悪魔と詐欺師
作品紹介

著者:高里椎奈
あらすじ:「当ててご覧。これらの事件には、共通点がある」喫茶店で毒死したオトコ。マンションから飛び降りた会社員。プログラマーは列車事故で師に、書店員の娘は手首を切った。だが、それらはすべて解決したはずの事件だったのだ。そこに「なにか」の意思が働いていたというのか——?おなじみ薬屋三人組、東奔西走す!!(本書裏表紙より)

 
キャラ :★★★☆☆
ストーリー:★★☆☆☆
 結 末 :★★★★★
 総 合 :★★★☆☆

 今回のキャラクターは悪くはないけれども、取り立てて言うほどではありません。不満点は、今回は全体的に見て少し薄いです。もう少しキャラクターに深みを持たせればよかったのに…という感想を持ちました。というわけで、今回は★3つ。

 今回ストーリーは5つの章とカーテンコールに分かれる、今まで薬屋シリーズにはなかった形式。簡単に説明すると
[暗鬼]高遠が見合いに行くと、事件に巻き込まれる。短く即解解決
[再鬼]1巻の登場人物、高橋総和が再登場。ここでは推理より、リベザルと総和のエピソードが中心
[夜鬼]サクバスのヘラからの依頼。単純明快で割と読みやすい
[回鬼]留守番をしていたリベザルが…彼がここまで活躍したのもシリーズ通しても稀
[惹鬼]なぜか秋が由高という人物と同居している。高遠・葉山・座木・リベザルが力を合わせてひとつの事件を調査してゆく。と、一見それぞれ独立しているかのような二つの視点から見た物事が、実は大変深い繋がりをあらわしている。非常に難解で、私は1回読んだだけでは理解しきれなかった
[カーテンコール]すべてが解決した後の後日のエピソード。ここもやはり難解。ただし、今までわからなかった事実が少しわかり、その点は多少魅力あり

ということだが、この短編スタイルは私には合わなかった。内容としては悪くはないのだが、やはり全体的に見ると低評価は否めない。
 結末は、一度目読んだときの正直な感想は「なんだこりゃ?」それで二度目読み直すと、「ああ、なるほど」と言う感じ。難解ではあるものの、全てを理解できれば、この物語の深さと意図すること、そして切なさが身に染みます。零一は由高から契約を持ちかけられます。その内容は<ネタバレ>「違法手術をしたものを殺して欲しい。そして李和にお礼を言いたい。ただし、殺したと言う罪の意識なしで」という様なもの。ただ、零一は自分一人ではそれができそうにないため、秋に頼んで零一の中に由高の人格を入れる。そして一種の多重人格のような感じで4ヶ月間を過ごし、最後に李和にお礼を言って終了。そう考えれば、最後の秋と零一の会話の説明がつきます。
cf.)秋「二つの人格を同居させるなんて長くは持たないって最初に言ったはずだよ?」
  零一「契約なんだよ。手を汚したことを知らずにあいつが生きていなけりゃいけなかった」
  秋「だから二人必要って?馬鹿に虫の良い話だね」

この結末は素晴らしいと思います。(ただしある程度の国語力がないと読み取りきれないので、そういう意味では最低の結末に成り下がる可能性もありますが…)

結論:私から見れば結末以外はあんまりだったなぁ…って感じです。しかも結末が読み取りきれていなかった1回目なんかは感想は口にできなかったほどです><ただ、読み取りきれればこの結末は最高のものになりますが…そういう意味ではこの「悪魔と詐欺師」は読む人によって評価が代わる、賛否両論の本ではないでしょうか。5つの短編に分ける方式が合う人もいるでしょうし。また、今回は初めてタイトルの意味が理解できました。「悪魔と詐欺師」は単純に考えて、悪魔:零一、詐欺師:秋、でいいのではないでしょうか?このタイトルもまた、ラストの由高が切なくなってきます


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