから、さすがに地平線まで見えるなんてことはなく、どんなに田舎に行ったとしても、民家・ガソリンスタンド・コンビニなどがぽつりぽつりと目に入ってきます。そしてそんな小さな建物に紛れて、時々途轍もなく大きな建物に遭遇することがあります。その名は「カントリーエレベーター」。

 「カントリーエレベーター」というのは、大雑把に言えば収穫した籾殻を貯蔵乾燥する、複数の巨大サイロと小さな機械室・事務室で構成される近代的農業施設のこと。サイロを抱えるだけあって、その高さは7,8階建てのオフィスビルほどになります。その大きさゆえ、ドライブの時などにはランドマークになって大変便利ではあるのですが、やはりこのゆったりとした風景の中に突如現れてくると、さすがに「何事か?」と思いますよ。

 そしてその大きさもさることながら、さらに驚くのはそのデザイン。このようなものだったらまだましな方で、これとかこれみたいな西洋の城郭よろしくの尖塔屋根、尖塔屋根とならないまでも勾配屋根をシンメトリックに配置したものなど、黄金色の耕土にはあまりにも似つかわしくないものもあったりします。

 そう。そうなんです。ポストモダン全盛から遅れること数年、以前キムラさんもHPで書いてらっしゃった「ディズニーランダゼイション」がこんなところにも及んでいるのです。こうなってくると「日本全国総郊外化」ということも決してあり得ない話ではないと思いますよ、ホント。

   *

 いわゆるディズニーランド化した建物がなぜツマラナイのか。それはきっとその建物が、朝であっても、夜であっても、晴れであっても、雨であっても、暑くても、寒くても、「見せる表情が同じだから」なのではないでしょうか。多分このような建物は、廃墟となって崩壊しかけていても、そしてさらには機能を失い大型クレーンで解体されている時でさえも、寂しい顔を見せることなく、我々に笑いかけているんだろうと思うのです。いやいや、そう考えると非常に気味悪い話ですね、まったく。

   *

 知り合いから「ウクレレを最近弾き始めた」ということを聞いたのは今年の8月。先日ウクレレを弾く真似をしながら「最近どう?」と聞いたところ、「冬にウクレレの音はちょっと寂しすぎるから…」という答え。

 そんな寂しいことは言わないでくださいよ。



2000年11月15日

today is …

V.A. 『墨堤夜景』
(Bumblebee Records/BBCDE-002 ['00])

V.A. 『so far songs』
(OZ DISC/EHE-024 ['00])

 この2枚、もうホントに素晴らしいとしか言いようがないです。

 『墨堤夜景』
 緩やかに流れる時間と微妙に変化する風景のサウンドトラック。

 『so far songs』
 「ここではない別のどこか」へと誘ってくれるドラッグ。

 11月半ばにして今年の総括をするのはまだ早いとは思いますが、2000年の「私」はこれら2作品で語り尽くせてしまうような気がします。今年リリースされたこの2枚のオムニバス、いずれも明快なコンセプトのもとに作られた作品(例えば『エキゾチカ慕情』のような)ではなく、一聴すると単なるレーベルサンプラーのようでしかありません。しかし散漫になりがちな私の嗜好を集約し、改めて「私」というものを気付かせてくれる、そんな2作品なのです。

 もちろん、これら以上に聴く回数の多かった作品はたくさんあったし、ここに収録される曲以上に涙した楽曲もたくさんありました。しかし、10年あるいは20年後、「前世紀の終わりに君はどんな音楽を愛でていたか」と問われたとしたら、間違いなくこの2枚を挙げて答えているんじゃないかと思うのです。

   *

 なぁーんてこんなことを書きながらも、今はイノトモ『風の庭』を繰り返し繰り返し聴いているわけでして。「まったくぅ、そんな大仰なこと言って。ホントにいいの?」などと自分にツッコミを入れたくなってきます。

   *

 オムニバスといえば、『アンファン』の1と2が再発されていますね。ていうか最近まで再発されていることを知らなかったんですけど。個人的には政風会・Nav Katze・今堀恒雄・矢口博康などが参加した2がオススメです。特にNav Katzeによる「ディファレント・フォー・ガールズ」(Joe Jacksonのカバー)と矢口氏による「シェリーにくちづけ」(こちらは書くまでもないですね)が素晴らしいのですよ。未聴の方は是非とも聴いてみてください。



2000年11月12日

today is …

Gorky's Zygotic Mynci 『The Blue Trees』
 (mantra recordings/TKCB-72045 ['00])

 昨年末の『Spanish Dance Troupe』から短いインターバルで届けられたミニアルバム。アコースティックギターとヴァイオリンを中心とした穏やかなインストが大半を占め、聴いているものを優しい空気で包み込んでくれます。もちろん穏やかと言っても、彼ら特有のサイケデリックな音空間に変わりはありません。
 それにしてもGorky'sって、なぜこんなにも人気がないのでしょうか?歌モノがもてはやされるこのご時世なのだから、もう少し注目されてもいいと思うのですが…。

 ヒトは無意識に(あるいは意識的に)何か見返りを期待しつつ、他人に対して愛情なり優しさなりを投げかけているものでございます。しかし「私がこんなにも尽くしているのに…」なんてよく聞く話を挙げるまでもなく、そのような相互の間には少なからず温度差があり、ギブ・アンド・テイクの関係が巧く成り立たないという状況が必ずといってよいほど起こるものでございます。もちろんこれはいわゆる恋愛に限ったことではございません。ヒトとヒトとの間に生ずるすべてのコミュニケーションには、お互いの感情が「一致しない」という「法則」があるのだと思うのでございます。

