胸焼け














「もうっ、原田先生も永倉先生もいい加減にしてください!!!(怒)」



「いいじゃねーか神谷、正月なんだしさぁ〜」



「そうだぁ、そうだぁ〜」



「もう、藤堂先生まで・・・・・・・・」



泣く子も黙る新撰組の屯所では、正月の宴会が行われている。



正月ということもあるのか、いつもより羽目を外している面々—————。



今や、会場は無法状態と化していた。新撰組一番隊隊士神谷清三郎こと、富永セイは誰にも気付かれないように小さく『はぁ〜』と息を吐き出した。



いつもの様にセイは酒を自粛して、みんなの世話をやいていた。そんなことはいつものことだし、慣れているのだ。



しかし今日は、いつもと様子が違っていた。正月のせいなのか、いつもより酷く、局長の近藤と副長の土方が仕事で退出すると、一層酷くなった。



その上、総司が土方に頼まれた用事で、留守にしていていないことがセイには辛かった。









それなのにっそれなのに、その上









「神谷ぁ〜、隙ありっ (喜)」



「何しやがんだぁー!!」



いきなり後ろから抱きつかれつんのめってしまい、頭を畳にぶつけてしまうセイ。



その後ろには、ベロンベロンに酔って、にやけて抱きついている中村五郎。



「いいじゃないか、神谷。正月なんだし・・・・・、それに俺とお前の仲じゃないかぁー」



完全に泥酔している



「どんな仲、つっ!?」



一発殴りつけようとしたら、首に痛みを感じる。



セイは、何が起こったか理解できず自分の首筋に手をやってみた。









そこには、薄紅色の痕が一つ——————













”バキッ”





「何しやがんだー、中村五郎ーー!!!!(怒)」



「うわー、中村何してんだー!!」



「そのとおりです、原田先生。もっと言ってやっ」



「俺が一番だって決めていたのによう。横取りするんじゃねぇー!!!!!」



「へっ?」



「神谷っ、俺にも接吻させろ〜」



「嫌ですっ!!それに、原田先生は、結婚されたでしょう!?奥様としてください!!!!」



「いいじゃねーか、減るもんじゃねーし」



原田の顔が、遠慮なしに寄って来る







”バキッ”







「いい加減慰してくださいっ!!!!もうっ、笑ってないで永倉先生も藤堂先生も止めてください!!!」



言われた当の二人は、囃し立てて騒いでいる



いくら武士の格好をしていても、基は女子。好きでもない男に接吻されて嬉しいはずがない。



セイは泣きそうになるのを懸命にこらえた。













「清三郎、美しい君が泣いているなんでほっておけないね。どうしたんだい?言ってごらん」



「いっ、伊東参謀 (汗)」



「こんな男に接吻されて辛かっただろう?僕が口直しで接吻」



「結構です!!!」



さすがのセイも泣きたくなってきた。



どうして正月早々こんな目に遭うのだろう・・・・・・・・。



涙が浮かんできた









「伊東参謀、神谷が嫌がっているので辞めていただけませんか?」









「兄上〜vv」



見上げた顔は、涙に濡れていてでも全開の笑顔で、とても色っぽかった。



それを間近で見てしまった斉藤一・・・・・・・・。









「兄上?どうかなさいましたか?」









(清三郎、可愛すぎる/////)





「御免っ!!」



鼻を押さえて退場。



何処に消えたかは、言わずもがな(笑)。



















「さあ、これで邪魔者はいなくなったよ、清三郎。うふっ」



伊東の顔が迫ってくる



(沖田先生〜、助けてください〜)



ついにセイは我慢できなくなって、膝に顔を埋めてピーピー泣き出してしまった。



それには、さすがにみんな驚いて、騒ぐのをやめてセイを覗き込んだ。



「悪かった、誤るから泣き止んでくれよ〜、なっ」



「そうだよ、神谷。からかってゴメン」



「もうからかわないから、泣き止めよー」



口々に慰められて、ようやくセイは少し顔を上げて、上目使いに潤んだ目を向けた



「ほっ、本当?」















(((((( ————— かっ、可愛い過ぎる///////// )))))))

















””””ゴキュッ”””””











