Review
Kinks / Something Else
キンクス。 /  (-.-)
A面
David Watts
Death of A Clown
Twp Sisters
No Return
Harry Rag
Tin Soldier Man
Situation Vacant
B面
Love Me Till The Sun Shines
Lazy Old Sun
Afternoon Tea
Funny Face
End of The Season
Waterloo Sunset
キンクスの5枚目のアルバム。
キンクスを初期・中期・後期と分けるのなら(2003年現在)初期はこのアルバムまでであろう。
ビート音楽としての脱却というのは、サード・アルバムから始まっていた事だが
このアルバムでひとまずビート音楽としてのキンクスは幕を閉じる。
また、UKチャートに登場した最後のアルバムだったりするのが、その辺も象徴的なところであろう。

リリースは1967年。サイケデリックカルチャーが徐々に巻き上がってきている時期だ。
数々のバンドがサイケデリックミュージックに傾倒し、あのストーンズまでコンセプトアルバムを
ビートルズをパクって作っちゃった年でもあるし、ジョージ・ハリスンなどに象徴されるように
東洋との文化の結合なんかも盛んに行われ、「思想」とかその辺に焦点を当てられようとしている年でもある。

キンクスがその中で焦点をあてたのは、タイトルのとおり"Something Else"
つまり「別の何か」なのである。今日まで続くレイさんらしい視点。キンクスが取り上げたのは
曲名を見ても分かるであろう。午後の一杯の紅茶や、ウォータール駅の夕焼けなど彼にとって
非常に身近で、サイケデリックカルチャーとはかけはなれた、イギリスのイギリスたる部分である。

彼はその「イギリス」を取りあげ、この短編小説集ともいえる、素敵なアルバムを生み出した。
素晴らしいアルバムである。

またコレがそれまでのプロデューサー、シェル・タルミーとの最後の仕事となっている。


曲の解説。

今の時代ではJAMのカヴァーでの方が有名であろう、David Watts。JAMのバージョンよりも
全然スマートである。 単調なグルーヴではあるが非常にノリがいいナンバー。
デヴィド・ワッツになりたいな・・・という憧れ・・更に言うならば嫉妬が歌われた曲である。
チャカポコ鳴っているギターが印象的。

次の曲は、デイヴの曲。ソロシングルとしても発表されヒットしたナンバーである。
イントロのオルガンが印象的であるが、中間部のコーラスも素晴らしい。
またそれまでのデイヴの曲とは違い、乱暴というよりは、スッキリとした味わい深い曲となっている。
サーカス一座の道化師の孤独について歌った曲であるが、デイヴの結婚に対する歌。とも言われている。

ハープシコードとホーンやストリングスが印象的なTwo Sistersだが、これは一聴すると少しサイケな印象もうけるだろう。
佳曲である。

また次の曲は、なんとボサノヴァ調だ。コレがまた素晴らしい。ゆったりとやさしくヘロヘロと歌うレイのヴォーカルは
このアルバムの中でも特に優れたところであろう。

次の曲はトラッド調。どっかで聴いた事がありそうなリズムがなんともいえない心地よさを持っている。

基本的にこのアルバム。ホーンを多用したアルバムだとは思うのだが、最もホーンをフューチャーした曲が
次のTin Soldier Manであろう。マーチング風。

A面の最後を飾る曲は、非常に恐ろしい曲でもある曲。 若年結婚の甘い罠とその後の悲惨な生活を描いた。
というなんじゃそりゃな恐い曲(笑) 途中途中に挿入されているオルガンが非常にモッドだ!

B面の最初はデイヴの曲でまくをあけるワケだが、ポップなメロディーに対してギターはめちゃくちゃヘヴィーっていう
その対象が印象的な曲。オルガンも素晴らしい。

次の曲がキンクスには珍しくサイケ。シド在籍時のフロイドにも近いものを感じるってのが意外だ。
やたらヘロヘロしているのだが、ヴォーカルの処理なんかもすごいサイケにしてある。

次の曲は、その後のキンクスにも通じるものを感じる、午後の紅茶の曲。コーラスが素晴らしい。
ノスタルジックな曲だ。

Funny Faceもデイヴの曲。デイヴも素晴らしい曲を書きますな。展開はちょっとヘンテコなトコもあるし。

鳥の鳴き声で始まる12曲目のEnd of The Seadonもゆったりとした曲。EPとして発表する予定だったらしい。
ベースが素晴らしい旋律を奏でているが、その上に乗っかるピアノとだるいヴォーカルも白眉だ。

13曲目は、説明不要の超名曲。初期キンクスの代名詞でもあるであろう、ピート・タウンゼントも
スティーヴ・マリオットもポール・ウェラーもレイの最高傑作とも言っている曲だ。
ウォータールーに行った事なんてないが、この美しく儚くもあるフォーキーなサウンドを聴くと
自分にとってのそういう場所を思い浮かべてしまうのだ。
ウォータールーの日暮れを見てる限り、僕はパラダイスにいるんだ。 なんて素晴らしいフレーズじゃないか。



現在リリースされているプラケース盤の方は、全曲ともMONOで収録されているのだが
紙ジャケの方はステレオマスターの方が仕様されている。このシリーズの特徴として
エコーが割と強いという事があると思うのだが、このアルバムも例によってそれだ。
特にウォータールーでのエコーのかかりぐあいは、ナンジャコリャ?級でもある。

でも、コレは好みだろうな。俺には特に不思議には聞こえないのでアリだ。
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