作品紹介
あらすじ:希望は、失望の後ではなく、絶望の先に仄かに見えるもの。約束の地(ユートピア)は、求めても届かず、立ち止まっても訪れず、ただ全力を振り絞って歩きつづけるうちに、ふと刹那立ち現れ、通り過ぎなければならないオアシスのようなもの。高里椎奈の傑作ファンタジー3本立て!世にも残酷で暖かな寓話をお届けします。(本書裏表紙より)
キャラ :★★★☆☆
ストーリー:★★☆☆☆
結 論 :★★☆☆☆
総 合 :★★☆☆☆
この「お伽話のように」は前作の「それでも君が」と同じく『ドルチェ・ヴィスタ』シリーズで、高里椎奈先生の執筆するファンタジーのシリーズです。今作は「春の月夜に消える影」「幻日、残照」「非常識的リアリズム」の3作に分かれている短編集です。
さて、キャラクターは3話ともに共通して、金寛(キンカン)こと金田寛治が登場し、2話目はキンカンが中心になって展開していきますが、1話では黒、3話では草木竹流が中心となります。キャラクターに関しては可もなし不可もなしといった感じです。薬屋シリーズのように取り立てていう程の魅力は感じませんでした。そういうわけで★3つ
ストーリーは短編集の為話に分けて解説します
[第1話]黒と薙季によるホームレスの話。新しい町にやってきた二人の仕事をする薙季とそれを待つ黒がそれぞれのエピソードを描く。風真や芦柑など、黒を取り巻く環境に振り回されながらも平和に過ごしていたある日、妙な噂を耳にして…また、正体不明の二人組、杉江と中津森も
[第2話]バイトの鬼、金田寛治から見た毎日の話。偶然公園で見かけた波子と話すが口下手なキンカンはするつもりはなかったのに泣かせてしまう。そこから始まる二人の奇妙なエピソード
[第3話]ある種の『病気』を持った草木竹流は医者に連れて行かれることによって不本意ながら修理屋のキンカンとジャファと出会う。今まで接したことのなかった『外界』の雰囲気に竹流は少しずつ心が動かされ…
簡単に紹介すればこんな感じです。『ドルチェ・ヴィスタ』シリーズなので前作のようなファンタジーかと思えば、今回は私達が暮らしている世界にごく近い世界観で描かれていました。ただ、美しい情景描写を描ける高里先生がファンタジーをするのに今回のようにするのも少しもったいないかな…と。それと、これもイマイチ興味をひかれるような特別な感じはしなかった気がします。前作の『それでも君が』が「本格的なファンタジ−」だとしたら、今作の『お伽話のように』は「現実感のない話」といった感じです。前作のようなイメージを期待して読み始めたらがっかりするでしょう。
結末は、どれもイマイチ。ファンタジーを銘打っておきながら、ファンタジーのような終わり方をしたのは第2話だけ。他はあえて『ドルチェ・ヴィスタ』シリーズにする理由はなかったのではないかな…と。その第2話にしてもなんともお粗末な気がしました。何を言いたいのかはわかるのだけれども…というのが正直な感想です。また、第1話と第3話の方はファンタジーっぽくなく、そしてあまり感動もしませんでした。
結論:あまりお勧めしません。前作がかなりよかったので期待していたのですが今作はあまり…というよりはっきりと駄作だと思いました。そもそも「ファンタジー」とは「幻想・空想」のことです。そして「幻想・空想」は「非現実的なことを、夢でも見ているかのように創造する」という意味です。前作はそれにばっちり当てはまっていてよかったのですが…薬屋シリーズはよくて前作はイマイチだった、という人にはよいかもしれませんが、両方ともよい、という人や両方とも駄目、という人はイマイチなのではないでしょうか。
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