Kaorin'sBookDiary1999


・1999.8.10
”顔に降るかかる雨”桐野夏生 講談社文庫
作者は”柔らかな頬”で今年の直木賞を受賞。
この作品は第39回江戸川乱歩賞を受賞しました。

二転三転する展開にハラハラドキドキ。
文章の堅さも処女作”OUT”ほどでもなくて
あっというまに読めました。
屍体の描写がちょっと恐いです。

・1999.8.6
”みんないってしまう”山本文緒 角川文庫
いろんなことをのりこえて本当の自分に出会う。
その道は切なくてちょっとかなしい。
山本文緒の短編は甘酸っぱいレモンソーダみたいです。
でも読みおえるとすっきりとした妙な爽快感があるんです。

・1999.8.4
”永遠の仔 上・下”天童荒太 幻冬社
下諏訪の図書館で借りました。

1996年の山本周五郎賞受賞から3年、久々の作品です。
幼いころに受けた様々な心の傷を抱えた3人の再会と
その後の度重なる殺人事件。
物語は意外な顛末に向いますがじっくり読めました。

育児新米の私はこういう本を読むと子供の育て方って
本当に難しいものだとしみじみします。
実際にこれは小説なんだから深刻にならないようにと
自分にいいきかせるのですが。

”これを達成すれば自分の中のなにかがかわる”という気持ちは
誰にでもあるものだけれど、実際に自分のなにかが変わるということは
とても大変なことだと思います。
その中にも変わらないものはいったいなんなのか??
そんなことをこの本を読んで思いました。

・1999.7.20
”さくら日和”さくらももこ 集英社
本屋でつい手にとって買ってしました。(^.^;)

作者は私生活の離婚の報告からはじまって
(この報告がきっぱりしていてよかったです)
息子が自分をさくらももこではないかと疑っていることなどを
軽妙に書いています。

ももこ節健在というかんじです。

・1999.7.15
”草原の椅子”宮本輝 毎日新聞社
下諏訪の図書館で借りました。
久々に人間についてよくかかれてある本に出会いました。

作者はあとがきで今の”日本”には”おとな”がいなくなった。
だから”おとな”という人間を、幾多の経験を積み、人を許すことが
でき、言ってはならないことは決して口にせず、人間のふるまいを
知悉していて、品性とユーモアと忍耐力を持つ偉大な楽天家でもある
として、”おとな”を描きたかったとしています。
確かにこの作品で作者の目的は果たされていると思います。
そしてそれ以上にこの文章には作者の汗と時間が
しみこんでいると私は感じました。

時間をおいてまた何度も読みたい本ができました。

・1999.7.10
”スプートニクの恋人”村上春樹 講談社
a weird love story
とても奇妙な、ミステリアスな、この世のものとは思えない
恋の物語です。
ノルウェーの森ほど重くはないけれど、読後いったい主人公は
どうなったのかなあと考えさせられる本でした。

題名のスプートニクは旧ソ連の打ち上げた世界初の人工衛星で
宇宙空間にでた最初の生物(ライカ犬)をのせたスプートニク2号は
回収されず宇宙における生物研究の犠牲になったとのこと。

このことからどうもロケットの窓から犬が宇宙を眺めている
妙な光景がうかんでしまうのです。(^.^;)
この本は購入しました。(笑)

・1999.7.7
”秘密”東野圭吾 文芸春秋
下諏訪の図書館で借りた1冊です。

バス事故に妻と娘が巻き込まれ、妻が亡くなり娘を男手一つで
育てることになった父親の話です。
ミステリー作家の著者がこういうタイプのものを書いたのは
初めてではないでしょうか。

ともかく読んでみるとぐぐーっと引き込まれます。

父親のせつなさと妻を愛する男性としての優しさに
ラストは涙がでちゃいました。
この本はおすすめです。


・1999.6.20
”恋愛中毒”山本文緒 角川書店
育児と引越しに疲れて主人に当り散らしていたら
”一人で気晴らししてこい”と言われてふらふら入った
本屋で衝動買いした本がこの本です。(^-^;ゞ

