5月1日 土曜日 悪いなりの投球


 ウォーミングアップのためキャッチボールをはじめたら猛烈に肩が痛んだ。ちょっと前、久しぶりに野球をした時、いきなりピッチャーをしたのが良くなかった。あれから3日くらい肩が上がらなくなっていたからな。今日はまともに投げられそうにないなと思っていたら、サードを守ってくれといわれてしまった。僕はそもそも外野手なんだけど、このチームには内野手というのがいなくって、そこそこ内野も守れなくはない僕が、結局ショートやサードをやっているのはいつものことだった。サードからファーストというのは恐ろしく遠い。投げたら肩が痛む。この日はゴロさばきは軽快なものの、一塁への送球はワンバウンドにすることにした。ランナーがアウトになるくらいには投げるけどね。

 バッティングはというと、1打席目でセンターオーバーヒットを打った以外は、あまりいいところがなかった。しかも、四谷の総武線沿いにあるこの球場は、センターが恐ろしく狭い三角形をしている。ホームとレフトとライトで三角形。センターなんて、二塁のちょっとうしろに申し訳程度のスペースがある程度で、センターオーバーのヒットといっても、ボールは総武線の線路の前に張られたネットに、すぐに跳ねかえってきて、僕は二塁にさえいくことが出来なかった。とはいえ三打数一安打だし、まあ悪くはなかろう。のらりくらりと野球を楽しんでいたら、先発ピッチャーが「日野さん、変わりませんか」といってきた。ピッチャーをやるのが好きな僕は、うっかり「うん」と言ってしまい、マウンドに登る。サイドスローで五割くらいの力で投げた。肩に負担はかけないが、腰を低く落とし丁寧に投げた。球にカーブやチェンジアップをまぜて、2失点で切りぬけた。3点のリードを、うまいこと守りきった「悪いなりの投球」は、なんだか野球の醍醐味を感じるとともに、ひょっとして人生も調子が悪い時は悪い時なりの「投球」で切り抜けられるかもしれないと思った。

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