※当ページはネタバレの内容を含んでおりますので下記の小説を
未読の方は楽しみを奪われてしまいますので立入禁止です。


麻耶雄嵩「神様ゲーム」

真実は神のみぞ知る--麻耶雄嵩「神様ゲーム」--
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ひどい内容の上に、煙幕を張って逃げられたような読後なのでモヤモヤしてしまいますね。
ともかく秀樹事件、共犯者は誰だったんでしょうか。天誅を喰らった人でいいんでしょうか。


まず裏庭が外側から閉まっていた。扉以外からは脱出不可能という二点は確実。なので共犯者は裏庭にいる。
芳雄が考えついたのが父親が物置に隠れてた説。もう一つが小柄な母親が井戸の蓋に隠れてた説。
主流はこの二つと見て良いのでは?あとありえないキワモノの説ならあるけれども除外してもいいでしょ。


①父親物置説
一旦物置に隠れて探偵団が逃げ出した後に、ミチルちゃんが置いていった服を秀樹に着せて屋内に戻り、
探偵団と入れ違いで脱出、逃走。再び現れた際に物置に入ることで足跡をつけて誤魔化してしまった。
しかしこちらは無理も多そうだ。なぜなら仕事中の刑事がほいほいと一人で好きな場所に行動できるとは思えないし
ましてや隠れ家で変態プレイする時間的余裕は無いんじゃないかってこと。しかし刑事ともあろう者が現場の物置に
入ってしまうのは軽率な行動なので違和感があるといえばある。それに父親は閉じ込められた際に必要な携帯電話を
所持している。ちなみにこの場合の動機は「父親が変態だったから」になります(笑)


②母親井戸の蓋説
母親がどれだけ小柄なのかは知らないけれども井戸の蓋に入れると仮定して隠れました。
探偵団が逃げ出した後にミチルちゃんが置いていった服を秀樹に着せて、探偵団と入れ違いで脱出。
おそらく専業主婦らしい母親ならばしょっちゅう学校を休んでしまうミチルちゃんと逢引きし、変態プレイに
勤しむ事も時間的には余裕。ただしこの場合母親が極端に小柄であるという記述は特にないのでズルいといえば
ズルい。さらに犯人ならば鬼婆屋敷に閉じ込められた際にミチルちゃんに知恵を授けるために携帯電話による
連絡を取らねばならないが、持っているという記述も確か無かった。そこもズルい。母親が物置に潜み、何らかの
理由でそれに気づいた父親が物置に入り痕跡を消したって説は無理がある。鑑識の捜査でばれる。
よってやはり井戸の蓋以外は無い。動機はこれまた「変態だったから」になりますね(笑)


上の二つにほぼ決定。P30に「少し前にぼくん家のことを何度か訊かれたので」とあり、これも意味深だ。
ミチルちゃんが両親のどちらかと関わりがあったとも読める。…で、どっち?ってことになるんですけれども
論理的にどちらが必然という記述は無さげ。父親が無理をして仕事を抜けてればできそうだし、母親が確実に
井戸の蓋に収まるかといえばわからない。しかし鈴木君こと神様が天誅を喰らわしたというのが本書のポイントだ。
鈴木君≠神様ならば犯人は決定されず鈴木君=神様ならばそれが根拠で母親と決定。つまりは鈴木君が神様という
設定を信じれば犯人はわかるよ、という作者から読者に対して行われた「神様ゲーム」というわけなんじゃないかと…。

つまり本書が子供のふりした大人の話であるように、論理的に解決されるべき本格ミステリという仮面を被った
別種の物語なのではないかと思われる。読者は「犯人が誰なのか」「その根拠は何か」という疑問+その外枠に
位置する「これは本格として読むべきか」という疑問も持たなければならないので困惑してしまう。それが作者が
読者に仕掛けた「神様ゲーム」なのではないか。…などとここまで偉そうに書いてる私だが、実は全然わかってない(笑)
作者の小説はあまり読んでないし、意図してることもわからない。あくまで本書読後だけの意見なんですな。


ちなみにキワモノ説は③作中に出てこない子供(やたら小柄な大人)が犯人説。
要するに井戸の蓋説ですね。これじゃあまりにひどいな。フェアじゃなさすぎで却下。
あと空飛ぶ犯人説とか。ある意味ミステリーランドな結末だけどありえない。却下の価値も無い。


無理矢理ひねりだしたキワモノ説は④鈴木君が犯人説。
鈴木君が神様であると仮定した場合、実は結構しっくりくる。何でも知ってる神様が鬼婆屋敷に閉じ込められて
ピンチになるのはおかしいかもしれないが、結局その後自分は疑われることなく終わることまで知っているのだから
『あえて』楽しんでやってるのかもしれないぞ。神様ではないと仮定した場合、何でも知ってるのは物凄いリサーチの
結果であって、天誅はすべて偶然で(んなアホな)…あとは③井戸の蓋子供説ですね。どちらにせよ無茶だ。却下。


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