サバイバル・イン・アメリカ
その10 ・・・食うか? グランドキャニオンでの出来事です。 アメリカ西側の観光ツアーなんかだと、ラスベガスと並んで人気のグランドキャニオンですから、行ったことがある方も多いでしょうね。 わたしたちはクルマではいったのですが、ワシントンDCから車で走り始めて4日目、結構なお疲れ状態での到着でした。 ですから、グランドキャニオンについたときには、駐車場やヘリポートに大勢のヒトがいるのを見て、そちらのほうが新鮮だったような思い出があります。 そしてそのアメリカが誇る大峡谷に入るわけですが。 ふつーの人々は歩いてはいる。登山道のような道をへいこら歩いていくわけです。気をつけなきゃいけないのは、当然なんですが行きはくだりで帰りが登り。もちろんふつうの靴でも十分歩けるんですが、傾斜は結構にあるし、じゃりまじりの土の乾燥した道ですからかなり疲れます。そして、峡谷の一番下(なのかな)の休憩所まで往復したら、一日がかりになるんじゃなかったかな…。 足に自信がない方、あるいは小金もちの方(笑)は、ロバさんを用います。ひょっとしたらラバさんだったかもしれません。とにかく小型の奇蹄目の動物の背に揺られて往復するわけですね。 そして、お金持ち。多くの日本人観光客はこの部類に属するようですが(ツアーのパックにはいってるのかな)、この人たちは、ヘリをチャーターするわけです。小型ジェット機もあったよなぁ。 貧乏旅行のわたしたちです。せっかく来たからには峡谷を肌で満喫すべきである、という建て前のもと、果敢に自分の足で峡谷を下り始めたのです。 そこここに看板があり、ここからずっと水がないから水を買っとけとか、足の調子が悪かったら降りるなとか注意書きがあります。 でもわたしたちはなめ腐っておりました。 全長の三分の一ほど降りたところで、これ以上おりたら戻りで死ぬぞと悟り、のどが渇いてしょうがないが飲むものがないという悲劇的な状態で、来た道をまた戻る羽目になったのです。 めちゃくちゃしんどかった。足は痛いし、道はそれなりに急だし、ラバさんが来たらよけなきゃだし、体中ほこりだらけになるし。上空を飛ぶヘリの爆音があれほど恨めしかったことはありません。景色を眺めて楽しむのなんて行きだけ。帰りはひたすら登ることだけ考えて足元しか見ていない。何でこんなしんどいことしちまったんだろうとしみじみ後悔しておりました。 ちょっと道が広くなって、休憩できるような石があるところでわたしはネを上げて、腰をおろしました。一息ついて見下ろせば、やはり峡谷はきれいです。あ、やっぱきてよかったなぁ、と自分に言い聞かせているとき、ふと視野の端を横切ったものがありました。 あれ、と思って脇を見ると、リスです。 リスは、わたしの腰掛けている石の上に来て、じっとこっちをうかがっています。 申し訳ないが何もありません。何もないのだけど、でかい図体に不似合いに可愛らしく小首をかしげているリスを見ていると、どうしてもちょっかいを出したくなるのが人情ってヤツです。 わたしは人差し指をそっと差し出しました。 リスは、ちょっと後ずさりしましたが、またすぐよってきて、鼻ずらを指先に寄せます。 リスはいきなりむんずとわたしの指をつかんだのです。それも両手でしっかりと。 つかんでなめる?。これ、絶対味見だろう。味見ってことは・・・次は、次は? そうは思っても、なぜかリスを振り払うことができません。リスに指をつかまれて固まってるぞ状態です。 そして、ついにリスは行動を起こしました。れろれろれろっともう一度指先をなめまわしたかと思うと、がりっ、とかじったのです。 つめを。 時間にして5分くらい、リスはわたしのつめをかじりつづけました。それ以上やると深爪になっちゃう、ってところでようやくかじるのをやめ、ぽいっ、と指を離してくれたのです。そして、軽く顔を洗うしぐさをしてから、するするっ、と石の上から去っていきました。 リスって、つめ、食うんですね?そらまぁたんぱく質だとは思うけど。 ってゆうかそれ以前に… おいしいんか?つめって… |