有閑シネマダム
すればするほどしたくなるのは、○X□△と映画鑑賞、だと言った女流作家がおりましたが、
ホント、観れば観るほど、観たくなりますよねぇ。
有閑シネマダムとは、オット出張中などのヒマを見つけて、夜な夜なこっそり映画観賞するマダムのこと!?
不定期にて、更新中。
マイナーなミニ・シアター系に偏ってますけど。
2003.July
『ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密』 C・クーリー監督 ★★★★★
このハリポタシリーズのような題名で、別に興味が涌かなかったのですが、
急にシネマダムのひとりと恵比寿で会うことになり、ガーデンシネマで上映していた作品です。
それがねぇ、思いがけず、とてもよかったのです。
子供の頃って、男の子なら秘密基地だったり、女の子も秘密クラブみたいなの作ったでしょ。
それをずっとずっと年をとっても続けていけたら、どんなにか楽しいでしょう。
お話のメインは、娘と母親の葛藤劇、それをサブで支えるのが、秘密クラブ「ヤァヤァ・シスターズ」なんですね。
娘役のサンドラ・ブロック、あるところで、「サンドラは化粧をしてキレイになればなるほど、ニューハーフ顔になる」、
っていうコメントを読んだのですが、納得。化粧をしたアップってコワイかも。
母親役は、エレン・バースティン、若いときはとても美人だったんだろうなぁ、素敵です。
他のヤァヤァの面々(って書くとヘンね)もステキなんです。
中でも、マギー・スミス! 大好き。
この方って、50代になったらこうなりたいわたしの理想の人、スーザン・サランドンに顔つきがとても似ていて、
70代になったらこうなりたい理想の人になりました。
メインのお話も過去と現在を辿りながら、同感できる仕上がりですが、
なんといっても、ヤァヤァの面々が最高。
アル中気味だったり、ヘビースモーカーだったり、カーチェイスなどしたり、その不良ぶり、毒舌ぶりがカッコイイ。
はやくバーサンになりたいなぁ、と初めて思ったかも。
監督は、『テルマ&ルイーズ』で脚本デビューしたC・クーリー。
だから、とびっきり元気なオンナを描けたわけですね。
あ、ココに登場する二人の旦那もすっごくいいの。こういう男を選ぶべし。
『トーク・トゥ・ハー』 P・アルモドバル監督 ★★★★☆
「深い眠りの底でも、女は女であり続ける」
おすぎ「観終わってから1時間泣きました・・・」
もちろん、これらの宣伝文句を知ってから、観に行ったのですが、
こういうのって、あまり参考にしないほうがいいですね。
ま、わたしもココでこれから観に行くであろう方に向かって、
書いているわけですが、観賞の仕方はそれぞれだなー、
ってことをこの映画で改めて思ったわけです。
思い起こせば、初めてこの監督を知ったのは、10年ほど前、『欲望の法則』というゲイのメロドラマを
スペイン通の友人に連れられて観に行った時。
あの時、わたしは体の具合が悪かったのですが、その後、スペイン料理屋で朝までどんちゃん騒ぎできたのは、
監督からパワーをもらったから!?
今回の作品の主人公、ペニグノは監督にとても近いキャラクターなような気がしました。
性の嗜好は異性と同性どっち? なんて質問はバカげているし、
愛情を感じることとソレとは関係ないんじゃないかしらねぇってこと。
倒錯とも受け取れる愛情表現、スタイリッシュなメロドラマとしては、過去作品を踏襲していますが、
『オール・アバウト・マイ・マザー』後、洗練されすぎて、おとなしくなっちゃいましたね。
ウケたのは、劇中劇で、看護士がある事件を起こすきっかけとなるサイレント映画、
これってギャグでしょ、ココで笑っていた人、わたしとスペイン通の例の友人、後方のおふたりさんしかいなかったけど、
アレって、どうなの、ボカシが入らなくていいんですかねー。
あんなアップで・・・以下、自粛。
だから、わたしと友人は泣けませんでした。
よく知っている友人のひとりがセンチメンタルになったのを見て、ふふふと笑ってしまったようなキモチになったから。
ヘンな映画です、そのヘンぶりがアルモドバルの世界、
それで、もっともっとヘンであってほしかったけど。
2003.June
『人生は時々、晴れ』 M・リー監督 ★★★★★+★
封切2日目だというのに、ガラ空きな映画館。皆、マトリックスでも観ているのかしら。
そりゃそうでしょう、この映画、冴えない人たちばっかり出てきて、梅雨時に拍車をかけて、うんざりしてきます。
しかし。わたしは2003年上半期のベスト1をこの作品に捧げます!
