人工関節のQ&A    
 ■輸血について
 
 手術時は止血帯を使い、手術を行います。※1)
  手術前に自分の血液を貯めておきます。(自己血輸血)
  手術後の出血した血液も洗浄して貯めておき(回収血輸血)、体に戻します。

  それでも足りない時や自己血が採取できない場合は、日赤からの輸血用の血液を使用します。

 
■術後の痛みについて
  
現在の痛み(手術前)の90%は取れるようです。
  慣れるまで筋肉の痛みが3〜6ヶ月間残るようです。
  また人工物に周囲の組織がなじむ期間(3〜5ヶ月間)も周囲に痛みが残ります。

 
■人工関節の合併症について
  
合併症もあまり起こらなくなりましたが、感染がおこると悲惨な結果となります。※2)
  感染症を予防するためにも、術後は、虫歯・中耳炎・扁桃腺の腫れ・切り傷などは早めに処置を受けましょう。
  又、脱臼、破損、ゆるみが生じることがあり再手術を要することもあります。

 
■手術時の麻酔について
  
原則として、全身麻酔を行いますので、眠っている間に手術が終わります。
  手術中は常に麻酔の先生も立ち合って見ていますので、心配はありません。

 
■手術室の設備について
  
人工関節の手術を行うときは、空気中にいるような小さな細菌にも気を使います。
  そこで、手術室は特別な「クリーンルーム」という無菌手術室で行います。

 ■人工関節の固定方法について
 ◇セメントを使用した固定
  骨と金属をしっかり固定するために骨専用の医療用プラスチック製品のセメントをボンドのように使います。
  手術直後から人工関節と骨はがっちり固定され、簡単に動いたり、外れたりしません。
  手術後の初期の固定に優れていることが特長です。
  しかし、セメント自体の強度が弱いので、セメントにひびがはいったりすると、セメントの細かい粉が
  出たりして、ゆるみが進んでいくこともあります。

 ◇セメントレス固定
  人工関節を直接骨に固定する方法です。
  骨の侵食が少ない場合に行われます。
  セメント固定より固着面 (くっつける面)がひとつ減るので、ゆるみのおこる可能性のある場所が減る
  ことになります。
  また、人工関節の金属と接している骨にひびが入ったとしても、骨は生きているので
  修復機転が働いてくれる可能性があり、固定の永続性が期待できます。
  しかし、人工関節を骨のなかにぴったりと入れるのは不可能であり、
  どうしても境界面に骨ができるのを待つことが必要で、初期の固定力に問題があります。
  (医療機関によっては、術後、すぐ歩けるという固定方法もあるようです。)

 
■術後の生活について
  ・ごく普通の日常生活をおくれますが、人工膝関節は90〜120度までしか曲げられないため、
※3)
   正座したり、和式のトイレを使うことは勧められません、イス中心の生活にしましょう。
   このことは人工膝関節の耐用年数(20年)を延ばすためにとても重要です。

  ・激しい運動はさけ、膝を強くつかないように気をつけます。
  ・膝関節に負担を掛けないために、体重増加には注意が必要です。
  ・筋力をつけるため、毎日適度な運動をしましょう。
  

 1)止血帯
   出血を抑えるため、太ももの付け根を空気圧で締め付ける帯。
  
   これが、足にできた血栓(血の塊)が肺動脈に詰まり、呼吸困難を起こして命にかかわる
   「肺塞栓(そくせん)症」の要因になりうる可能性が大きいという意見があります。

   通常は、肺塞栓症を予防する方法として、血液が固まるのを防ぐ薬ヘパリンや、
   足を規則的に圧迫して血流を良くする「フットポンプ」を使用します。
   足を圧迫して血流が滞るのを防ぐ弾性ストッキングを着用する
こともあります。
  
 (私は2002年の右膝の再置換手術の時に、へパリン、フットポンプ、弾性ストッキングを使いました。)
   
   手術の際に止血帯を使わない代わりに、最大血圧を100から80程度に抑える低血圧麻酔を行い、
   手術中の出血を抑える工夫の手術が医療機関に広がり始めているそうです。

   ある医療機関では、実際、止血帯を使って手術したところ、19人中、4人に肺塞栓症か「その疑い」があり、
   一方、使わなかった場合、「疑い」が1人いたが、肺塞栓症となった例はなかったそうです。
   また、発症の恐れが高くなる両足同時の手術も避けているそうです。


 2)合併症(術後感染症・肺塞栓症)
   止血帯や骨セメントが合併症(術後感染症・肺塞栓症)の要因のおそれがあると、
   工夫をした手術手技、そして骨セメントを使用しないタイプの人工関節を用いる医療機関があり、
   止血帯を用いないで、片方ずつ手術を行って、その手術方法に変えてから、
   術後感染症は1例もおきてないという報告があります。


 3)世界で一番曲がる人工膝関節の開発!
    ある医療機関では1972年より、関節リウマチ、変形性膝関節症を主な対象疾患として、まず安定性を、
   次に日本人の日常生活で不自由しない曲がりのよい人工膝関節をめざして開発が進められ、
   世界で始めて、手術後、正座が可能な人工関節を開発したそうです。

   今までに3000余の関節手術を行い、現在使用している人工膝関節では、
   手術後1年目で約70%の方が120度以上、
   とりわけ10%強の人が踵が臀部につく状態が可能となったそうです(下記データ参照)。

   ≪人工膝関節手術後1年目の膝の曲がる角度≫
                  
(1997年〜1998年に手術を受けた84人116膝)
      140度以上(踵が臀部につく状態) 16膝  14%
      120〜140度          60膝  52%
      100〜120度          40膝  34%
       90度未満             0膝   0%


  私も2000年の人工関節置換手術の時、ずいぶん迷いましたが、
  ・開発されてから年数が経ってないこと
  ・膝の骨の侵食が激しかったこと
  ・足首の関節も破壊されていたので、しっかり固定した方がちゃんと立てると言われたこと
  ・かかりつけのリウマチ科が同じ病院(通院に便利)ということ
  
                             以上の点で今の病院で手術してもらいました。


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