第一通信「ラマダンやってます?」
ここのサイトに来る人で僕のことを知らない人は多分たくさんいるのだろうが、モロッコという国の存在を知らない人はそうはいないと思う。でも、モロッコという国がどんなところなのか知らない人は多分たくさんいると思うので、そんな人たちのために、そしてここの管理人のように結構モロッコ通な人たちのためにモロッコより通信。 |
ところでラマダンという行事を知っていますか?イスラム教には5つの守らなければならない決まりがあって、それは1日5回のお祈りであったり、サウジアラビアのメッカへの巡礼であったり、その中の1つがこのラマダン、つまり断食という宗教儀式なわけです。厳密には完全な断食ではなくて、日が昇っている間だけ、飲んだり食べたりせずに、日が沈めば普通に食べていいわけです。なんでそんなことをしないといけないのか。これは、持てるものが持たざるものの立場に立って、その気持ちを理解するとか確かそんな意味合いだったと思います。つまり、お金がなくて食事もできない人々の身になって考えようということですね。そんなラマダン、今年は10月27日から30日間のそれはそれは苦しい日々が始まったわけです。 |
お昼の通りの様子 |
さて、ラマダンといってもいろいろと決まりがあるのですが、まず日中。これは、水、食べ物、タバコなどは一切口に出来ません。昔は唾も飲み込まずに吐き出していたそうですが。で、この断食は日が沈むまで続くのです。日の入りの時間に、モスク(イスラム教の寺院)からは、アッザーンというお祈りが大音量でスピーカーから流れ、同時にけたたましいサイレンが鳴り響きます。これがさぁみんな飯を食おうという合図。この時間までに家へ戻るために、車は猛スピードで飛ばし、人々は早足になり、タクシーも自分の家へ帰るために乗車拒否です。それぞれの家で、みんなその日の最初の食事をとるわけです。ちなみにこの時間帯。町は静まり返り誰一人歩いていません。車も当然走っていません。僕の町は田舎の小さな町ですが、首都ラバトやカサブランカなどの大都市でも、町が死んだように静まり返るのを見ることが出来ます。ちょっと日本では考えられないですね。 |
そして誰もいなくなった街 |
さて、この最初の食事のことをフットールというのですが、フットールとはアラビア語で朝食という意味。夕方だけど、その日に食べる最初の食事なのでフットールというのですが、その内容は。まずは定番のハリラというトマト味のスープ。これはどこの家庭でも作ります。そのためラマダン中はトマトの値段が高騰します。このスープに合わせて食べるのが、シバキヤという砂糖たっぷりの揚げ菓子とツマルというナツメヤシの実。シバキヤはちょっとやわらかいカリントウをイメージしてもらえばいいのですが、甘さはこちらのほうが数段上をいきます。ツマルは日本の干し柿によく似た味です。ちなみに4個に1個は虫がいます。この組み合わせがモロッコ人は大好きなのですが、はっきり言っておかしいです。トマトスープと揚げ菓子と干し柿が合うわけはありません。以下同僚Aとのやり取り (フットールに招待されて) A:どうした?モリグチ。なんでシバキヤを食べないんだ? 俺:(っていうか、甘いの嫌いなんだよね)いや食べたよ、さっき。 A:1個だけだろ?もっと食えよ。ツマルも、ほら。 俺:あぁ、それじゃ食べるよ。食べればいいんでしょ・・・・・ A:モリグチ、こうやって食べるといっそうおいしいぞ。 (シバキヤを割って俺のスープの中へ投入) 俺:!!なんで入れるの? A:こうすると美味しさ倍増だ。 俺:・・・・・・・・・・・・・・・・・・ そのほかには、パン、シャワルマというクレープに似た焼き菓子、フルーツジュース、スーローというアーモンドの粉を甘く味付けしたものなどなど甘いもののオンパレード。甘い者嫌いの人には厳しいメニューですね。 さて、そうこうしてると日もとっぷり暮れてだんだんと眠くなってきます。すきっ腹に詰め込んだせいでしょうか。やることもないので寝てしまいます。体に非常に悪いですね。夢見心地でのひとときが過ぎていくと、なにやらいつもの匂いが漂ってきます。そう、次は2回目の食事。お待ちかねのタジン(モロッコの煮込み料理)です。もちろん今日も油たっぷり。ちなみに時間は23時を回ったところ。起きると既にテーブルの上には山盛りのタジンが。そんな感じでラマダン中の1日は終わります。朝5時ごろに再びサイレンが鳴り響き、人々はつらい断食の時間をまた迎えるのです。 日本にいると想像も出来ないこのイベント。全国民強制参加のこのイベント。ラマダン中は注意力散漫、倦怠感などで仕事もままなりませんが、なんとなくモロッコ人との連帯感を深めることが出来たような30日でした。皆さんも機会があればラマダンにチャレンジしてみてください。きっと体を壊すこと間違いないでしょう。 |