※このページは伊坂幸太郎の小説「ラッシュライフ」のネタバレ作品解説です。
楽しみが無くなりますので読んでない人は当ページは絶対に見ないように。

豊潤なネタバレ--伊坂幸太郎「ラッシュライフ」--
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  4つ+1の物語がすれ違いあった展開が面白かったですね。エッシャーの騙し絵のような堂々巡りではないかと
  惑わせる構成が見事でした。実際は狂いは無く時系列に並ぶのに構成により騙し絵のように見えてしまうという
  パズルか手品でも見せられている感覚がありますね。もちろん物語や人物も魅力的だ。では時系列表どうぞ。


     主要な四つを色別で表しています。
     河原崎のみ  黒澤のみ  京子のみ  豊田のみ  二つの物語が擦れ違う部分は黒字

              

  〜物語はここから始まる〜

  1、河原崎クンが開店したばかりの喫茶店で塚本と会い、高橋についての会話。
  この時野良犬も見る(首輪なしとの記述)。駅前の白人女性のスケッチブックに「力」と記入する。
  2、塚本と車で山へ移動し、解体の話を聞く。ここで高橋が当てたという宝くじを見せられる。
  3、夜、一人で父親の墓へ行く。黒猫が歩いているのを見た(首輪によりミケという名だと知る)
  4、塚本とマンションへ行き、高橋の解体が始まり、河原崎クンは死体の絵を描く。
  5、その後、死体が高橋ではないと気づき二人はもめ、河原崎クンは塚本を絞殺してしまう。
  この途中テレビに生出演する高橋の姿が流れる。


  6、翌日、バラバラ死体を車に乗せ、塚本の死体も車まで運ぼうとする河原崎クン。ここで初めて黒澤が
  登場する。河原崎は「友人が酔っ払って」と死体をごまかした。この時、宝くじが落ち黒澤の手に渡る。
  7、殺人にうろたえる河原崎クンは歩いていた男にマンション名を告げ「あの部屋に行ってくれ。
  僕のやったことを見てくれ」と混乱している。

  8、駅前に行った黒澤、白人女性のスケッチブックに「夜」と記入する。野良犬も見る(首輪なしとの記述)
  9、河原崎クン、駅前で昨日見た野良犬を見つけて気紛れから首輪を与えた。
  10、黒澤は同業者と会い会話する。昨夜TVの生中継で高橋が出ていたことも話した。公園のベンチで
  黒猫のミケが死んでいるのを発見。←生中継(5)・ミケ(3)ともに河原崎より時間が後という伏線。

  11、舟木宅へ侵入。20万円取っていく。
  12、河原崎クン、黒澤という順で別々に老夫婦に銃で脅される。
  13、黒澤が部屋にいると旧友の佐々岡が入ってきた。黒澤を泥棒と思っている佐々岡との会話。
  ここへ来たのは、朝ある男がこの住所を教えてきたため。←河原崎クンのことである(7)。
  14、黒澤と佐々岡の会話が続く。途中、トイレへ行く黒澤。「トイレにいくふりをしてどこかで一仕事してくる
  かもしれない」と言い、このセリフは構成により効果的になっているが実際はトイレをしただけ。
  15、黒澤、同業者から「あさって郵便局を襲う」という情報を聞く←後々豊田と繋がっているネタ(26)。

  16、翌朝、佐々岡が妻(京子)に離婚をすると電話。黒澤に京子の携帯電話の番号を教える。
  ここで黒澤は二・三日したら舟木の部屋にもう一度行くかと思いついている←後々豊田に繋がる(28)。
  17、夫からの電話を切った京子。直後に謎の男から電話「カウンセラーになりたいんだけど」
  ↑この謎の電話は黒澤(16)なのだが、構成上忘れたり気づきにくかったりする。
  18、京子、拳銃を受け取りにコインロッカーへ行き、途中で鍵を紛失。ここで白人女性のスケッチブックに
  「心」と記入している。

  19、黒澤は野良犬を見つけ宝くじを首輪に入れる。
  20、車中で話す京子と青山、運転中に人を轢いてしまう(河原崎クンが運んでいた塚本の死体。
  河原崎クンのミスで偶然死体が轢かれてしまった)京子と青山は死体をトランクに入れて運ぶ。
  (後ろから赤帽子を被った河原崎クン追走している)
  21、林で用をたす京子、戻ってトランクの死体を確認するとなぜかバラバラになっていて驚く。
  (河原崎クンが塚本の死体をどうにかしようと取り戻し、代わりにバラバラのほうを置いてきた)
  22、青山宅前に来た京子と青山、バラバラ死体が動いたように見え驚く京子。その後、青山の裏切りを
  知り愕然となりフラフラさまよう。


  23、リストラされた豊田は駅前を歩いている。白人女性のスケッチブックに「無色」と記入する。
  24、朝までフラフラさまよった京子は野良犬を見つけ、ハサミで危害を加えようとするが中年に
  阻まれる。この中年が豊田である。これをきっかけに豊田と犬は行動を共にする。
  犬には河原崎クンの与えた首輪がついている。
  25、犬がコインロッカーの鍵を拾い、豊田は拳銃を手に入れた。
  26、郵便局を襲う豊田、三人の局員はスタコラ逃げ出した←黒澤の同業者であるというネタ(15)。
  27、公園にいた豊田、若者に襲われ銃を発砲。

  28、舟木を撃ってやろうと、怪しい電話で家へおびき出した。家の前で出てきた男に銃をつきつけたが
  舟木ではなく黒澤と名乗る泥棒だった←(14の間にやっているように錯覚する構成だが、もちろん違う)
  豊田は結局舟木への復讐はやめにした。
  29、昼間襲われた若者の仲間に見つかり逃走、その途中に河原崎クンの車に乗せてもらう。
  ↑この前の二日の河原崎クンは、死体を処理しようとするも老夫婦に襲われ(12)、次の日は
  塚本の死体を車で轢かれてしまって散々(20)
  30、河原崎クンと駅で別れた豊田。河原崎クンは北へ向かった。
  31、駅前で白人女性のスケッチブックに「イッツオールライト」と記入。
  〜物語が終焉を迎える〜


          

  ↑こんな感じだと思います。読んでる時はあれこれ考えて混乱しますが、最後には納得ですね。
   こうして見ると普通なのに、惑わす書き方でホントに騙し絵かと思いました。

  全体の流れ  河原崎→黒澤→京子→豊田ですね。最後まで全員顔を出しますけど。
  宝くじの流れ  塚本→黒澤→犬→豊田という流れでした。
  時間のズレに関する伏線 黒猫のミケ、スケッチブックの言葉、野良犬の首輪、高橋のテレビ出演など。
  意外な繋がり  黒澤パートの冒頭の隣人が河原崎である。豊田パート冒頭のハサミ女は京子である。
   豊田パートで郵便局職員と思われた三人は黒澤の同業者。
   京子パートで後ろから車で追ってきたのは河原崎である。
   さらに京子の携帯にかけてきた男が黒澤だったこと(17)と
   黒澤の部屋に佐々岡が来た理由(7)(13)は忘れがちな小ネタ。

  この表は単行本を元に作成しております。文庫化で何か変わったりしたのかな?

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