作品紹介
あらすじ:「…具体的に、あなたは何の研究をしているのですか?木賀峰教授」「死なない研究——ですよ」永遠に生き続ける少女、円朽葉をめぐる奇怪極まりない研究のモニターに誘われた”戯言遣い”こと「ぼく」は、骨董アパートの住人・紫木一姫と春日井春日とともに京都北部に位置する診療所跡を訪れる——が、そこに待ち受けていたのは凄惨な「運命」そのものだった!”一人で二人の匂宮兄妹”——”殺し名”第一位の「匂宮」が満を持して登場する、これぞ白熱の新青春エンタ。<戯言シリーズ>!(本書裏表紙より)
キャラ :★★★★★
ストーリー:★★★★★
結 末 :★★★★☆
総 合 :★★★★★
戯言シリーズ第5弾。前作は多少肩透かしでしたが、だからといって戯言シリーズから興味を失うことはありません。もうここまでくると強烈なキャラクターをいかにして活かせるかが作品の善し悪しを決めているようです。
もう円熟期に入りつつあるキャラクター、今回も言うまでもありません。主人公の「ぼく」、紫木一姫、春日井春日、この3人がメインのチームで、木賀峰教授と円朽葉が加わって話は進みます。そして、今回の最重要人物、匂宮兄妹(出夢・理澄)が出てきてメインキャラは揃いました。あとは玖渚、哀川と
みいこさん、他骨董アパートの住人が出てきて「狐さん」がいて…と、今回はそれなりに登場人物は豊富です。その中でも、前回初登場した春日井春日が面白いです。特にこれといった信念や主義主張などをもちあわせていない気まぐれっぷりがよく、「ぼく」との会話もなかなか笑えます。そして紫木一姫。3巻で登場し、4巻でもわずかにでてきたのですが、今回はかなり登場機会が多いです。この強烈なキャラは玖渚以上、ヒロインとしても通用するか、とさえ思いました。あとは匂宮兄弟に関しては、妹の理澄は戯言シリーズでは結構いがちな感じの「明るい女の子」です。2巻に出てきた葵井巫女子のような感じです。兄の出夢は、「殺人者」というのもありますがやはり零崎人識を思い出させます。結構強烈だけど、どこか憎めない、といったもの。この兄妹は新しくはありませんが、懐かしくてほのぼのとしました。
そして本筋は、一姫のバイトをして毎日を過ごしていた「ぼく」がある日、木賀峰教授に呼ばれ、バイトをすることに。そして居候の春日井春日が行き倒れの女の子を拾ってきて、匂宮理澄と出会う。その後、「ぼく」は散々な「運命」に導かれて…といったもの。前半ではかなり説明が多くて戯言シリーズのよさが消えてしまっているなぁ、と思いました。大して興味がひかれず、読む気が失せましたが、後半はすごい!急展開でいろいろなことが起きたかと思うと、なんと<ネタバレ>その場にいた「ぼく」を除く4人(木賀峰約・円朽葉・紫木一姫・匂宮理澄)が死んでしまいます。特に3番目はこれからずっとレギュラーとして活躍していくものだとばかり思っていたのでその衝撃は大きかったです。まぁ、確かにその前兆はあったのですが…妙に悟っていたり「ぼく」と約束をしたり…そして、その後の展開がなんともいえず素晴らしかった!「戯言遣い」の「ぼく」が本気でふさぎこんで…その後のみいこさんとのやり取りとか。これは本当に感動します。それだけで★5つは確定です。他にどんなマイナス要素があっても関係なし。(無限大−実数)は必ず無限大。(無限大−無限大)の不定形にならない限りは必ず無限大のままで、それだけ感動的なやり取りは大きなものでした。
結末…感動的なストーリーには感動的な結末がついてくるものですが、さして感動的ではありませんでした。犯人の正体はばればれ、トリックも大体読めて、さしてかわった点はありません。ただ、「狐さん」の正体とか「橙なる種」とか、次回以降に期待が持てる終わり方。また、すべてが発覚した後に登場人物の心情を考えると切なくなります。今回は「クビシメロマンチスト」を思い出しました。
結論:断然おすすめです!久々に見た「感動」の話が素晴らしく、戯言シリーズは巻を追うごとにイマイチになっていっていたので今回もだめなのか、と思って多少諦め気味に読み始めたのですが、後半は抜群の出来!ぜひ読んでみてください!
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