「天然日和」 石田ゆり子 ★★★★
---幻冬舎・02年---

石田ゆり子は素敵だ。メディアで見て受けるイメージ『しっとりと落ち着いている』という感じが
私は好きである。この日記風エッセイもイメージを崩さなかった。しっとりして心地よい本だ。
犬と猫と暮らし、雑貨や健康的なものが好きな彼女はとても自然体で、適度に真面目。
あれこれ悩んでしまう心のスランプを素直に書いているのも好感が持てますね(似たようなことを
書くこともあるが)。あの美しさは内面によるものも大きいのかもなぁと思えるエッセイでした。
私はわりとプリプリしながら生きているので、こういう自然な文章をダラダラ読んでいるだけで
癒される気がします。彼女の言葉を借りると『人が心から思っていること、素直な文章に出会うと
幸せな気持ちになる』というやつです。もちろん書き手の心あってこそだろうけど…。
著者は04年現在三十なかば、これから素敵なオバサマになっていってほしいもんです。

「言いまつがい」 糸井重里【監修】 ★★★★☆
---東京糸井重里事務所・04年---

くだらねー!と言いながらうひゃうひゃ笑ってしまう本書である。日常で突如発生したまつがいを
集めただけで笑える。静かにさせようと怒鳴る先生のまつがい「話し声をするな!」だったり
逆転現象「タカネットじゃぱた」などなど『たは、たはは、ふはっ』と気の抜けた笑いが次々と
腹から出てきて止まらない。笑わせようとしてない真面目な状況で実際に出てしまいそうな面白さが
たまらない。本を読む気がしない時でも気軽に手に取れる愉快な本だ。爆笑必死。一度見てみて!

「金の言いまつがい」 ほぼ日刊イトイ新聞 ★★★★
---東京糸井重里事務所・06年---

↑前回の続編にあたる。相変わらずくだらなさ満載な脱力本であった。
「うでんにのれおし」とまつがったり、「まさか」と「もしや」が混ざって「まさや!」と
言いまつがったりいろんなパターンがあって笑える。日常でありそうなものが可笑しい。
立ち読みはニヤけるので危険だぞ!ただホントの言いまつがいが多い前回のほうが笑えたかな。
今回はあえて冗談で言ったり書いたりしてるものもあるし、嘘臭いのも増えてる気が…。
「編集者T君の謎」 大崎善生 ★★★★
---講談社・03年---

週刊誌に連載されたエッセイをまとめたもの。作者は小説家の前は将棋雑誌の編集長をしていたので
普段は見られない将棋界の話が語られていた。テレビでは知れない羽生・谷川・加藤・佐藤。村山ら
一流棋士の側面が読めるのも楽しいし、将棋界にいる様々な人(個性的で将棋が好きな人ばかり)の
やりとりは変わっていて愉快であった。あと将棋好きなら知っているであろう「ゴキゲン中飛車」は
命名者が作者とはビックリである。ホントに将棋界の中心にいたんだなぁと実感できる。
文章は小説とは正反対で普通のオジサンらしい面白い文章だったので気楽に読めた。

作家・大崎ファンとしても興味深い。「人間失格」しか読んだことのない編集者の話や奨励会を去ってから
世界放浪を始めた男の話…そしてアジアンタムブルーの中川宏美の名前の由来は将棋姉妹の中倉宏美
だったり(←この人のこと知らんけど)、ちらほらと小説の題材が見てとれ作者の小説は実生活の色合いが
強いんだとわかった。将棋界を多少知っていて、かつ作者の小説が好きな人(少なそ…)にはオススメの
一冊だ。ところで最近作者と高橋和・元棋士が結婚してたことを知った。驚いた。年の差夫婦だ。
「ないもの、あります」 クラフト・エヴィング商會 ★★★☆
---筑摩書房・01年---

表現として耳にしたことはあるけれど実際には存在しないものがあるお店、クラフトエヴィング商會。
例えば「堪忍袋の尾」、「無鉄砲」や「助け舟」なんてものもあって、その使用方法と注意点などが
ユーモラスに挿絵つきで紹介されている。欲しいのは「自分を上げる棚」、あったらいいですね。
「先輩風」も吹かしてみたい。わはははは、なんて笑いながら。「捕らぬ狸の革ジャンパー」は
いらないなぁ。一体何の意味が…。軽〜く楽しく読める本でひまつぶし以上のことはないですかね。
図書館で借りてるので別に文句はないんですけども。

