赤ずきんさん
これは赤ずきんを元にした風光る読み物です★
ある所に、おかあさんと赤ずきんが暮らしておりました。
森の奥深く、豊かな川とたくさんのお花の咲くそこに小さな小屋があり、二人は仲良く暮らしていました。
今日は、その赤ずきんのある一日のお話を致しましょう。
「私の美しい赤ずきん、頼みを聞いてはくれないか?」
「…伊藤先生…お母さんなんて役所、うさんくさ…イエめずらしいですね…」
小屋の中では、嬉々としたおかあさんの声となにやら物怖じしたような赤ずきんの声が仲睦まじく響いておりました。
「何を言うんだい赤ずきん、あの管理人がやっと私の魅力に気が付いた、それだけの事ではないだろうか」
「…ソウデスネ。それより頼み事ってなんですか?」
「いや、じつはおばあさんの所へ見舞いに行って欲しいのだが…赤ずきん、それよりも君が私と此処で愛を語りたいと言うならば止めはしな…」
「行って参ります伊藤参謀長!!!」
そういう事に、なったのである。
赤ずきんは、おかあさんの作った美味しい味噌団子とお茶を手に、(おかあさんの魔の手を振りきって)おばあさんのお見舞いへと向かいました。
花の咲く小道を、さくさくと歩いてゆきます。
「う〜ん…確かこの辺だったと思うけど…」
赤ずきんは、そう言いながら何かを探しているようです。
「あっ!」
みつけた、と叫ぼうとした赤ずきんの口は、大きく開けられたままその状態を維持しました。
そう、そこには。
顔の周りに花の花弁をまとい、微妙に草木と混じって形を成し、にこにこと笑って待っているその人たち。
「あの…原田先生と永倉先生ですよね?」
赤ずきんは、ものすごく不審そうに訪ねます。
「神谷!!待ってたぜ〜この格好辛くってたまんねえや」
「…ナニしてんですか?」
「え?何ってお花畑だよ、見てわかんねえ?」
沈黙。
赤ずきんは、そのまま数秒黙りこくった後、おそるおそる訪ねました。
「もしや…お見舞いに私がお花を摘むという設定は…」
「あ、それは俺達三人の事だろ」
けろっと言ってのける永倉。
それに突っ込まずにはいられない赤ずきん。
「何でそんな二人して意味無いことしてらっしゃるんですか!!
もう〜本当に何をやって…って、あれ?」
赤ずきんはいきなり不思議そうな顔をしました。
「なんだ?」
「三人…って」
そう、原田と永倉以外に、誰がいるのか。
二人は、ああ、という顔をして口を揃えて言いました。
「後ろの土方副長のことか?」
そう。
二人の大きな図体の後ろを覗いてみると、まさにそこにはあの副長。
あの、鬼副長が、大きな花弁を顔の周りに沢山貼り付けて、いかにも機嫌悪そうにあぐらをかいていたのだった。
「副長ーーーーっ?!!」
思わず赤ずきんが叫んだのも無理は無い。
そんな赤ずきんの仰天顔に、お花一号は、首を横に振って肩に手をぽん、と乗せた。
「摘んでさしあげろ、赤ずきん…ぷっ」
「ああ…今までになく不憫な役回り…ぷッ」
そんな二人の言葉に、(哀れみを込めた)涙を拭いながら手を差し伸べる赤ずきん。
「…ええ副長…摘んで差し上げますから…ぷっ」
「お前ら、後で覚えてやがれ!!!」
一輪のお花は、真っ赤な顔をして叫びましたが、役柄上、やはり赤ずきんに摘まれてしまう羽目となってしまったのであった。
そうして赤ずきんは妙なお花を引き連れておばあさんの所へと向かいました。
すると、向こうから、何か茶色いものが駆けてきました。
そう、それは、怖い怖い、おおかみだったのです。
「赤ずきんさ〜ん!」
そう手をぶんぶんと振って走り寄ってくるおおかみ。
「沖田先生…またもや何をなさってるんですか」
そんな人なつこいおおかみに呆れたようにげんなりと肩を落とす赤ずきん。
「何っておおかみさんですよぅ。あっ、原田さんと永倉さ…」
そこまで言っておおかみは目を丸くしました。
そうして口をふさぎながら今にも吹き出しそうな顔をしてぷるぷると震え出すおおかみ。
それを気の毒そうに見つめる赤ずきんとお花たち。
「…震えながらわらってんじゃねえっ!!」
