黄色い目をした猫の幸せ
作品紹介

著者:高里椎奈
あらすじ:それは何の変哲もない、ただの箱に見えた。幾分、湿った官職の、大き目のダンボールは子。湿っているのは、昨日の雨のせいだと思った。だが開けた瞬間、そんな考えは消し飛んだ。中にあったのは遺体だった。首も手足も切り落とされた、血塗れの子供の遺体だった……。おなじみ『深山木薬店』の3人が恐怖の謎に挑む!!(本書裏表紙より)

 キャラ :★★★★★
ストーリ−:★★★★☆
 結 末 :★★★★☆
 総 合 :★★★★☆

   相変わらずの素晴らしいキャラ作りは満足でした。特に、今回の重要人物である椚良太は、1回限りの登場人物にするのが惜しいくらいキャラが立っていて、読んでいて嬉しいような悲しいような…文中に「リベザルと良太が再会するのは、それから十年後のことになる」とありましたが、ぜひそのエピソードを書いて欲しいものです。また、前作では名前程度(しかも苗字無し)しか出てこなかった御葉山の出番が多くて嬉しかったです。

 前回の課題であったストーリーはかなりボリュームアップしていました。秋が昼飯を賭けてバスケをしてくる間、リベザルと座木で食事をしている、という時。その様な日常的な話がある為、しばらくそれが続くと考えていたその真っ只中、突然殺人の話題になって読んでいて大変驚きました。この様な奇抜な発想に私は惚れっ放しです。さらに言えば、椚家と佐倉家の二つの家庭が入り乱れるそのストーリーは及第点です。それと、ごくたまに出るリベザルの名発言、「謝るくらいなら最初からしなければいいのに」。これは本の中よりむしろ現実世界の若者に向けての言葉ではないか、と思いました。最近、後先考えない人が多く(自分はそうならないよう努力しているつもりですが…)それをよく思わない著者からのメッセージではないでしょうか。できることならこの本を読ませてやりたい人間が知り合いに山ほどいますTT。また、良太とのエピソードは家族の温かみが再確認されました。自分は今、家族がいて学校にもいけて生活に何一つ不自由ない生活が送れて…という日常的な幸せに気づかず生活している自分が幸せなのではないでしょうか。

 結末は、久々に読んでて興奮しました。「そうか、こういうことだったんだ!」と納得しまくりで、きっとその当時の私の頭の上では電球が光っていたと思います(笑)また、秋が大活躍。あまりに格好よくて、今まで「主役の割にあまり大した事ないな〜。周りのキャラがいいだけに勿体無い」なんてことを思っていた私も、ここで評価やイメージが急変しました。 「そんなコト知るか。ただお前が気に入らない、それだけだ」や、「僕の意見に口出ししないでくれ」といういかにも秋らしい、しかもしっかり決まっているセリフや、「つらいことも抱えたままそこから光に向かって歩き出せることが正しいんだと思ってる」という哲学的な素晴らしいセリフ。お世辞ではなく感動しました。結末だけでも一見の価値あり。それと、シリーズ通しても稀に見る座木の激怒シーンが出てきました。まぁ優しい座木なら怒っても仕方ないか…。ここも座木のキャラを位置付ける隠れた名シーンです。

結論:唯一の弱点であったストーリーが補強されて、私的には何一つ文句ありません!シリーズの中でも1、2を争う完成度なだけに無条件にお勧めできます。ぜひともご覧下さい!また、本のタイトルは、今ひとつストーリーとの関連性が見出せませんが、そのセンスある響きとミステリアスな表紙がポイントです。


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