「作家の猫」 コロナブックス【編】 ★★★★
---平凡社・06年---

写真を交えながら様々な小説家(たまに画家)たちと飼い猫の関係を描いた本だ。これを読む人は
猫が自然に過ごしている風景を見るのも好きだし、猫好きの人と猫との関係を見るだけで心が和む
人達であろうから取り立てて紹介することもないが少しだけ。紹介される一枚の写真だけでも伝わる
温かさもあるのだが作家と猫とのエピソードもまた面白い。猫嫌いだった物理学者・寺田寅彦が
猫好きになる話だとか、家の中で粗相をする猫を殺そうとしたが悪いことをしたような顔をする猫を
無垢に感じて着物を汚されながら一緒に寝た木村荘八。作家の人間像は窺い知れないものだが
猫と暮らす話を聞くと人間味が増して親近感が湧くものだ。内田百閒・中島らもあたり有名だが
幸田文・池波正太郎・谷崎・犀星など多くいる。さすが作家だけあって猫について綴った部分などが
紹介されるけれど的確で納得できる。「猫は精妙きわめたエゴイストで、人の生活と感情の核心へ
しのびこんでのうのうと昼寝するが、ときたまうっすらと開ける眼は絶対に妥協していないことを
語っている」とかさ。知性と無垢の反する二つを持っているように見えるんだよねぇ。猫ってさ。
巻末には「猫の文学博物館」という猫が登場する作品がたくさん紹介されていてありがたい。
「南極のペンギン」 高倉健(画・唐仁原教久) ★★★☆
---集英社・01年---

高倉健が撮影などで世界を回る中で出会った、人々や動物の物語。
南極・沖縄・ハワイ…そこにいる人々を見て健さんが感じたことが書いてある、エッセイの
ような絵本という感じでしょうか(逆かな?)。健さんらしい真っ直ぐな感性が見て取れます。
どこか優しげなんだけど、ただ優しいだけでなく実直さが見え隠れするのがらしくて良かった。
たとえば沖縄で老若男女の参加する運動会を見ていた時こんな文章がある。
『ぼくの仕事は俳優だからよく人から拍手される。でも拍手されるより拍手するほうが
ずっと心が豊かになる』シ、シブいぜ健さん。何気ないところにも良い文章があった。
大きめの文字で十の物語。平仮名がやや多いのは子供にも読ませたいからだろう。

「日本原論」ほか 爆笑問題 ★★★★
---宝島社・97年ほか---

爆笑問題はいろいろな本を出している。私が読んだのは「日本原論」「日本原論2000」
「ザ・コラム」の三つ。オウム真理教・フランス核実験などその時々の時事ネタを扱って
笑い飛ばすという本。二人の会話形式で、太田が間を空けずにとにかくボケまくるので
一息つけず大笑い。爆笑問題のマニアックな笑いが好きな人は手にとってはいかが?

「日本原論 世界激動編」も読みました。(幻冬舎・02年)
お受験殺人、雪印、小泉内閣、ギャグのような出来事ばかり起こる世の中を笑い飛ばす。
太田のボケは不謹慎なほどに笑ってしまうな。毒の入った社会派漫才って感じの本です。
それにしてもいろんなことがあった世の中。ミイラが発見されて「まだ生きてる」って言ってた
ライフスペースって宗教、太田がボケるまでもなく冗談になってて何かむなしい。
「ほんじょの虫干し。」 本上まなみ ★★★☆
---学術研究所・99年---

女優本上まなみのエッセイ。有名人のエッセイというと偉そうなことをわかったふうに言うんだろ?
と思いきや軽い日記みたいなものでした。自然体でなかなか面白かった。前半はギリシア旅行の話。
後半は日々の日記っぽい。毎日を楽しく生きているのだなぁ、と読んでてほのぼのした。
ところで本上まなみは相当文学に詳しいらしく、この本にも文学の話が出てきたりする。
二葉亭四迷の「浮雲」が好きらしい。ほのぼの・俳句・日本文学、こういったものが好きな人にオススメ。
女性が読んでも面白いんではないかい?
「ほんじょの天日干。」 本上まなみ ★★
---学術研究所・01年---

カメラ好きの本上まなみが日頃の写真を撮ってそれについて話をするもの。後半はタイとバリの
旅行記。ムム、写真が中心なので文章(話)が少なめ、本の話もなくて少しガックシでした。
動物好きなので動物ネタが多かったかな。ファンの人なら買って良いんではない?
カバーもイマイチだ〜とか思う。だって裏表紙カエルの写真。ウエ〜〜
「ほんじょの鉛筆日和。」 本上まなみ ★★★★
---マガジンハウス・02年---