お花三号は、どうやらその役所がお気に召さなかったらしかった。
「ところで、赤ずきんさん」
気を取り直しておおかみが話を進めます。
「はい、何でしょう」
赤ずきんに、おおかみは不思議そうに首を傾げて言いました。
「私…これから何すればいいんですかね〜?」
「はいっ?!」
驚いたのは、赤ずきんだけでは無く、他三名も目を丸くした。
「台本読んでねえのか総司っ?!」
原田はそりゃいけねえとおおかみを引っ張って行く。
「だって、台本無くしちゃったんですよ…え?あ、私がですか?赤ずきんさんを?…………え……えっ?!……………………」
何故か一輪のお花と声を潜めていくおおかみに、赤ずきんは不審そうに言います。
「ちょっと、なにをこそこそしてるんですか」
しかしその声は届かずに、内緒話は終了してしまったようであった。
何故か戻って来たおおかみは、顔を心なしか(どころかもの凄く)赤く染めて、ぎくしゃくと言いました。
「ア、赤ズキンサン、デハ、ワ、私ハ用意ガアリマスノデコレデ」
明らかに様子のおかしいおおかみさんは、赤ずきんの止める声も筒抜けでさっさと立ち去ってしまったのでした。
もの凄い勢いで扉を開けて走り込んできたのは、あのおおかみだった。
ばたーん、と小気味よく音を立て、はあはあと息を荒くして。
「どないしたん、おおかみはんそない急いで」
そう、ここはおばあさんのおうちなのであった。
「あああ明里さ…じゃなくておばあさん!!!」
もうおおかみは顔を真っ赤にして扉を後ろにばたんと閉めました。
「へえ、なにかあったんどすか?」
「た、たいへんなんです」
「何がどすえ?」
「わたし、これから赤ずきんさんを食べてしまわなければいけないみたいなんです!!!」
そう張りつめた表情で訴えるおおかみに、おばあさんはその意図(笑)を察する事が出来ず、首をかしげて言いました。
「へえ…けどおおかみはん、うちも食べてしまう予定ですやろ?」
「ええっ?!?!」
想像以上に過剰な反応を示すおおかみに、おばあさんは不思議そうな顔をします。
「そそそそんな!!!それは出来ませんよ!!」
おおかみはますます顔を染めてぶるぶると首を振り言いました。
「私がそういうふうに見れるのは神谷さんだけなんですから!!!」
おばあさんは、そこでやっと言葉の意味を理解したようであった。
そして、瞬時に自分がどうするべきかを判断したようであった。
「…あ!そういうことやったら、ほな、うちは席はずします」
そう言ってすっくと立ち上がるおばあさん。
「ええっ?!でででも赤ずきんさんに嫌われたり…こ、こんな急で…」
おおかみはもうあたふたと慌てて立ち上がるが、既にもう、おばあさんの姿はそこに在らず。
そして。
赤ずきんは、眉をしかめ、腕を組みおばあさんの家のドアの前に立ちふさがっていた。
(何でいきなり三人ともいなくなっちゃったんだろう)
赤ずきんは摘んだはずのお花たちの行方がわからないかとそこらを見渡したけれども、
何ひとつ見つからず。
しかたないとばかりに躊躇せずに、赤ずきんはばたんと戸を開け放った。
「あばあさんお見舞いに参り…………ってあれ?」
赤ずきんは眉をしかめます。
「なんで真っ暗なんですか?」
そうすると、奥から声が。
「あっ、あ、いえその、電気はやっぱり消した方がいいかなと…」
赤ずきんは、明らかにおばあさんの声ではないことを不信に思うと、また声をかけます。
「電気つけますよ?」
そうすると、また声が暗い部屋から降ってきます。
「えッ?!あ、いや、その…その方が私的にはうれしいですけれど…暗い方がお互いいいのではないかと」
「?」
赤ずきんは電気のスイッチに手をかけながら、ばたんと戸を閉めた。
もう、そこは狼の巣窟。
家の庭の草むらでは、お花達(ひとりを除く)と、おばあさんが、こっそりとほくそえんでいましたとさ。
めでたしめでたし。
サツキ様おまたせいたしました〜。
赤ずきん★
楽しかった〜!!(オイ)
童話はいいですね。
癒されますね!!