もののけ姫さん
これはもののけ姫を元にした風光る読み物です★
美しい森。
豊かなムラ。
獅子神がいなくなってから、10年という月日がたった。
「…?私は今回何の役なんです?」
「サンっていう、もののけ姫の役らしいよ〜」
「あ、藤堂先生ありがとうございま…って、えっ?!」
「ね、びっくりするよね普通」
「いえ!!そうじゃなくて藤堂先生、オオカミのきぐるみ…ていうかオオカミじゃないですか!」
「うん。なんかモロの子の役なんだって」
「へえ、スゴイ…ホントのオオカミなんですね〜」
そうしてわきあいあいと話す二人。
「っあ!忘れてた〜。なんかね、サンはアシタカって人に逢いに行かなきゃいけないんだって」
「そうそう!このオレの背中にのってな〜!」
「あっ?!原田先生まで!!オオカミ!!」
「おう!平助の兄なんだとよ」
「…原田先生…振り落とさないでくださいね…」
そう言って、サンはおそるおそる白狼の背にのった。
アシタカに逢う為に。
「すごい!速い!!原田先生すごいじゃないですか!!!」
そう言ってよろこぶサンに、速すぎて見えない木々の枝。
豊かな翠の色だけが、鮮やかに去って行く。
「今回の舞台って奇麗ですね〜」
そう言ってサンは目を細めた。
色がついたばかりの葉が、山をかこんで、空を仰ぐ。
湿った岩にも苔がこびりつき、水滴を含んで光る。
それは、本当に美しかった。
「じゃあちょっくら休むか?」
「いいんですか?!」
サンは、この奇麗な景色をもっと見たいと目を輝かせた。
そうして、山犬の背から降りた、その時であった。
…そう、信じられないくらいかわいらい光景が、目の前に繰り広げられていたのだ。
首をかしげて、コロン、と音をたてて首をコロコロッと鳴らす、
白い体に、三つの黒い目玉、
そう、あの「コダマ」
「副長—————————ッ??!!」
「あ?!土方さん?!?!」
「…二度も強調するんじゃねえ」
そう言って、首を惜しげも無く振る土方歳三。
「ふ、副長…駄目ですよそんな自分を安売りしちゃ…」
「うッ!もう見てられねえ!不憫すぎるぜ!!」
二人は(憐れみと感動の←?)涙を流しながら抗議する。
「カタコリに効くらしい。『あさ』ってぇ医者に進められてな」
「誰ですかッそんなデマを…ッ」
「そ、それ以上言うなって!ますます土方さんが不憫じゃねえか…ッ(オトコ泣き)」
「は!!そ、それもそうです…いやでもあの光景…(オトコ泣き)」
「いいからここから逃げるぜ!!(マジ泣き)」
「は、はいッ!!(もらい泣き)」
そうして、二人は山を降りて行きました。
「ま、まあとりあえずタタラ場をあたってみっか…」
「そ、そうですね…」
二人はさきほどの余韻を微妙に引きずりながら、タタラ場へと向かった。
タタラ場では、女が板を踏んで歌っていた。
そう、女…
「…あ、近藤局長がタタラ踏んでる」
「いや似合うなしかし…」
「あのー、局長、アシタカってヒトを見ませんでしたでしょうか」
「やあ、それがなぁ」
「なんです?」
「エボシって方がおまえたちを呼んでいるんだが」
「あ、そうなんですか?」
「すまんなあ、行ってくれるか?」
「あ、はい、だいじょうぶです、行って参ります!」
近藤勇のたくましい姿にサンは微笑みながら、木造の色の濃い建物へと向かった。
「エボシさん、お呼びですか〜?」
中は、ガランとしていて静かだった。
もう一度叫ぼうとサンが息を吸った時、
「…何か用か」
と、低い声がそれを遮った。
「…あ?」
「…ん?」
二人は、ビタリと動きを止めた。(息さえも止めた)
「…どうした」
「あ、イエ斎藤さ…じゃなくてエボシサマ」
「…よ、よくお似合いですね、そ、その…そ、……赤いキモノ」
「…」
「…あ…赤いクチベニも」
「…」
「な、な…なな長い黒髪も」
「…」
「だ、誰の趣味ですか?」
「…知らん」
沈黙。
「こここういうときどうしたらいいんですかッ?!原田先生ッ」
「し、しらねえよ〜ッわ、笑うんじゃねえ神谷ッ!!」
「は、原田さんだってふ、震えてるじゃないですか…ッ」
「…おい」
「「はいいいいいッ?!」」
「…外に出て、あの奥の森に入れ、とのことだ。伝えたぞ」
「あ、は、はい…」
二人は、何がなんだかわからず、(つっこみどころもわからずに、)外へと出た。
「く、苦しい空間でしたね…」
「あぁ…もう入りたくねえ、あそこにゃ」
