キールとパスタをどうぞ

Kiel Side No. 5 お題  プリンター

 

ずっと前、まだ社内で富士通のワープロ、オアシスを用いていたころ、プリンターはドットプリンターだった。

とにかくものすごく遅い(今から考えると、だけどね)。印刷仕込んだら一服しに行くのが常だった。

20ページくらい仕込んで、タバコ吸ってちょっと駄弁ってそろそろかしらと思って戻ってくると、2ページ目で紙がジャムっててエラーメッセージが出てるだけ、てなことも結構たびたびあったけど。

でもドットプリンターは打ち出してるぞ!という意気込みを感じさせる機械だった。一字一字苦労して書いた報告書や論文を一生懸命大事に打ち出してくれてるようなそんな妄想すら、思い起こさせるものだった。

それにこの時代のオアシスは、印刷と打ち込みを同時にできないというシロモノで(バックグラウンド印刷、という機能はあったんだがこれをかけると印刷処理も変換もものすごく遅くなる)打ち出すときは打ち出す!のである。打ち出しに時間がかかることもあり、プリンター画面にしてきちんと必要なページだけを選んで指定してやるのが当然であった。

その後PCが導入されて、英文はオアシスではなく、Wordperfectで処理するようになった。同時にレーザープリンターがはいった。

プリントはものすごく早くなった。文書を打ちながらのプリントもできるようになった(ただし英文だけね)。

全文書打ち出したってかかる時間はたかが知れているので、必要ページを選択するのはたいへん面倒くさくなり、平気でロスを出すようになった。地球にやさしくないのはわかっているが、面倒くさいものは面倒くさかったのである。

そのあと、短い一太郎の時代を経て、ようやく英・和文ともにWordを用いるようになったのである。

そして現在。

自分のデスクトップにあるコンピュータはLANで共有の(とは言っても現在はわたし一人で使っている)レーザープリンターに接続されている。

たかたかたか、と文書を作る。あ、ここまで打ち出しとこ、と気楽に思って印刷をかけ、背後でプリンターの給紙音を聞きながら、つぎの文書をたかたかたか、と打つ。実に快適である。

ところで。

Wordのツールバーの中にプリントのショートカットアイコンがあるのはご存知でしょう。

言うまでもないが、コイツを押せば、プリンタウインドを開く手間いらずで全文書印刷ができる。

当然わたしのような面倒くさがりの地球にやさしくない輩は愛用するボタンである。

10ページ中、6ページに修正個所があったら、わたしは全文書印刷をためらわない。

 

わたしの扱っている文書はたいてい50ページ内外のものである。英語だと、この言語の非合理的な表記法のため、約1.5倍ほどに文書の長さは伸びる。以前は章ごとに区切って別ファイルにしてたりしたこともあったが、昨今のメモリとペンティアムの進化でそんな必要もなくなった。

50ページ中のある一箇所に修正があった場合。

習性は恐ろしい。プリントのショートカットボタンをつい押してしまうのである。

タスクバーにあらわれたプリンタはあっという間にプリント枚数をカウントアップしていき、クリックしてプリンタウインドを出したころにはほとんどすべてのデータがプリンターに送られてしまっている。

わたしはため息をついて立ち上がり、プリンターのところへ行く。プリンターは着々と印刷を継続している。スイッチを切ったって無駄である。コイツは、ちゃんと覚えていて、スイッチを入れればまた打ち出しを続ける。メモリ消去したこともあったのだが、こっちの操作が悪いんだろうがフォントまで忘れやがって酷い目にあった。

50枚がプリントされていくのをぼぉっと見つめている。

そして、その中の必要な一枚だけを抜き、残り49枚を持って部屋の外のシュレッダーにゆく。

このたこシュレッダーは10枚位以上いっぺんに食わせると逆回転するシロモノなので、5、6回に分けて食わせてやる。

習性に流された一瞬のミスが、こういう結果を呼ぶわけである。ちなみにこれは一度や二度ではなく、50ページというのも多い方ではない。

なんかこれやっちまうたび、自分の人生の縮図を見ているような気がするのは、わたしだけだろうか・・・。

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