『秘密と嘘』でも、滝に打たれたようなショックを与えてくれたリー監督ですが、
今回もバケツの水を頭から浴びせかけられたような心地よい感動がありました。
やる気のない反抗期の息子、地味ィな娘、イライラした妻・・・、もうすべてにうんざりしきったタクシー運転手を
演じるのが、ティモシー・スポール、この作品を見ただけでは、まさかこの人がサーの称号を持っているなんて
信じられないでしょうけど、とても素晴らしい俳優!
他の役者さんも、冴えない具合がほんとリアリティがあって、現実で会ったような気になりました。
原題「All or Nothing」 なにがって?
うーん、その答えをココで書くと陳腐になってしまうから、言いませんけど・・・。
観終わった後、外では、また雨が降り出していましたが、ココロには晴れマーク。
リー監督は小津安二郎監督が好きなんだそう。やっぱりね。納得です。
『リトル・ダンサー』 S・ダルドリー監督 ★★★★☆
最新作『めぐりあう時間たち』では、少々相性が悪かったので、監督のこの出世作はどうなんでしょうと観てみました。
おもしろい!ダルドリー監督は舞台出身なんですってね。
音楽と場面との掛け合いもとても演出上手です。
英国ならではの炭鉱モンダイとダンスというニ物衝撃?の取り合わせが意表をついてます。
この主人公の男の子、ほんとはダンスが上手で選ばれたんでしょうけど、
ダンスが下手そうに見えるのがすごい。ジェイミー・ベル君、将来が楽しみだわ。
おませな女の子とオカマっぽい男の子もいい味出していました。
ジェイミー君に入れ込んでいたので、最後に成人しちゃって、ちょっとショック。
アメリカンな成功物語で、終わっていたのが難。惜しい。
『ハイヒール』 P・アルモドバル監督 ★★★★☆
もうすぐ封切の『トーク・トゥ・ハー』を待ちきれず、アルモドバル世界に浸ってみたくて借りた一本。
この監督の作品を観ると、いつでもそうなのだけど、ああ、10年ほど前に行ったマドリッドの夜がよみがえって来ます。
濃厚なんですね、スペインって、アルモドバルって。
赤をこれほどまでに、真紅に染め上げることのできる人は、この監督しかいないでしょう。
母と娘の葛藤劇なんですが、庶民のソレではなく、ゴージャス。
『オール・アバウト・マイ・マザー』でもインパクトがあったマリサ・パレデス演じる母と
ビクトリア・アブリル演じる娘もきりりとブランドスーツと着こなし、カッコイイ。
壮大なメロドラマのはずが、ところどころおかしな場面があるのもアルモドバルならでは。
なんていっても、脇役のオカマが判事だったりして、そのオカマが娘を無理やり口説く場面は、滑稽かつストレート。
そういや、スペイン語で、愛してますは、te quiero. 君がほしい、そのまんまですわね。
『カラマリ・ユニオン』 A・カウリスマキ監督 ★★★★☆
最新作『過去のない男』では、これぞカウリスマキという集大成を見せてくれましたが、
初期の頃の荒削りな作品を観るのも、また格別です。
カラマリって烏賊のことですから、訳せば、烏賊同盟?っていう意味のおはなし。
労働者階級の男たちがこぞって、ブルジョアになるため同盟を組み、町へと脱出するのですが・・・
もう、変、変、変、へんすぎて、笑っちゃう。
まず、男たちが皆フランクっていう名前なんです。
フランクとフランクがフランクを探してたら、フランクがやってきて、フランクを殺し、フランクといっしょに逃げる。
レニグラシリーズと敗者3部作の魅力を併せ持った貴重な一作と言えるでしょう。
チョイ役で出ているアキ監督のほっそりした若かりし頃の姿も拝めます。
最後に、マッティ・ペロンパー演じるフランクともうひとりのフランクが、大海原へ小さい手漕ぎボートで繰り出すのは、なんとも哀愁がありました。
2003.May
『めぐりあう時間たち』 S・ダルドリー監督 ★★★★☆
「ダロウェイ夫人」といえば、その昔、英語の授業で毎週宿題が出た忌まわしき本、