ストーカーという言葉がよく聞かれるようになりましたが
この物語もそういう悲しい女性の恋愛の物語です。
読み方によってはホラー的に読めるものかもしれません。

なにかにとりつかれたようになってしまう瞬間が
人生の中には幾度かあるのかなあとしみじみしました。

1度読み終えてから何度がこの本を読み返しました。
主人公は人を愛することが中毒になることを知っていて
それでもなお愛することがとめられない。
とても切ない気持ちになりました。
かめばかむほど味がでるじゃないけど
読み返しがいのある本です。

・1999.6.1
”誤診”松山善三 潮文庫
引越しの片づけで大学のとき読んでいた本がでてきました。
こういうときどうも手をとめて本にのめりこんでしまうのは
現実逃避でしょうか??(笑)

この本は若い眼科医が自分の誤診から少女の眼球摘出をし
そのつぐないにむかっていく物語です。
眼球摘出された少女が”おめめはまたはえてくるの”と言う
言葉に胸をうたれました。

医療現場のミスが時折報道されますが、人間ですからなんらかの
過ちはあると私は思います。ただその過ちを二度とくり返さない
努力と真摯な姿勢がとても大切だと思うのです。

・1999.3.10
”きみのためにできること”村山由佳 集英社文庫
この文庫版の解説者は”パラサイト・イブ”の瀬名秀明でした。
瀬名秀明はホラーやSFに分類される小説を書いているので
彼が村上由佳の熱心な読者というのは驚きでした。
というのは村上由佳の作品は主に恋愛小説だから。

彼女の作品は読む度に感じ方が違う不思議なもので
とても共感できるものがあります。
パソコンで電子メールをやりとりする主人公たち。
人を思う切ない気持ちを忘れたくないなあと思わせてくれる
作品でした。

・1999.2.16
”クロスファイア”宮部みゆき カッパノベルズ
昨年出版した”理由”が今年の直木賞を受賞してますます油がのっている
感じの宮部みゆきです。
彼女のすごいところは推理・時代もの・超能力ものといったジャンルを
すべてあの丹念な取材構成と文章で書き上げていくところです。

今回の作品は超能力ものです。おなじくカッパノベルズの”鳩笛草”に
収録されている”燔祭(はんさい)”の主人公青木淳子のその後の物語。
この物語にはヒロインの痛切な哀しみがあふれています。
でもただのセンチメンタリズムではない。そこが宮部みゆきです。

この作品を読んで”実際可能でも常識からそういう行動はしない”という
ことが日常生活にどれだけあるだろうと考えました。
食べ物に毒物をいれる犯罪やインターネットによる毒物の犯罪など
昨年から今年にかけてあったいろいろな犯罪の多くはそういう
”普通はしない”という一線を超えてしまった人の犯罪だと
私は思います。

”可能なことでもやらない”ということは誰にでもあるんですよね。

・1999.2.13
”天国までの百マイル”浅田次郎 朝日新聞社
読むとかならず大泣きしちゃう浅田次郎の作品です。(^.^)
今回もしっかり泣きました。

無償の愛を聖母マリアのように安男に注ぐ女性マリ。
どうしようもなく不器用な安男。
いろんな過去と現在とこれからの未来が交差して
とても素敵な物語となっています。

この本にでてくる”500 MILES”by HEDY WESTを
一度聞きたいと思いました。

・1999.2.11
”太郎物語−大学編−”曽野綾子 新潮文庫
下記の”太郎&太一物語”を読了後、やはりどうしてももう一度
読まなくちゃいけないと久々に手にとりました。
この本は私が高校・大学時代に愛読書でした。
雰囲気としては山田詠美”ぼくは勉強ができない”風です。

三浦朱門と曽野綾子のこども、太郎の物語です。
こういったすてきな男の子を育てられるようになりたいと
当時思ったことを思い出しました。

・1999.2.10
”太郎&太一物語”三浦太郎 女子パウロ会
図書館から”リクエストの本きましたのでとりにきてください”と
電話があって図書館へいって意外な本を見つけました。
それがこの本です。

私が高校・大学時代に愛読書だった”太郎物語−高校編−”と
”太郎物語−大学編−”の主人公のモデルだった・・・
その人が書いた本です。(^.^)