一斉にみんなの喉がなる







視線がセイに集中する









「ふぇ〜ん、嘘なんだぁ〜。沖田せんせぇ〜」









「何ですか、神谷さん。そんな大きな声で呼んで」









「沖田せんせぇ〜〜〜〜」



総司を見つけると流石に、セイは取り囲んでいる隊士達を押しのけて、人目もはばからず総司に抱きついた。



セイは必死で、羞恥心が薄れているだけなのだが、抱きつかれた総司は嬉しそうである。



それもそのはず、つい先日思いを確かめ合ったばかりなのである。



一方的に自分が思っているだけだと思っていた総司にとって、セイが同じ気持ちでいてくれたことが嬉しかった。



それなのに、そのセイに抱きつかれて嬉しくないはずはない。







「どうしたんですか?神谷さん。そんなに泣いて・・・・・・・・・、可愛い顔が台無しですよ。笑ってください。」



言いながら、軽く頬を撫でる。



二人の間に甘ったるい空気が流れた



「ところで神谷さん、この傷、どうしたんですか?」



セイの首筋にある薄紅色の痕を目聡く見つけて、その痕を触りながらセイを覗き込んだ。



「あっ、あの・・・・・・、それは・・・・・・」



恋人である総司に、他の男に接吻されたと言うのも憚られて、セイは俯いた。



「何です?隠し事は駄目ですよ。さぁ、言ってください」



総司の怒りをひしひしと感じて、ますます俯いてしまう。



見かねて、原田が口を挟んだ。



「それは、うちの中村が無理やり」



「へぇ〜、中村さんですか」



会場が凍りつく



「で、その中村さんは何処にいるんです?」



微笑んでいるものの、言葉に無数の棘が含まれていて、原田は背筋が冷たくなるのを感じた。



「そっ、総司、私闘は禁じられているぞ」



「知っていますよ。何も殺そうとは言っていませんよ。お礼に、ちょっと、稽古つけてあげようかと思いましてね。それだったら、問題ないでしょう?で、何処です?」



「なっ、中村は・・・・・・・・・・」



原田の必死の目配せに、集まっていた隊士たちは、セイに殴られて失神して倒れている中村五郎を、総司に分からないように隠した。



「中村さんは?」



「中村は、っその、のっ、飲み足らないといって、斉藤と出かけた」



斉藤はセイの色気に、井戸端で水をかぶりながら鼻血を必死に抑えていたのだが、そのことは伏せておこう



「へぇ〜、斉藤さんと飲みにね」



疑った目でクルリと一周見回して、中村と斉藤がいないのを確認すると、残念そうにセイに目を移した。



「分かっていると思いますが、神谷さんは、私のですからね。手を出さないで下さいね」



殺気が飛び散った



「神谷さんも私以外にこんなことさせちゃ駄目ですよ。無防備なんですから」



顔を覗き込まれて、セイは小さくうなずいた。



それを見て、総司も満足そうに頷いた。







その後、少し考えるようなそぶりを見せて、にやっと笑うと、何を思ったか急にセイを腕に抱き上げた。







「おっ、沖田先生?!」



「悪いと思ってます?」



「・・・・はい」



セイは、公衆の面前で抱き上げられて、真っ赤になりながら総司を見下ろした。













「じゃあ、私に接吻してください」













「へぇっ」













二人の周りで大きな音を立てて、食器や徳利が転がった。



みな一様に、口をあけたまま固まっている















「お詫びに接吻してくださいって言ってるんです。いいでしょ?」







「・・・・・・・・・ここで、・・・・・ですか?」



女子からするのも勇気がいるのに、人前ではとてもではないが恥ずかしかい。



「そうですねぇ〜、じゃあ」



セイを顔の近くまで下ろすと









そのままセイの唇を自分のそれで塞いだ













目の前で繰り広げられる光景に、みな息を飲んだ



接吻など見慣れているはずの原田や永倉までも、唖然としている









当の総司は、そんなことにはお構いなしで、思う存分味わうと名残惜しそうに、唇を離した











「場所を変えましょ・・・・・・、ね、神谷さん」











セイは、総司の腕の中でぐったりしている









「原田さん、中村さんが帰ってきたら、明日稽古をつけると行っておいてくださいね。・・・・・・逃げたら、ね、分かってるでしょう?」









それだけ言い残すと、もう用はないといわんばかりに、セイを抱え直して出て行った































その後、数日間新撰組隊士たちが、総司とセイを見るたび胸焼けを起こしたのは言うまでもない











あの後、セイが接吻をしたか



中村五郎がどうなったかは、また別の話。





































                                                      《終わり》























































***** あとがき *****





お口直しにと思って書いたのに、この様です。ごめんなさ〜い。



折角なので、思いっきり甘いのをと思ったら、大変なことになってしまいました。



やっぱりあさ様のようには行きません。撃沈!!



こんな駄文ですが、10000HITおめでとうございます。



お祝いに受け取っていただけると嬉しいです。




















ハナヂをふいたのはあさだけですか?(え)

セイちゃん……!!

食べてしまいたい…!!!!(変態)

木花翠心様、有り難うございましたー。