二人は、(恐怖と爆笑を)こらえる肩をならべて、森へと引き返す。
土方副長に会うことの無いように祈りつつ…。
二人はしばし森の前で足を止めると、首をひねった。
森といっても、どこへ向かえばいいのやら。
「それじゃあよぅ、、此処からわかれて捜すってのはどうだ!」
「そうですね!」
それが良案だ!と、二人は別れた。
サンの向かう場所は決まっている。
「一度あそこに行ってみたかったんだよね〜。」
そういって草木をかきわけてゆく。
そう、あの泉である。
もう獅子神はいない、あの泉。
「…あッ此処かな」
ひょこ、と顔を出せば、そこはもう鈍く光る泉のほとりであった。
おごそかな緑の色を含んで泉は静かにサンを映す。
「…すごい…本当に奇麗」
泉をのぞいた底には、まだらに色をのせて草が巻いていた。
あたたかな色をした陽の光が木漏れ日となって地を照らす。
サンは、ぼうとその光景を眺めた。
「あ、神谷さん?」
後ろから聞こえた突然の声に、サンはびっくりして振り替える。
「沖田先生?!」
「いえ、今はアシタカというヒトらしいんですけど」
「それを言うんだったら私だってもののけ姫のサンっていう…」
「はぁ…もののけ姫さんですか…」
「ええ…まあ…アシタカ…さん…先生…??」
「呼びにくいですよねぇ」
アシタカは、難しい顔をして、手にもっているものを地面へと置いた。
「………ナンデスカソレ」
サンはいぶかしげにそれをのぞきこんだ。
「あッ?!イヤソノ…だめですよ見ちゃあ!!」
あわててアシタカはそれを隠しこんだ。
そうして、ごほんと咳をすると、サンをまじまじと見る。
「…ていうか、ずいぶんスゴイカッコですねぇ」
「は?」
「おなごがそんなに足を出すものじゃぁありませんよ」
「いや、でもコレは衣装で…」
「まあ、いいです。せっかくだから、のんびりしましょうか。」
そう言うアシタカになかば強引に座らせられたサンは、まあいいか、とためいきをついた。
「ね、もののけ姫さん、私いちど『コダマ』って奴を見てみたかったんですけどねぇ」
「ッ?!」
サンは言葉にならぬ声でたじろいだ。
…むりもない。
「だってかわいいじゃないですかぁ、あのおんぶ姿〜」
さも残念そうに言う総司に、おんぶしている『コダマ』を想像して顔を青ざめるセイ。
「…そ…そんなイイモノではなさそうですケド…」
「そうですかぁ?あの木の上でたくさんのコダマが首を振るトコなんてすっごいイイじゃないですかぁ!」
「…そッそれもどうかと……ッ(窒息ギミ)」
「ええ〜ッもののけ姫さんつれない!!」
「…そ、それよりも!!そのカゴの中身はなんなんですッ?」
サンは話題を変えたいとばかりにアシタカに問い詰めた。
「…怒りませんか?」
「…なんです?」
「…コレなんです」
「………?」
サンは、アシタカが出したその赤い肉の固まりを不思議そうにながめた。
そうして、ああ!とばかりに手をうつ。
「あのアシタカさんを助ける肉の薫製ですね!!!わぁ〜初めて見たこんなの!!」
「………」
「で、何でこれを隠してたんですか?」
「もののけ姫さんがコレを食べさせてくれるんですよ」
「ええ、まあ…そうでしたケド」
「あのシーン大好きなんですよね!!」
「ああ、そうなんですか」
「ハイ、お願いしますv」
「あ、ハイわかりました…ってハイッ?!?!」
「よっこらしょ」
「…て何ねっころがってるんですか?!」
「…もうはやく食べさせてくださいよぅ!!死にそうなんですから!!」
「ぜんぜん元気そうじゃないですか!!!ていうかそもそも何でこんなに大量に肉があるんですッ?!?!」
「回数は多いにこしたことは無いじゃないですか」
「当たり前そうに言ってもムダです!!!!」
その後、二人はやんややんやと口論を続けた。
そうしてしびれをきらしたのはアシタカで。
「もう、しようがないですねぇ」
「しようがないじゃないですよ!!!ゼッッッタイにやりませんからね!!」
もぐもぐと肉を自らかみ始めたアシタカを見て、サンはおもいっきりためいきをついた。
そうして。
サンが無理矢理ニクを食べさせられたのは…言うまでも、無い。
「そんなカッコしてる神谷さんがわるいんですってv」
「んぐ〜〜〜〜〜?!?!」
………メデタシ、メデタシv
和栗様、すてきなりくをありがとうござましたー。
もののけ姫、大好きですー。
ええ、これ書くために見直しました〜(笑)