作品紹介

著者:高里椎奈
あらすじ:「退屈しのぎではない、映画のような人生を」。このメールを受け取って、ネット上から消えた8人の謎を追う車谷エリカと道長円。病院から失踪した11人を調査する座木とリベザル。4人の惨殺事件を調査する高遠と葉山。三つの事件が絡み合い錯綜するなか、傍観を決め込む秋だが……。加速する高里ワールド、堂々第7弾!(本書裏表紙より)

 キャラ :★★★★★
ストーリー:★★☆☆☆
 結 末 :★★★☆☆
 総 合 :★★★☆☆

 今までのキャラクター総出演のオールスターの様な豪華な顔ぶれ。レギュラーの3人は当然として、零一、花花二人組、柚之助に妖怪警察二人組、木鈴に総和、シャドウに早川に高遠、御兄弟など、登場人物紹介を読んだだけで心踊る顔ぶれでした。ただ、正直名前だけの人が多く、妖怪警察二人組と総和と早川、御真鶴に関してはごくわずかの出番で、特に早川に関しては授業中に居眠りをしていたエリカを起こすだけ、という役柄。それ以降全く出てこないのだからわざわざ早川を再登場させたわけがわかりませんでした。まぁ、一度再登場したわけだから今後また出てくる可能性があるのかな、という期待はありますが。ただ、他の普通に登場するキャラクターに関しては相変わらずの深いキャラクター作りがうかがえて、さすがは高里ワールドの凄味を再確認させられました。

 ストーリーは、あらすじにある通り、事件が3つ出てきて、それぞれが何かしらリンクしているというもの。正直な話、全てが大したことなく感じられました。ネットから消えた8人の事件に関しては無駄に人数が多いだけで読んでいるときの、ワクワク感が感じられませんでした。また、病院の調査に関しても大して興味が湧かなく、唯一よかったのは4人の惨殺事件でした。肝だけを置き去るという不気味な事件の裏付けには何があるのか?また、木鈴はどうなるのか、などこれだけは今までの薬屋シリーズ通りの面白さがありましたが、如何せん他の二つがイマイチでした。

 結末はというと…<ネタバレ>宗教が関係してきて、それを利用して妖怪が人間を食べていたというもの。宗教を出してきたあたりが納得いかなく、どうも腑に落ちませんでした。座木とシャドウ達も結局途中で手を引いてしまうというあたりが、仕方なかったのかもしれませんが、なんとも中途半端な気がしてどうも好きになれませんでした。また、今回秋は自分の正体を木鈴にばらしてしまいます。そのエピソードは良かったです。今後の総和とリベザルにもそういう関係が来るのかな、と思うと少し期待できます。作者があとがきで「今回は自分の書きたいものを書いた」という内容のことを述べていましたが、まさにその通りだろうと思いました。結末がそんな感じで、大衆受けを狙ったような感じが一切しませんでした。私は今回の結末はいいと思いませんでしたし、登場人物による期待が大きかっただけに、実際落胆の色を隠せませんでした。ただ、六地蔵の話は一見解決したように見える出来事が実は…というのが意外でよかったし、秋の最後の セリフの「本当は僕も知らないのさ」というセリフもいい味を出していました。そういう理由で本来★2つにするところを3つにしました。

結論:私的にはあまりお勧めできません。キャラクター以外は薬屋シリーズの中で、低い方ですし、結末が合わない人もいると思います。まぁ、最後の秋のセリフは良かったですが。余談ですが、最後のセリフと言えば今回の題名は数少ない本編との関連性が見出せる作品でした。「悪魔と詐欺師」と今作以外、題名の意味が不明でした。ただ、私は幻想的な感じがする題名である薬屋シリーズの題名は好きです。


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