雑誌「anan」で連載していた「ほんじょのへもへも通信」が本になったもの。
女優のイメージまるでなしのマイペース女が、友人・家族・食べ物・身の周りの話など書いています。
日常のこと中心なので爆笑するような面白さではなく「フッ」と笑ってしまうような面白さ。
いろいろHPを見ていて「ここの日記なんかいいな…」って思うことがあったりしますよねぇ、そんな感じ。
所々に描いてある中川いさみさんのイラストがまた可笑しい。日常のことで笑える人はこれも好きだろう。
もっと言えばけらえいこが好きな人は好きだと思う。カバーがまたオシャレざんす。
「むかつくぜ!」 室井滋 ★★★☆
---マガジンハウス・91年---

室井滋がまわりの出来事をおもしろおかしくたまに情緒的に語ってくれる。
有名人のエッセイ、と言っても偉そうに自分の人生を語ったりはしない、超短編集という印象。
十ページ以内の話がたくさん、語り口・オチともになかなかうまかったりする。
ヒマな時・ちょっとした話が読みたいときに読むのがいいやね。
変なキャラがたくさん登場します、室井滋らしくて面白い一冊でした。
「まんぷく劇場」 室井滋 ★★★
---文藝春秋・96年---

例によって室井滋が周りの出来事を愉快に語ってくれるもの。
さらっと面白い話をしてくれるので、ヒマな時や軽い本を読みたい時など良いです。
彼女が話し上手なせいか面白くて読みやすい。ただしこの本には頻繁に
映画の話を例えに出したりするので映画に詳しい人はオススメだ。
別に知らなくても説明してくれるからいいんだけど…。
「ニッポンの猫」 岩合光昭
---新潮社(新潮文庫)・00年(03年)---

猫の写真とそれに関する文が載っている。当たり前だが猫好きじゃないと面白くない本だ。
猫本はいくつかあるが本書の写真は絶妙だった。作者はほとんど天才的な能力があるんじゃ
ないかと思えるのだ。家の前や海辺や山道…どこにいる猫も風景に溶け込んでいるのだ。
カメラマン(作者)がそこにいないかのようだ。何で作者はこんなのが撮れるんだ??
私は我が家の猫でさえまともに撮るのは難しいのに。猫は犬と違って人より場所につくから
風景によく馴染むし、どこでもそこを「猫の場所」にしてしまう動物だと思うが、この写真はまさに
それを切り取っている感じだ。すごいなぁ。難しいはずなのに全然嘘臭くない。もう天才だこりゃ。
そして本書は「ニッポンの猫」というだけあってカタカナの名前がついた小奇麗なやつとかは
登場しない。そのへんの小汚い三毛や白黒ブチである。そこがまたイイ。生粋の猫好きとは
そういうものだ。自然体な雑種猫を見ると和むのだった。猫バンザイ!岩合天才!な一冊。
文庫は巻末に漫画ホワッツマイケルのおまけつき。まさに猫好きのみターゲットの本だ。
「いやぁ〜猫ってほんっとにカワイイですね。それではまた次回お会いしましょう(水野風)」

「地中海の猫」 岩合光昭
---新潮社(新潮文庫)・00年(05年)---

岩合さんの写真のうまさについては↑で書いてるので、こんな本もあるよという紹介だけ。
地中海周辺で撮った猫の写真とそれに関する文が載った本だ。ケンカしてたりボンヤリたたずんでたり
いろんな写真があります。猫好きでなければ何がいいかわからないでしょうがカワイイです。
さて、この本を手に取ったのには理由がある。大の猫好きだからなのは当たり前だが、表紙に
デデンと載ってる白黒猫の模様がうちで飼ってる(あるいは飼ってた)猫達に似てるからなのだった。
「いやぁ〜猫ってホントにかわいいですね。それではまた次の本で会いましょう(また水野風)」

「BLUES CAT」 岩合光昭
---筑摩書房・97年---

今回は本じゃなくて写真集です。文はほとんどなくて写真のみ。岩合さんの天才ぶりは
「ニッポンの猫」で言った通りなので省略。この写真集も猫の魅力がいっぱい。ジャンプしてる途中の猫や
犬と仲良くしてる猫や休んでる猫のアップやパンチ食らって「ヒーッ」って顔してる猫などなどいっぱいです。
中でもペリカン(?)が長いくちばしで猫をパクッてしてる写真は馬鹿馬鹿しくて必見だ。かわいらしくて
世界中どこでも猫って変わんないなぁと思いました。大の猫好きならチェックしてみることをオススメするぞ。
「いやぁ〜猫ってホントにかわいいですね。それではまた次回お目にかかりましょう(しつこい?)」

