Review
Kinks / Preservation Act.2
ハッキリ言ってやりすぎです。 / ★★★★★★★☆ (7.5) (個人的には+1.5)
1. Announcement
2. Introduction to Solution
3. When A Solution Comes
4. Money Talks
5. Announcement
6. Shepherds of The Nation
7. Scum of The Earth
8. Second-Hand Car Spiv
9. He's Evil
10. Mirror of Love
11. Announcement
12. Nobody Gives
13. Oh Where Oh Were Is Love?
14. Flash's Dream (TheFinal Elbow)
15. Flash's Confession
16. Announcement
17. Nothings Lasts Forever
18. Artificial Man
19. Scraphead City
20. Announcement
21. Salvation Road
間違いなくやりすぎだ。ただ悔しい程に良い曲が多すぎだ。
それが聞いた瞬間に感じた感想だ。
キンクス、いやレイが伝えたかったテーマは明確だ。それは前作から繋がりから考える事をせずとも。
自然にかこまれた生活、いわばユートピアを商業主義におかされ、
その結果くだらない事業と法律で固められる様を描いた作品なのである。
ミスターフラッシュは実は地上屋でそのライバルのミスターブラックは理想主義の人物だったのだ。
情報や法律などで人間をコントロールし理想を築く。まさに風刺的としか言いようがないテーマだが
レイ程現実的なレベルでこのテーマを扱った人はいないだろう。
そういう意味でもやりすぎなのだ。まずバンドがレイの意図を理解してなかったらしいし。
しかし良い曲だらけなのが悔しい。
思えば「この世は全てショービジネスでも「虚構」を描いた作品なのでそれと似たテーマともいえる。
「人造人間」なんてタイトルを見れば分かるが、「情報操作によって去勢された人間」の世界を描いているのだ。
うーむ・・・怖いな・・。


このアルバム程キンクスを始めて聴く人にオススメ出来ないアルバムはないであろう。
劇団なのかバンドなのかメンバー達も分からかったというエピソードがある程に。
劇団化進めすぎ。ナレーションだけの曲がなんと6曲もあるってのがやる気出しすぎ。
前作よりも、曲調は割とハードな路線の曲が多い感じがする。テーマの問題かもしれないけど。

ファンファーレのあとにナレーションがいきなり入る曲が一番目って本当にやりすぎ・・・(笑)
Money Talk等の強烈なナンバーが入ってるのが救いってくらい、これは疲れる(笑)
ある意味プログレよりもプログレ的。サウンドって意味じゃなくて、なんかレイの世界感が。

しかし、本当に曲は良い。
名曲とはいえないと思うがハードなIntroduction to Solutionは非常にカッコイイ曲だし
前述したMoney Talkはこのアルバムの中でも上位に上るであろう曲。
ピアノ、ブラスが絡みまくるロックンロールナンバー。デイヴのギターがめちゃくちゃハードでカッコイイ。
「恋の鏡」なんかも美しい曲だと思う。キンクスはこういう曲をやらせたら世界一だ。
ビジネス化されてしまった村の人々の嘆きの歌「愛は何処に」も美しい。女性Voとの絡みが最高だし。
フラッシュ氏の夢の中での自己の良心との葛藤を描いた曲は「クリスマスキャロル」に通じるものを感じる。
その夢に対する葛藤をさらに描いた「フラッシュの告白」にはドキリとするばかりだ。
曲も非常にヘヴィーだし。続いて「愛さえはかなく」でフラッシュは逃走。フラッシュは敗北したのだ。
続く「人造人間」は間違いなく名曲だと思う。しかし歌詞は見るのが怖い程辛辣。
古きよき時代の最後ののんびり感を表したかのような「ごみ屑都市」も辛辣だ。
つまりは娼婦の愚痴なんだけど。よき時代が失われていくさまを皮肉な目で見てる感じ。

最後の曲の前のアナウンスなんてもっと恐怖に満ちている。
「午後9時から、午前6時までの外出を禁止。その時間は軍によってパトロールされる。
食料は配給制。商店の営業は一日3時間まで。娯楽施設は閉鎖。TVやラジオは政府公認の1チャンネルのみ。」
などの規則を盛り込んだ国家維持のための政策を施行する事を発表するアナウンス。

それで最後が「みんなで歩もう」「みんなで歌おう」だからもう目も当てられない。
ガクガクブルブルですよ!しかも曲調はフィナーレに相応しい程陽気な曲。



レイは誰よりも皮肉的な手法ではあったのだろうがロックを愛していたと思う。
それは次作でも明らかだが、彼はロック讃歌を歌っているのである。
ロックも彼が示唆したかのような産業化、商業化によってユートピアを失っていったのに関わらずだ。
不思議な事である。だが事実だ。このアルバムが傑作であるかは決める事は出来ない。
しかしレイがやりたかった事は素晴らしい。レイはのちのキャリアでそれを裏付けた。
レイ流の皮肉たっぷりのロックがロックな瞬間であった証拠であったアルバムである。

レイは後に言う。
「数々のロックバンドが出ては消える。しかしそのサウンドは消えない。」

紛れもなくコレはレイの・・・・キンクスの足跡である。そしてロックが辿った軌跡であり歴史である

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