曽野綾子の作品との出会いはけっこうまぬけで
高校の時に”氷点”(三浦綾子著)を読んでこの作者の作品を
もっと読もうとしていて、作者名をどう勘違いしたか
私は三浦綾子の本を選んだつもりで曽野綾子の本を選び・・・
上記にも書いた”太郎物語−大学編−”と出会いました。
”ずいぶん作風がちがうなあ”と思いつつ作品に
ひきずりこまれて読了後、自分のおろかでちょっと
すてきな間違いに気付いたのでした。
まったく共通点がないわけでもなく、三浦綾子も曽野綾子も
キリスト教をベースにした作品を書いています。

で、この本ですが・・・その後の太郎の物語としても
読めてとてもよかったです。大学生だった太郎も一人の
男の子の親となり、その変化も十分楽しめました。
なんだか古い友人に会ったような気分になった1冊です。

・1999.2.9
”母にむつきをあてるとき 介護 闘いの日々
舛添要一 中央公論社
お昼のニュースで舛添要一が東京都知事選挙に出馬と言っていました。
”うーん、遂にそういうことになったか〜”と私は妙に納得しました。

この本は以前に一度読んでもう一度読んだ本です。
題名の”むつき”は本当は漢字ですが変換ででてこないので
かたかなのままです。

舛添要一というと国際政治学者として”朝まで討論会”や
”たけしのTVタックル”などでけっこうきついイメージの
論客といった感じでした。

その彼が自分の母親の介護をしていた経験を1冊の本にまとめたもので
とてもよく書かれています。わかりやすい日本語でテレビでの憎らしい
口調がなんだか全然でていないものです。

年令による痴呆とその介護はこれからどんどんでてくるでしょう。
それをどうのりきるか考えさせられる1冊です。

・1999.1.30
”赤ちゃんを愛せない マタニティ・ブルーをのりこえる12章
カレン・R・クレイマン+ヴァレリー・D・ラスキン/著
村本邦子+山口知子/訳
創元社
まだまだと思っていた妊娠生活ももう32Wで今週で9ヶ月。
出産もあと2ヶ月後となりました。
ときどき気になって手にとっていたのですが思い切って
読んでみようと図書館で借りました。
こういった本を読むと・・・ひどいマタニティブルーになりそうと
思ったりもしますが、気になって読まないよりはいいか〜という感じです。

主人の親友の奥さんもかなりひどいマタニティブルーになって
数年間苦しんだということもあり、(この奥さんは私の遠い親戚
だったりする)これはとても気になることです。

いわゆるハウツー本的なチェック項目もあり、アメリカの例だけど
こういう状況と言うことも書いてあるので参考になりました。

マタニティブルーという病気なんだという認識が大事のようです。
それでどうしようもないと思ったら病院へ行くこと。
気になったら読んでみていい本だと思います。

・1999.1.17
”おとこののこのこ”塩森恵子 講談社
漫画家の塩崎恵子の育児エッセーです。
彼女は結婚し男の子4児の母となっていました。
しかも双子もいる・・・。

彼女のめいいっぱい青春漫画的なマンガを読んでいたので
なんとなくイメージがわかなかったのですが、母になっていく
感覚がとても共感できました。

タイトルは”男の子がのこのこいる”ということのようですよ。(^O^)

・1999.1.15
”節約生活のススメ”山崎えり子 飛鳥新社
年末くらいから参考になるよと言われて・・・
でも1400円かあと躊躇していた本です。

でも実際購入して読んでみるとこれは参考になる!!と素直に思いました。
確かに夫婦二人の生活ならでは節約方法もありますが・・・
ここので考え方をシンプルにすれば子どもがいても節約がある程度
可能だろうと思わせるすごさがあります。

まずは部屋の片づけが当面の課題のかおりんです。

・1999.1.8
”錦繍”宮本輝 新潮社
新年早々に読みはじめた一冊です。
大学生になってから読んだのですがそれ以来時々無性に読みたくなります。

往復書簡形式の珍しい形式です。
一度別れた夫婦。また新たな出発のためのきっかけをつくる別れ。
しっかり読める文章の充実の一冊です。