作品紹介(上)
作品紹介(下)
あらすじ:「きみは玖渚友のことが本当は嫌いなんじゃないのかな?」天才工学師・玖渚友のかつての「仲間」、兎吊木垓輔が囚われる謎めいた研究所——堕落三昧斜道卿壱郎研究施設。友に引き連れられ、兎吊木を救出しに向かう「ぼく」こと”戯言遣いいーちゃん”の眼前に広げられる戦慄の”情景”。しかしその「終わり」は、さらなる「始まり」の前触れに過ぎなかった——!絶好調、西尾維新の<戯言シリーズ>。こんな新青春エンタを待っていた!(上巻裏表紙より)
キャラ :★★★★☆
ストーリー:★★☆☆☆
結 末 :★★★★☆
総 合 :★★★☆☆
『戯言…戯れて言うふざけた言葉。冗談(第四版・広辞苑より)』作中で「ぼく」が遣う「戯言」は全然ふざけたようには見えないし、冗談からは程遠い存在です。最初読んだ時には妙な違和感が涌いた言葉ですが、今ではもうこのシリーズの名物。やはり最近は物事をストレートには言わずに多少ぼかすのが流行っているようですね。まぁ私は嫌いではありませんが…
さてさて、毎回嵐のようなキャラクターを出して惜しげもなく殺していく(言葉悪い…)西尾氏ですが、今回もやはり期待してしまいます。「ぼく」の歪み具合は相変わらず…ですが、今回は多少勢いが弱いです。さすがに『兎吊木垓輔の戯言殺し』は伊達じゃない、というところでしょうか。また、ここのところ出番が少なかった玖渚がヒロイン(副主人公)の座を奪還!ただし1巻ほどの強烈さはありませんでした。次に、2巻で話に出てきた鈴無音々が初登場。この3人が今回チーム(?)として行動しますが、まぁ悪くはなかったのですがありがちなような…別に浅野さんでもよかったと思います。あとは、研究所員は特に取りたてて言うほどではありませんでした。ただ、心視先生は結構よかった。結構強烈なキャラクターを持っているのにどこか温かい面を持っている、という今までにはあんまりいない人でした。あと志人くんはなかなか。これがレギュラーキャラとなれば「ぼく」を超える完全な突っ込みキャラとして話を盛り立ててくれるのではないでしょうか。それと、大泥棒石丸小唄。キャラ自体はそこまでいいキャラではないのですが、口癖の「十全」が気に入ってしまいました。そして、今回の中心人物、兎吊木垓輔!これは素晴らしい!この人単体ならば★6つくらいつけたいところです。皮肉屋、とかニヒル、冷静などの言葉では言い表せない——本文中にもありましたがあれはすべて「余裕」なんですよね。多少の性格の悪さもまたそれを引き立てるのを助けていて◎。こんな感じの大人を目指したいと思わせてくれます(私だけ?)
次に、どうしてもこの戯言シリーズのネックとなってしまうストーリー。今回もストーリーの面ではさしてよい点は見つかりませんでした。とある山奥の研究所に捕らわれている昔の仲間の兎吊木垓輔を玖渚が助け出そうとするというもの。別段かわったところはなく、独創性があまり感じられません。それと、上巻の方は説明が中心の為に中弛みしてしまい、あまり興味がひかれません。ただ、今回は『戯言殺し』の為に「ぼく」の歪み具合がない為に大して笑えないかわりに、下巻で石丸小唄と二人で繰り広げる手に汗握る展開が見られます。『クビツリハイスクール』でもあったのですが、今回の方がより臨場感があります。
今回は推理よりもどちらかといえばそれまでの過程の方が重視されてるので結末に関してはそれほどかわったことはありませんでした。が、今回もそれなりのどんでん返しが用意されています。石丸小唄の正体…今考えればそれ以外考えられないのですが、やはり読んでいる当時に気付くのは無理でしたね。あと、犯人の正体に関してはさすがにわかりました。それまでに伏線がかなり用意されているので。そのあたりを見てもやはり兎吊木垓輔の狡猾さがうかがえます。「汚名挽回」、なんだか切ない響きですね。
結論:そこまでお勧めはできません。悪くはなかったのですがとりたてていうほどのものでもないような気がします。ただ今回は今までにないスリリングな感じがあったので、そういうのを求めるのならばいいでしょう。ところで、今回の『サイコロジカル』、森博嗣著『すべてがFになる』にすごく似ていませんでしたか?シチュエーションといい結末といい…それがあるので今回はどうしても高評価をつけることはできませんでした。
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