フナ












川の流れが、緩やかに落ちて行く。



きらきらと、光を浴びて、おたまじゃくしを遊ばせて。



小さなフナが、ぴしゃりと跳ねた。









「あ!!そっち行きましたよ!!」



「へっ?!どっち?!」



ばしゃばしゃと水は踊る。



すい、と難なく逃げる魚達を必死に追う。



「あ〜惜しい!!」



「なかなか速いなぁ」



初夏。



セイが楽しそうに川に足をつけてはしゃぐ。



ざるを持って残念そうに額を拭くのは、藤堂平助。









そして、足に川の流れを受け止めながら、なんともいえない表情でそれを見守っているのは、そう、総司であった。



————ちょっと、おかしくないですか?



総司は独り心の中でごちる。



=====回想(総司妄想)=====



ウフフフフ……

アハハハハ………

待ちなさい、神谷さん

嫌です追いついてみたらどうですか〜

(ここで二人はもちろん水をかけ合う)

あ〜、濡れちゃうじゃないですか〜

だって沖田先生ったら〜

こらっ!そんなことを言う口はそこですか?

(もちろん、ここで総司はセイに抱きつく)

やだ、沖田先生!!(きゃ☆)

(まあ、ここまできたら、『おでこツン★』、である)



ウフフフフ

アハハハハ

こちらまでおいで〜(飛び散る水しぶき)(輝く太陽)




==================以下略



———————てなるのが(なるのか)ど〜〜〜〜〜して!!!



———————藤堂さんがいるんです〜?!?!



総司は人知れず涙を飲む。









そんな総司はよそに、二人は楽しそうだ。



「あっ!!」



「藤堂先生?!」



「つかまえた〜!!」



「えっ!!ほんとですか!!!!」



あわてて駆け寄るセイ。



そして、密着。



「あ〜!!ちいさい!かわいい〜!!」



ほら!!とばかりにセイは総司に笑いかける。



総司はにこりともしないで、口をへの字に曲げていた。



「……?沖田先生?」



やっと総司の不機嫌に気付いたのか、セイは眉をしかめた。



藤堂は、何にも気付かずにいまだ魚を捕りながら口ずさんでいた。



「これって食えんのかな〜」







「沖田先生?どうしたんです、そんな顔して」



セイは不思議そうに汗を拭く。



「………神谷さん。」



「はい?」



かわいらしいその顔に、ぐっと喉をつまらせながらも、総司は言葉を吐いた。



「……貴方、川に遊びに行きましょうと言いましたね?」



「……?はあ……」



そのとおりだがとばかりにきょとんとするセイ。



「それがど〜して、こんなことになったんです?」



「……こんなこと……ですか?」



セイはいっそう不思議そうな顔をしかめる。



総司はああもう!とばかりに言った。



「ですから!!!!私たちの初めての逢瀬モガ!!」



「おおおおお沖田先生!!!それは内緒っていう約束じゃないですか!!!」



「内緒でもなんでもど〜して藤堂さんが此処にいるのかと聞いているんです!!」



どんどん小さくなる二人の声。











その時。



ばしゃ!!!



二人に(正確にはセイに)、水がかぶさった。



「?!」



二人が驚いて首をひるがえすと、そこには満面の笑みの藤堂平助。



「へへ〜!!」



かわいらしいその笑みに、セイもおもわず楽しそうに水を返す。



「藤堂先生何するんですか!」



アハハハ!!



アha ha ha ha ha!



飛び散り輝く水飛沫。



そこに輝く姿は、神谷清三郎と、藤堂平助。



そして立ち込める、暗雲の雲(総司頭上限定出現)。









ぱしゃ、ぱしゃ、ぱしゃ。



総司は走る。



川の中を。



そして、楽しげに、セイに水をかける。



やりましたね!



