作品紹介

著者:高里椎奈
あらすじ:悪戯好きの子鬼、カブとアル。うだつの上がらないサラリーマン・唐沢は、揶揄われながらも二人との同居に幸せを感じ始める。一方、上流坂署刑事・高遠は、貴金属店泥棒自殺事件の報告書を纏めるうち、得体の知れない蟠りを覚え…。時は移ろい、事件は繰り返されようと、変わらぬ真実もある。薬屋シリーズ第9弾!(本書裏表紙より)
 
キャラ :★★★★☆
ストーリー:★★★★☆
 結 末 :★★★★☆
 総 合 :★★★★☆

 キャラクターは、今回は薬屋シリーズの中では異色な、レギュラー3人組の登場回数が少なめな話です。ちょい役で零一と剴もいましたが本当にちょい役です。ただ、零一が意外にリベザルにはやさしかったのには以外。やはり秋がしつこすぎるんですかねぇ…一部では「リベザル成長日記」と呼ばれる薬屋シリーズが3人組の登場回数が少ないのは読んでて「今回はキャラクターは期待しない方がいいかなぁ…」と思いましたが、今回は薬屋3人組があんまり出てこないけれども、その分高遠がよくがんばりました。むしろ小さく纏まっていて艶やかさはない分、こちらの方が読みやすくて好き、という人もいるでしょう。気分は、故障者続出して今年はもうだめだと思われたときに1軍半の選手が意外にがんばって、チームカラーが変わったけれども全員野球で地道に勝ちを重ねた一昨年あたりの巨人を見ている感じでした。(野球に興味ない人はすみません><余談ですが私は別に巨人ファンではありません)さて、話はそれましたが、他に新登場で普通のサラリーマンの唐沢と、それを助けた悪魔のカブとアル。そして刑事の來多川。唐沢とカブは普通〜のありがちなキャラクターですがアルが意外にいい味を出していました。これはカブのサブとしていい働きをしておりました。それと來田川が最初は頭の固いエリートというイメージだったのですが少しずつ変わってきて素直ないい奴になっていきます。どちらにしてもなかなかいいキャラで、ポスト葉山、とはいきませんが刑事達に新しい旋風か?というわけで薬屋がいないかわりに他がよくがんばっていたので★4つ。

 ストーリーは、一つの事件を集中して調査する高遠と二人の悪魔と過ごしている唐沢が中心です。新しく配属された來多川を鬱陶しいと思いながらも自分なりの正義を貫く高遠のエピソードは取り立てて変わった事はないのですが、今までよくわからなかった高遠の行動パターンがわかって少し嬉しかったです。ああ、なるほど!そういうことか!と思ったのは決して私だけではないでしょう。「悪魔と詐欺師」に出てきた高遠の上司が少しだけ紹介されていたのは私も忘れかけていたところで出てきて一本とられました。また、唐沢は最初は本気で嫌っていた悪魔を次第に受け入れるようになってきて最後は大きなことを三人でしでかそうというもの。唐沢が二人のことを理解したときには、ああ、確かにと思って納得させられました。そして二人が唐沢の取引相手に悪戯を仕掛ける話は結構笑えました。

 結末は唐沢側はとても満足でした。最後の一件の中でカブとアルの二人が本当にやろうとしていたことの意味、なるほど二人の存在はああいうことだったのか、と最後まで行って全てが納得いきました。高遠側は微妙。意外といえば意外でしたが格別なよさは感じられませんでした。そして、最後の最後に秋が出てくる場面、ほのぼのとしていて薬屋シリーズの本来の味がここにきて出てきたかな、と思いました。

結論:なかなかよいです。「蒼い千鳥〜」に続き薬屋っぽくない薬屋シリーズでしたがこういうのもありだと思いました。『アリス』である秋が唐沢に与えたもの…それは迫りくる『災厄』から身を守る為の『お守り』だったのかもしれません。「大切なのは自分が己の正義を裏切らない事」昔、自分でも似たようなことを考えていたので共感できました。


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