「ちょっとネコぼけ」 岩合光昭
---小学館・05年---

こんな写真集もあった。別の写真集で見たやつも何点か散見したけれども別に構わない。
全然飽きない。よくこんな写真が撮れるものだ。作者の一言も面白い。猫の魅力をわかってる。
穴からぬっと顔出す猫、犬と仲良しで隣りに並んでる猫。実際には見ることが出来ないね。
「いやぁ〜猫ってホントにかわいいですね。それではまた別の岩合本でお会いしましょう(まだ続けるぞ)」
「旅猫-MEET THE CATS AROUND THE WORLD-」 新美敬子
---講談社文庫・96年---

写真と文章が半々くらいのフォトエッセイ。著者が世界中を旅しながら猫の写真を撮ってます。
いろんな文化のいろんな風景のいろんな表情の猫たちが個性的でかわいい。文化によって
猫に対する考え方も違って面白いですね。猫はもちろん、旅する上での人々との出会いも良い。
猫の写真つき紀行って感じです。猫の戦いが始まらないよう見てる初老の男性、世話になった
タクシー運転手にお礼に羊羹を送ったら何かわからず家族会議を開いた、などの素朴な目線の
話が愉快であった。世界の猫おばさんの話などもある。もちろん猫好きにはオススメな一冊。

「公園通りの猫たち」 早坂暁
---講談社・89年、講談社エッセイ賞---

渋谷にある公園通りで生きる猫達。人間、車、カラス、寒さと苛酷な環境ながらも
生きる個性的な猫達と、その周りの人間達の物語。

いろんな猫が紹介されます。子供を産んだり、事故で死んだりという出来事を
近くのホテルに住む作者が猫の写真つきで紹介。猫好きにはオススメだ。
作者が猫を見る視点が優しくて猫好きだというのが伝わってくる。
無情な人間が減って、幸せに生きてほしいものである。
「猫はどこ?」 林丈二
---廣済堂出版・96年---

作者がいろいろな視点で猫を探していくエッセイ。我輩は猫であるのモデル猫の子孫探し、
猫という字が入った地名、猫に関する昔話などを紹介していく。その辺にいそうな野良猫の
写真が多くて笑える。普段は考えないような視点で猫を見たりするので楽しい。
後半の昔の逸話はやや退屈だった?かも。でも楽しくて癒されてしまった一冊だ。
もちろん猫好き以外は楽しくないだろう。猫が好きでスイマセン。
「文学賞メッタ斬り!」 大森望・豊崎由美 ★★★☆
---PARCO出版・04年---

有名な直木・芥川を筆頭に無数ある文学賞について評論家の二人が対談する内容。いろんな賞の
位置づけや傾向などが語られ、選考委員の裏話なども紹介される。直木賞って変な作品に受賞させるなぁ
なんて多くの人が思ってそうなことを代弁してくれるのは痛快であったし、選考委員の個性的な選評を
面白おかしく紹介するのも笑えた。どの賞や選考委員にしても分け隔てなく客観解説するのではなく、
主観をどんどん入れた語りが気持ちいい。逆に言えば、偉そうな物言いが不快な人もいるだろうけど。

本書では多数の作品名を列挙して解説をするのでかなりの読書家でないとわからないことが多いので
すべて楽しめるとは思わなくていいかも。私も新人賞やSFに関する部分はサッパリだったし興味もなくて
後半は退屈してしまった。とはいえこういった文学賞そのものを扱うものは新鮮で全体的には楽しめた。
残念なのはあくまで評論家である二人の意見であるため、一般読者である自分の指針にはならなそうな点。
私は文学的な評価よりも、単純に面白かったり「いいな」と思える点に比重を置いてる読者なので。

「たたかうお嫁さま」 けらえいこ ★★★☆
---メディアファクトリー・92年---

けらえいこの実際の結婚式までの道のりを描いた漫画。相手の親にあいさつに行って、式場を予約、
披露宴の計画にウエディングドレスとまさに戦いの日々。読んで大変だな、と思う。結婚式に新婦が
案外変なこと気にしてたり…と相変わらずのけら節でした。おもしろい漫画。
「結婚生活シリーズ」 けらえいこ ★★★★
---メディアファクトリー・91年---

