紅差し














セイが部屋に入ってくるのと同時に外から娘を呼ぶ声が聞こえた。

「…ちゃ〜ん」

「はぁい。すんまへん、ちょっとうち失礼します。」

そう言って娘は部屋を出て行き、美しい妓の姿をしたセイと二人きりになってしまった総司はうろたえてしまう。

「ふふ、ちょっとは女らしくなったじゃないですか、沖田先生。」

セイはそんな総司の動揺を知ってか知らずか可愛らしく笑うと

鏡の前に座り自分の化粧をし始めた。



細やかに動く小さな手。

女髪に結われたたおやかな黒髪。

抜いた襟から覗く、白粉よりも白い項。

その様子に総司が我知らず喉をゴクリと鳴らした時、ふとセイが振り返り

「先生も後は紅だけなんですね?」

と言って先ほど娘が手に持っていた紅の入ったハマグリの入れ物を取り上げ、総司の前に座った。

「え、紅はいいですよ。さすがにそれは…」

と拒む総司に

「そんな、口まで白粉つけて紅塗らないとおかしいですよ。唇無しお化けみたいになっちゃいます!」

と有無を言わさず小さな小指の先にそっと紅を一すくいすると

「口、閉じてください…」

と言って総司の唇に紅を落とした。



「………」

セイの滑らかな指先が自分の唇の上をすべる。

その心地よい感触に目を細めそうになるが、

この緋色の着物を着た美しい少女の姿を、立ち振る舞いを一瞬でも逃すのが惜しい気がして視線を逸らす事ができない。

目の前にあるセイの整った顔立ちは、化粧にはえていつもの凛とした美しさとは違う匂い立つような艶がある。

その唇は総司に紅を塗ることに集中しているのか、僅かに開かれて柔らかな吐息が漏れていた。



念を入れて二度目にセイの指が総司の下唇を通ると

柔らかい感触に引っ張られて総司の唇が少し、開く。



なにかに突き動かされたかのように突然

総司の手がセイの手首を掴んで

紅のついた小指をそっと口に含み、その朱色を舐め取る。



「っ!沖田先生っ?!」

セイは白粉の上からでも分かるほど一瞬のうちに赤くなった。

「私はもういいですから、今度はあなたに塗ってあげます…。」



というとやにわに総司は膝立ちになり、手首を掴んでいた手とは反対の手でセイの腰を引き寄せると

「んっ…」

何も塗らずとも艶やかに色づいているセイの唇に自分の唇の紅を移した。



「…ほら、綺麗に塗れました。」

「………」



「神谷はん、沖田はん、いつもより早いんどすけど、あいつが…」

部屋の外から怯えた娘の声がした。

「はい、じゃあ行きましょうか。」

さ、神谷さん、と、未だ何が起こったかわからず呆けているセイの手を引いて障子に手をかけるが、それを開く前につ、と立ち止まり、セイの耳に唇をよせる。



「…今晩茶屋に一室とりますから…。敵娼はあなたですよ、神谷さん。」



廊下に出たセイは、総司に差された紅の色と同じ位紅く頬を染めていた。





言い訳

2003年12月13日〜2004年1月15日の期間限定サイト「桜の宴」様に載せて頂いていました。

あささんの書かれた「春爛漫」というお話の中で、どうも私は他の方とは萌えポイントが違うようなんですけど、ここの場面がかーなーり妄想を誘いましてvvv妄想の赴くまま書かせていただきました。自己満足・妄想文なので都合上あささんの話と違う所もございます。エヘ。あささん、こんな妄想させてくれてありがとうございますvvv
























もう!!!

かなりステキです!!!

いやいやいや、気持ちわかるよ、総ちゃん

うんうん(なんか違う)