二十歳そこそこの小娘にはさっぱり訳わかりませんでしたが、ちゃんと読んでおけば、この映画をより一層楽しむことができたかも。
では、難解かというとそうでもなく、時代も場所も異なる3人の女性の人生が分かり易く絡み合っています。
編集の妙ですね。 レズっ気ありがミソなんだけど、とってつけたようで消化不良なのが、難といえば難かしら。
これで、アカデミー主演女優賞を取ったN・キッドマン、素の愛くるしい鼻をワシ鼻に付け替えて!?実力発揮。
女優陣ばかりが目だっているけど、詩人役のエド・ハリスにも注目のこと。
M・ストリープのセリフが耳に残っています。
“若い頃に朝起きるとワクワクして、今日が幸せの始まりだと思ったけれど、
始まりなんかじゃなかったわ、あの瞬間こそが幸せそのものだったのよ”
瞬間の積み重ねがやがて時間になってゆくんですね。 原題 The Hours
・・・と感想を書いた後で、映画好きのH子さんと話したら、わたしはぜんぜんわかってなかったわーと愕然。
『バーバー』 J・コーエン監督 ★★★☆☆
「髪型を変えるように少しだけ人生を変えたい」のキャッチフレーズで前向きなお話を想像しましたが、そうゆう欲を持つと怖いんですね。
平凡な自分がもしなんらかのきっかけで犯罪に手を染めても、
こんな風に淡々と時が過ぎていくのかも、なんて思ってしまいました。
セピア調の映像、主役のビリー・ボブ・ソーントンのカッコよさ、
登場人物のそれぞれの味わい、ブラックユーモアのセンスなど、どれも丁寧に作られていますが、
後半間延びして、もっとパンチを効かせてほしかったなぁ、と少々不満です。
ベートーべンのソナタが心に染みました。
『バタフライ・キス』 M・ウィンターボトム監督 ★☆☆☆☆
観なきゃよかった。
「ひかりのまち」など最近のフツウの作品がウソのような監督初期の暗〜いお話。
なんでこんな映画撮ったんでしょう。
常軌を逸したヒロインに尽くす女の子!の恋の逃避行、で、先々で殺人を犯してしまうんです。
胃が痛くなって途中で止めようかと思いつつ、我慢して観たら、
悲惨なラストでしたが、これで終りだとほっとしました。
主人公も同じく安堵したんでしょうね。
後でレビューを読んだら、淀川センセは手放しで絶賛していました。
わたしには、エキセントリックな純愛を受け入れるキャパがないってことかしら。
『マレーナ』J・トルトナーレ監督 ★★★★★
観てよかったぁ。
同じく悲惨な女の一生、をなぞっているのだけれど、後味のとても良いお話。
視点が常に事態を傍観する男の子にあるところが、 マレーナに無理に感情移入しなくていいので、グッド。
少年の家族や町の人々が劇画チックで、クスクス笑っちゃうところに救いがあります。
「思春期には自分の内部に女性が棲みついていた・・」と宮本輝さんがエッセイの中で
告白していましたが、そんなオトコならではの性のめざめにも共感できます。
マレーナの豊満な腰の揺れ!に寄り添う、たゆたうような映像の動きが美しい。
愛する相手をこんな風に守る方法もあるんですね。
片想いも立派なひとつの愛の形だと教えてくれます。
『マルホランド・ドライブ』 D・リンチ監督 ★★★★☆
2時間半は短い。
もっともっとその快感に身をゆだねていたかったから、
「ツイン・ピークス」のようにTVシリーズで続けてほしかったなぁ。
何あれ?誰それ?どうゆうこと?
次から次へと追いたてられるリンチ真骨頂の謎がいっぱいでクラクラする。
クラシックな美人女優もとても魅力的。
事故に遭って記憶喪失になった黒髪の女が金髪の女と自分捜しをしているうちは、
単純なミステリーなのですが、後半30分で全部が裏返ってしまうんです。
見終わった後は、自分が見た荒唐無稽な夢を思いだそうとするようなもどかしさとなつかしさに満たされる。
いろんなレビューサイトで解釈論争が盛んですが、答えなんてなくていいんじゃないの。
・・と思ったら、監督自身が正解があると言うんですね。
うーん、厄介。謎好き体質の人にはハマります。