   *

  『STUDIO VOICE』最新号に掲載される下郷亜紀の「ジバラの道」というコラム文を読んでいたら、こんな言葉が載っていました。

 「誰かの仕事を評価するには、褒めるよりもお金を出して買うことと、労働力を提供することが一番。そして後者の場合、可能な限りタダ働きが好ましい。自分を安く売るより、気前良く消費と割り切ったほうがはるかに気持ちがいいからだ。」

 なるほど。あるヒトに投げかける愛情や優しさというものは、そのヒトに対する自分からの評価であると考えればいいんだ。「これだけ自分を気持ちよくさせてくれたんだからこれくらい奉仕して当たり前」くらいに思えばさ。そうか、こういった一連の感情・行動を「消費」と考えれば納得がいくじゃないか。よーし、明日から…。

 とはいえ、やっぱり自分を評価して欲しいという感情はどーしても押し殺せないものでございます。そう、「見返り」というものとは別としても。

   *

 松本亀吉「歌姫2001」(太田出版)はとてもおもしろいと本だと思います。ただ、この「おもしろい」というのは、個人HPを見て「おもしろい」と思うのと非常に近い気がするのです。だからでしょうか、この本を読んでいると、ネットアイドルの写真集を見ているような、どこかしっくりこない感覚に包まれてしまいます。

 もちろんこれは「書籍としてある水準に達していない」という意味ではありません。「単行本」というカタチを取ることによって、彼の言論が普遍化してしまうような気がして、少し違和感を覚えてしまう、ただ単にそういうことなのです。やっぱり彼のテキストは、雑誌やネットで読んでいるのが一番おもしろいのかもしれないですね。

   *

 原田郁子(クラムボン)と田渕ひさ子(Number Girl)は高校の同級生らしい。世の中知らないことがたくさんあるんだなぁと思いつつ、知らなくてもよいこともたくさんあるんだなぁとも思った11月11日。今日はポッキーの日でした。(←これも知らなくてよい)



2000年11月7日

today is …

MariGold Leaf 『Marigold Leaf』
 (Hammer Label/H-508 ['96])

 橋本由香利と赤柴亜矢子のユニット。詳しい経歴はココを参照(曲も聴けるよ。)。
 素人っぽさを残しながらも、雰囲気だけで終わらない芯の強さを持ったネオアコースティック。ポップソングとして昇華した姿がここにはあります。
 それにしてもこの橋本由香利という人。篠原ともえ・大石恵・Chieriなどにも曲を提供しているのですが、どれも粒ぞろいの名曲ばかりで、ソングライターとしての資質はかなり高いと思います。ガールポップフリークとしては、将来的にはその道へ進んで欲しい気もしますが、ともかく今は目前に迫ったMaybelle(橋本嬢の新ユニット)のリリースを楽しみに待つこととしましょう。
 

 「あまり利用しないかも」とか書きつつも、なんだかんだで足蹴に通っているヴァージンメガストア。と言っても、利用しているのはワゴンセールだけなんですけど。

 で、そのワゴンセール、990円均一ということで決して安いとは言えないんですが、驚くのは日本インディーものの充実ぶり。なんとメトロトロンレーベルはほぼ全種(!)、さらに再発ショーボート系・ポルスプエスト系・トランソニック系も何枚か揃っている(!)。その他にも、上野耕路・ラヴジョイ・シジジーズ・タイムスリップ・割礼・jellyfish・MariGold Leaf・V.A『トロイの木馬』・V.A.『Childish Soup 2000』・o.s.t.『カラオケ』・ガーディナーズ…、と「今まで仙台で並んでいるの見たことないよー」というような作品もちらほら。うーん、嬉しいけどちょっと複雑な気持ち(いろんな意味で)。

 でも、jellyfishの1stとMariGold Leafの単独音源を入手できたのは素直に嬉しいです、はい。

   *

 こういう人が出てくると、一部掲示板が活気づくのは世の常でして。「自殺しろ」とか「行政は税金返せ」とか、もうホント、皆さん言いたい放題ですね。でもこういうステレオタイプの悪態って、いい加減もう飽きたなぁ。もっとも「建設的発言」を期待するほうが間違っている…か。

   *

 最近お気に入りのサイトはこれ



2000年11月3日

today is …

サニーデイ・サービス 『LOVE ALBUM』
 (Q&A COMMUNICATIONS/QA004C ['00])

 2人は恋人だった。そしてこれからも。
 

 彼と彼女はいつも喧嘩ばかりしていた。彼女が口答えすれば彼は怒鳴り返し、彼が殴れば彼女は爪を立てる。お互い80歳を過ぎていたが、毎日そんなことを繰り返していた。

 一昨年の暮れ。彼女はいつものように夕食を食べ、いつものように風呂に入り、いつものように床に入った。そしてそのまま、彼女は二度と起きることはなかった。

 彼女を送る儀式。いつものように明るく、いつものように憎まれ口をたたきながら、彼は彼女を見送った。

 数日間の儀式が終わり、「普通」の生活が始まろうとした時。突然彼は倒れ、そしてそのまま息をひきとった。

   *

 もうすぐ祖父母の命日がやってきます。私はこの日が近づくと、とても暖かい気持ちに包まれてしまうのです。