ひとびとの話 その4 父からの手紙 先日ちらりと言い訳に登場した父の話である。 楽しいオフ会に電話かけてきて呼び返した挙句、再び横浜まで送らせた、あの父である。 実の父ではない。義父というヤツである。実の父に比べればやや自由度はあるのかもしれないが、一応積極的な選択をして父になってもらった人ではない。積極的な選択に付随してきたシロモノである。 一見、なかなかに紳士然としている。年齢にしては珍しく180センチオーバーの身長を誇り、やや腹は出ているものの一応スマートな体型を維持している。長いサラリーマン生活で鍛えられたスーツの着こなしは決まってるし、頭髪も健在でいいカンジのロマンスグレーとなっている。 ただこのヒト、大ボケである。 下手をすると自己中なわがまま男ととられがちの行動をするが、どうもこれ、なぁんにも考えていないことに起因するものらしい。 たとえば、である。 それまでにクルマ出して、スーパーに行って豆買ってこなきゃいけない。 しかし、父は言う。 あーはいはいはい。 なんかやなヤツみたいに感じるかもしれないが、意地悪なんではない。本当に、何も考えてないだけなのである。だからどうにも憎めない部分があるのだが。 この父が、珍しく自分で物を考えて行動したことがあった。 もう昔のことなので、正確には覚えてないのだが、こんな内容だった。 「・・・おまえたちにも社会的な立場と言うものがあることを忘れないように。また、我々親のこともよく考えて欲しい。アメリカでの生活は自由であったと思うが、日本に帰ってくるのだから、日本の社会にきちんと順応しなければならないことをきちんと認識すること。あくまでおまえたちの良識を信用するが、帰国にあたってこれだけは言っておく。
くれぐれも、銃器や麻薬は持ち帰らないように。」
だからさ、そんなもん持ってないっつーに・・・ |