「セキララ結婚生活」「いっしょにスーパー」「7年目のセキララ結婚生活」などが出ている。
けらえいことダンナの日常を描いた漫画。結婚すると夫婦はどうなっていくのか、日常のどうでも
いいようなことをおもしろおかしく描いています。「ウチもこうだ」とか「こんなことしてんだ」とか
いろいろ楽しみ方はあるでしょうが、普通のことを改めて書くとやたら面白い。とにかくニヤニヤ
笑ってしまうシリーズ。早い話がけらえいこの実生活版『あたしンち』ってことです。
「100万回生きたねこ」 佐野洋子 ★★★★★
言わずとしれた超名作絵本。持っているお宅も結構あるんじゃないかと思われる。
いろいろな飼い主に飼われ死んでは生き返り人生を生きる猫がたどりついた先とは…。
たかが絵本とあなどるなかれ!すごく心を打つのです。あの1ページを開いたとき、
胸にグッとくるでしょう。何気なく立ち読みして(するなよ絵本を…)感動した一冊
「ちょっと早いけど僕の自叙伝です<改訂版>」 谷川浩司 ★★☆
---角川文庫・00年---

谷川浩司…将棋棋士である。史上最年少・わずか21歳で名人についた彼は今でも
将棋界の第一線で活躍している(03年現在41歳)。苛酷な世界で生きる彼の幼少時代、
名人になった後のスランプなどを振り返っていく。もともと89年の27歳の頃に書かれた
本に序章を加えて00年に文庫化された。・・・小説ではないし、劇的にではなくわりと淡々と
書いている。物足りないと言えば物足りないかも。テレビで見る谷川浩司が少しわかる本。
「ダンスがすんだ-猫の恋が終わるとき-」 フジモトマサル ★★★★
---新潮社・04年---

「きつそうな嘘つき、夜九時来るよ、男子らが泣きながら死んだ」
…これらは逆さから読んでも同じのいわゆる回文である。この本はただひたすら回文が
載っている本です。そして回文はイラストつきで「言い分全部言い→家内は田舎→離婚懲り」
という具合にストーリー形式になっていて、簡単に言うと回文でできた絵本みたいなものです。
回文も見事でつまんないミステリーよりこういった単純な言葉遊びのほうがよほど驚くなぁと
思いました。そしてイラストのストーリーも面白い。二足歩行する人間のような猫と
人間の医者との出会いの物語だが、ほろ苦い感じで切ないしイラストもいい味で少し笑える。
すぐ終わるのだが癖になって何度も読み返してしまいますね。

「つるつるの壺」 町田康 ★★★☆
---講談社・99年---

様々な雑誌等に掲載せられたエッセイを纏めた本であって、あらゆる悩みに適当に答える
「町田康の音楽相談室」やおかしな思考やロックについてや日々のことや小説の紹介などがある。
基本的にしょーもない内容であってその思考がまた面白くて「ふっふふ」などと笑いながら読んで
本の紹介の大半が関係ない話だったりしてまた「ふっふふ」。そして作者の頭脳が、喋り言葉となって
現れ出でるような文章はやっぱり癖になっており快感、ダラダラと読んで「ふっふふ」していたらば
いつの間にやら読了と相成り、あかんもう終わってもうたがな。気づけば時は深更、寝んならん、消灯して。
「人生を救え!」 町田康・いしいしんじ ★★★
---毎日新聞社・01年---

この本は前半と後半で内容が違う。前半は毎日新聞の日曜版で連載されていた町田康の人生相談を
集めたもので、読者からの悩み「酒を飲みすぎる」「男だがスカートがはきたい」「隣がうるさい」などに対して
町田さんが人間とはこういった生物であり云々と、いかにも真面目そうな感じでその実はいつものように
適当でふざけた答えだったりする。時に的を射ている答えもあるが基本的には「うひゃ」とか言って楽しく読めた。

後半は作家・いしいしんじと町田さんの対談。その辺をぶらつきながら喋っていてそれが本になっているのだが
こちらは退屈だった。何故かと言うと町田さんは文章で想像しうる奇天烈な人物では全然ないのであって
いしいさんも童話風小説を執筆するような「身体は大人・頭脳は子供」といった奇妙な人物ではないのであって
二人とも普通のオッサン。話の内容も面白くなく「ふわぁ〜あ」となってしまい、あぁやはり作家というやつは
文章で表現しなくてはならず、会話ではとんとその奇天烈さが発揮されないのだなぁと感じてガックリした。
「猫にかまけて」 町田康 ★★★★★
---講談社・04年---

