ある日の朝、新聞を読んでいたら、ある広告に目が留まった。青年海外協力隊の隊員募集の広告だ。もしあの日僕が新聞を読んでいなかったら、今ごろ僕はモロッコにいなかったはずだし、もしあの日いつものようにスポーツ欄とラ・テ欄にしか目を通さなかったなら、今ごろ僕は日本にいたはずだ。

現在住んでいるところ、今のお仕事。

　僕の住んでいるのはモロッコという国のスフロという山間の小さな町。人口6万人の小さな町。日本でいうと佐賀県唐津市と同じくらいの規模。でも海はない。僕が働いているのはスフロ市役所工務課というところ。主な仕事は公共空間の整備。それ以外に、上司の雑用をそつなくこなし、おばちゃん職員の愚痴を聞き、同僚の子どものお守りをして、近所の生意気なガキを泣かすetc....。それでは、僕の趣味についてでもお話ししましょう。美味しい料理と美味しい酒と素敵な音楽について。

美味しい料理

　モロッコ料理は種類が少ない。必然的に毎日食べるメニューは似通ったものになる。ある週の僕の食事は

日曜日　昼　鶏肉のタジン　サラダ　パン　　
　　　　　晩　ケフタ（ひき肉の串焼き）　サラダ　パン

月曜日　昼　豆のタジン　ケフタ　サラダ　パン
　　　　　晩　鶏を焼いたやつ　サラダ　パン

火曜日　昼　牛肉のタジン　サラダ　パン
　　　　　晩　ケフタ　サラダ　パン

水曜日　昼　カリフラワーのタジン　魚のフライ　サラダ　パン
　　　　　晩　羊肉を焼いたやつ　トマトと玉ねぎを焼いたやつ　パン

木曜日　昼　鶏肉のタジン　サラダ　パン
　　　　　晩　ハリラ（トマト味のスープ）　ポテトサンドウィッチ

金曜日　昼　クスクス
　　　　　晩　家でビールとワインとオリーブ

土曜日　昼　牛肉のタジン　サラダ　パン
　　　　　晩　レバーを焼いたやつ　サラダ　パン

こんな感じである。

たまにとんこつラーメンが無性に食べたくなるが、そんな店はないので仕方がない。住めば都、食べれば美食。

美味しい酒

　モロッコはイスラム教の国である。イスラム教はお酒を禁じているのである。というわけで、お酒をおおっぴらに飲むことはなかなか出来ない。モロッコ人でも酒を飲むやつはいる。というわけで、酒屋も当然あるが、なんとなくうらびれた感じの店構えで、買う時も悪いことをしている気がしてならない。買ったお酒は新聞紙で厳重に包まれ、外から見えない黒いビニール袋に入れて渡される。
家でこっそりと飲むのが普通。実に不健康な飲み方である。ビアガーデンが懐かしい。居酒屋が懐かしい。ちなみに大好きな芋焼酎はモロッコには当然ない。

素敵な音楽

　モロッコにはタワーレコードがない。HMVもヴァージンメガストアも山野楽器も新星堂もない。いまだにカセットテープが幅を利かせている。でもCDも売ってる。1枚200円くらい。もちろん海賊版。店のオヤジに視聴させてくれと頼むと快く聴かせてくれる。うなるこぶしのアラブ音楽が流れ出す。踊りだすオヤジと苦笑いする僕。僕はアラブ音楽が嫌いだ。
　でも素敵な音楽もある。先住民ベルベル人の伝統的なミュージックベルベル。南の海沿いの町、エッサウィラで演奏されるギナワ。砂漠の民サハラウィーの音楽ハッサニーetc
でもたまにはサザンとかミスチルとかスマップが聴きたい。