乳房












【乳房】







あれほど嫌っていた両の乳房



これがあるから惑うのだと 嫌悪さえ覚えた



いっそ切り取れば これほどに苦しむこともないのだろうかと幾度思ったことだろうか







けれど………







沖田先生は戦いの中で近藤先生をお守りして死ぬことを望んでいた



それ以外の死を



ゆるゆると けれど確実に訪れる死もあることを



考えたこともなかったに違いない







誠を貫くことも出来ず



ただ床に臥して死を待つばかりの我が身を思う時



それはどれほど苦しく どれほど恐ろしいのだろうか———















夜更け 小さな声がわたしの名を呼ぶ







吐息でさえも容易に掻き消せるほどに微かな声に呼ばれて



隣へと身体を滑り込ませれば 痩せ衰えて骨ばった掌を背に感じた







——神谷さんは暖かいですね。それに柔らかい——



——沖田先生も………とても、暖かいです——







絶望と隣り合わせにある 泣きたくなるほどの幸福を想いながら



わたしはそっと先生を抱きしめる



そうすると安堵したように 先生はひどく幼い表情で眠りにつくのだ















あれほど嫌っていた両の乳房



けれど今 わたしは自分が女子として生まれてきたことに感謝している



わたしの乳房に頬を寄せて眠るこの人に



少しでも安らぎを与えられる自分が 何より誇らしい







時に母となり 時に姉妹となり 恋人となり 妻となり 娘となり



女子としてなれる ありとあらゆるものとなって



あなたの穏やかなる眠りを守りたい————























<あとがき>



「セイちゃん、一緒に寝てたら病気が移るんじゃないですか?」



書き上げたあとにそんな突っ込みを自分でしてしまいました(苦笑)







武士として頑張り続けてきたセイちゃんに、でも女の子として生まれてきて良かったと思って欲しくて描き始めたのですが、見事に玉砕しました。



あと、死に直面した総司の弱さと寂しさと、セイちゃんの最後の最後で総司を独占出来ている身勝手な優越感なんかも表せたらと思っていたのですが(以下同文)



へたれな文章ですみません………


























大人めなのに、甘い、切ない

が入るなんて、

ほんとすごい(ぱちぱち!!)

しかも完結!!

ぱちぱち!!!!(永遠)