そんな声が聞こえる。



「うわ?!?!」



そして、セイの悲鳴。



それから、藤堂の驚いた顔。







総司は、川の中にセイを沈めて、覆い被さっていた。



「あ、あっ!!すみません、神谷さん!大丈夫ですか?!(名演技)」



慌てて起き上がる総司。(役者なみ)



そして、大丈夫ですと言いたいところだが、何故か総司の力が強くて起き上がれないセイ。(憐れ)









それから、ぎらりと光る総司の片目。



「藤堂さん、そういえば今日は洗濯物が溜まっていたようですけどねぇ」



藤堂のひきつる笑顔。



「今日はいい天気ですから……誰かがやっているといいんですけどねぇ」



総司の、美しい、笑顔。



そうして、藤堂は去っていった。



足をぬらしたまま、涙をのんで。









そうして、やっと開放されたセイは、ぶうっとむくれていた。



「沖田先生ったら、そんな藤堂先生を追いやるような真似をして、大人げないじゃないですか!」



もっともである。



が、総司はこたえない。



「…神谷さんが悪いんでしょう、私だって結構楽しみにしていたんですよ」



「だ、だって沖田先生が…!!」



セイはそこまで反論してから自ら口を塞いだ。



総司はん?という顔をしてセイをみつめた。



「私が…何です?」



セイは顔を真っ赤にして答えない。



「何です、言わなきゃわかりませんよ」



セイはそれでも答えない。そのかわり、慌てて起き上がろうとして言った。



「…ず、ずぶ濡れですしそろそろ屯所へ…!」







そしてその腰はがっしと総司につかまれて、そのままどぼんと川にもどされた。



「何です?」



言わなきゃ離さないとばかりの総司の声。



「あ、で、ですからその…昨夜」



「はい」



「ふ、副長と」



「…はい(感づいた)」



「…その……あの」



「…何です(にやり)」



「!!!!」







そうして、総司は笑い出した。



「あはっな〜んだそういうことですか」



「わ、笑うこと無いじゃないですか!」



セイはもうまっかである。







そう、セイは、昨夜、聞いてしまったのであった。



二人の、会話を。



===================以下回想



「土方さ〜ん♪」



「何だ、のろけなら余所でしろ」

「良いじゃないですかぁ、明日とうとうなんですよ!」

「……そうか(少し顔を上げる)総司にしちゃ上出来だな」

「そうですよ〜、聞きたいですか?」

「…言ってみろ」

「川に遊びに行くんです!二人で♪(嬉しそう)」

「は?」

「は?じゃないですよ、川ですよ川♪」

「…なんだヤるんじゃねえのか」

「ヤ?!ち、ちがいますよ!」

「……まあいい。そんで、接吻の一つや二つもう済ませてあるんだろうな」

「…………」

「総司…おまえ奥手もほどほどにしろ」(ため息)

「…そんなこと言っても…まだはやいと思うんですよ」

「相手が何処のどいつか知らねえが、そういうことは強引に済ませるのが常識ってもんだ。ったく」

「ご、ごうい…?」

「まあ、そういうこった」



=======================以下略





「それで、藤堂さんを誘ったんですか?」



総司はおもしろそうに詰め寄る。



「………べ、べつにちょうど藤堂さんも川に行きたいっておっしゃったので…」



「…それだけですか?」



意地悪く笑って顔を近づけてくる総司。



セイは、恥ずかしそうにうつむいた。



しかし、そんな可愛い反応をしめされた総司は溜まったもんじゃない。



「…神谷さん?」



総司は少しかすれた声でセイを呼んだ。



そうして、ちゅ、と軽くセイの唇に触れた。



セイは目を潤ませて口を両手で塞いだ。



「…すみません…ちょっと…」



たまらなくなりました、という総司の声は声にならずに終わった。



総司は、セイの手をわしとつかむとぎゅっと唇を押し付けた。



「…んっ」



セイのかわいい声が漏れる。



その声を追うように、執拗に総司は接吻をした。



「…ん…ふぅ…っ」



総司は自分の体が汗ばむのを感じた。



(………まずい…)







そうして、ゆっくり唇を離す。



もう、捕まえたフナはとっくに逃げていた。















「着替えましょうか、近くの盆屋で」



セイは目を丸くして信じられないとばかりに首を振る。



「…何もしませんから、ね」



総司は、おかしそうに笑ってそう言った。













フナが、草陰に身を潜めて、尾を揺らす。



川が揺れて光る。





















次の日、もうちょっとだったんですけど…と、残念そうに土方に話す総司が、いたとか、いないとか。






























望様、りく有り難うございましたー。

なんだかこんなんでほんと…

すみません(また謝罪だよ!!)