サザンビークに着いた一行は、まず宿に入る。
ククールが口を開く
「悪いが俺は此処までだ・・・」
「どうしたの?ククール、改まってさ」
ゼシカがきょとんとした表情で問いかける
「今まで世話になったけどよ・・・さっき兄貴から手紙が来たんだ」
「やっと聖地ゴルドの復興の目処がついたってな・・・今までの状況を知らないやつらがほとんどだが、それを知ってるやつらも・・・兄貴の過去を知った上で新法皇に推してくれたらしい」
「手伝ってやりたいんだよ、兄貴を・・・聖騎士団長なんて柄じゃねぇけどな・・・初めて兄貴に頼まれたんだ。やってみるさ・・・世のため人のため・・・ってやつをよ」
「うへぇ、ククールが聖騎士団長でゲスか・・世も末でゲス」
ヤンガスがからかう
「テメェッ!・・・って、訳でよ。俺ゃ行くわ」
「ああ、元気でな。頑張れよ、聖騎士団長様」
「頑張ってね、聖騎士団長サマ♪」
「お前らまでっ!・・・フッ、んじゃな、またどっかで会おうぜ」
後ろ手に手を振り、ククールは去っていった。
「あ〜・・兄貴、アッシも言いにくいんでゲスが・・・」
「どうした?」
「昔の山賊仲間が、真っ当に商売始めたんでゲス。手伝って欲しいって言われてるでゲスよ」
「悪さばっかりやって、真面目に働くことなんて考えなかったやつらが頑張ろうとしてるでゲス、手伝ってやりたいでゲスよ」
「そうか・・・」
「兄貴の恩義は忘れないでゲス・・・何かあったらすぐ飛んでくるでゲスから!」
「いや、俺こそ世話になった・・・今生の別れじゃないんだから泣くな!」
フリードの手を強く握って涙を流すヤンガスに声をかけるフリード
「そいじゃあ、行くでゲス・・・兄貴!お嬢ちゃんお達者で〜」
両手を大きく振りながらヤンガスも去っていった。
「皆それぞれの道を歩き出すんだね、フリードはどうするの?」
「俺か・・・俺は・・・」
「どんな道だって、アタシついて行くからね」
「ゼシカ・・・」
一夜明けて、サザンビーク城に入り、玉座に通されるフリードとゼシカ。
「おお、いつぞやの・・・よく来てくれた、して今日は何用じゃ」
クビラウス王が問いかける
「陛下にお願いがあってやって参りました」
「ふむ」
「王子とミーティア姫の結婚、白紙に戻していただきたい・・・あの王子ではまだ姫を幸せにできるとは思えません」
「フリード!何を・・・」
横で驚くゼシカ、当然王も黙っていない
「何の権利があって・・・いくら暗黒神を倒した勇者といえ無礼すぎるぞ!」
「陛下・・・いや叔父上、人にはそれぞれ役目があります。貴方は王として見事な統治をなさっているが、もう一つ・・・あの王子を立派な男にするという、親としての役目が御座います。」
言いながら、立ち上がる王を制しアルゴンリングを差し出すフリード
「何をたわけた・・・むっ!そ、そのリング・・・して叔父上とはお主!」
「はい、私の父はエルトリオ・・・そう、貴方の兄です」
がっくりと玉座に着く王がゆっくりと話し出す
「そうか・・・やはり・・・それにお主達にはあの王子の体たらくは筒抜けじゃったしな・・・良かろう・・・結婚は白紙に戻そう。」
「それに・・・本来ならミーティア姫の相手は、王となるべき兄の息子・・・フリード、お主に権利がある・・・そしてこの玉座もな」
二人のやり取りを聞きながら戸惑っているゼシカを引き寄せ、フリードが答える。
「私の役目は暗黒神を倒すことで終わりました・・・後は・・・この気が強くて、我儘な娘を幸せにすることです、一生をかけて」
「フリード・・・」
ゼシカの目から涙がこぼれる。
「そうか・・・一国の王より、一人の愛した娘を取るか・・・確かに兄上の息子じゃ」
「あい解った・・・トロデ王にはワシから使いを出しておこう」
王の理解も得て、二人はサザンピークを後にした。
「さて、これからどうするか・・・ベルガラックのカジノでも・・・」
「待ってフリード!何言ってるの!ずっと戦ってばっかりだったんだから、まずは私とスッウィ〜トなディトするに決まってるじゃない!」
「・・・やれやれ」
それぞれの役目を果たし、新たな目的を持ち、四人の世界を救った英雄は、再びそれぞれの道を歩き出した。