何と言いますか…ドツボなんである。町田家の猫四匹について書かれているのだが実に魅力的。
猫の鳴き声を人語に訳したり猫を観察したりする目線はまさに猫好きのそれであって、飼っているの
ではなく一緒に暮らしているのだ。友達なのだと言いたくなる感覚がよく伝わる。四匹の性格や癖の違いも
面白いしとても身近に感じられる。困った行動も可愛らしいし猫好きには思い当たる節が多々あって
猫好きのツボを次々と刺激されて爆笑&ニヤニヤ笑いしてしまうのである。さらに作者の文がまた面白い。
柱に飛びつく「サルーン」や猫視眈々などの表現や猫語の翻訳も笑える。小説より癖も少なく読みやすい。

そして病気の猫が死んでしまう時をしっかり綴ってもいてこれが泣ける。日に日に弱っていって遊べなくなる
様子は泣けてしまう。我が家でも障害猫をはじめ何匹も看病して最期を迎えているのだがその時の
悲しさや無念の想いが作者と重なって「うぐ〜(泣)」となってしまった。作者と同じく幸せだった思う反面
もっとできることがあったのではと毎回感じてしまうことを思い出した。泣けて公共の場じゃ読めん本である。
日常が面白くて笑えて別れは泣ける…共感どころ満載であったが、その根底には作者の猫への家族愛が
ひしひしと伝わってくるのである。町田文と猫好きには超〜〜オススメしたい!あとがきまですごく良いぞ。
「猫のあしあと」 町田康 ★★★★★
---講談社・07年---

「猫にかまけて」第二弾。飼い猫の写真などを見せてカワイイでしょ〜と自慢されるだけならば
「ははぁん」で終わるけれども町田さんは前作から登場のゲンゾーや奈々を兄弟のように思っていることが
文面から伝わるので真の猫好きにもすごく共感できる内容です。「猫の命は預かり物だから粗略にせず、
寿命が短い彼らが人生を全うするのに何ができるかを考える」という言葉通りであって、路上猫を
引き取って面倒見たりしている。そこまでやるかという猫愛になっていて驚きだ。身勝手な人間を
憂いているような節もあり、とてもあの奇天烈な小説を書いた人物とは思えんのである。好感度大だ。
人間不信のウメチャンや死にかけの黒猫エルなどますます町田家には猫が増えているけどやっぱり古参の
ゲンゾーや奈々との息の合った生活がすごく楽しげだ。生活の一部になってるってこうだよなって共感する。
しかし終わる時もやってくる。失って思い出す町田さんのゲンゾーとの思い出がまた泣けてしょうがない。
誰にも好かれる気のいい猫で、子猫だった奈々に殴られても我慢していたり…。「ずっとゲンゾーと
一緒だった。ともだちだった」というのが泣けますね。うちにもそんなのがいましたからね。
本書も写真がちらほら。やんちゃっぽい奈々やマヌケなニゴ、ゲンゾーの気の良さがわかるいい写真だ。
「ネコの住所録」 群ようこ ★★★★
---文藝春秋・93年---

周りにいっぱいいる動物達について書かれたもの。作者の昔の話などを交えての話。
動物好きなら「わかるなぁ」といった動物の行動や、動物好きの人間の話など笑えるエッセイでした。
「ブタ夫」と名付けたふてぶてしい猫、「ガス人間第一号」という名をつけられた犬、ちょっとHな猿など
個性的なキャラ続出で大受け。特に猫好きの人は面白いでしょう。小さな話が39編。
ちょっとずつ読むのが良いですね。
「猫と海鞘(ほや)」 群ようこ ★★☆
---文藝春秋・95年---

作者の日常のことを軽〜く話すエッセイ。誰かの適当な話を気を抜いて
ダラダラ読みたい時に群ようこのエッセイは良いな。個人的に「ネコの住所録」の方が好き。
タイトルと内容は特に関係なし。世代の差を感じる話がいくつかあったな…。
「またたび回覧板」 群ようこ ★★★
---新潮社・96年---

また作者が日常のことをダラダラ話すエッセイ。今回は一編が短くて65編ある。
作者の本当に身近な話。どうでもいいと言えばそうだがヒマな時にチマチマ読んでしまうのだ。
適当に読めるおばちゃんの世間話、としか言いようがないんです。ヒマつぶしにどうぞ〜