深町正が中学時代から書き溜めた詩と小説を載せてます

第一章・覚醒


 「あ ありました!」
苔むした大きな石塚の下を掘って、覗き込んだ、崔英学院日本古代史研究所の学生、樫 唖貴雄はしゃがんだまま後
方にいた白髪混じりの初老の男を振り返り、叫んだ。
 期待と確信を入り雑ぜた輝きの瞳と表情で、唖貴雄は白髪混じりの初老の男の指示を待つ。
 白髪混じりの初老の男は静かにうなずくと唖貴雄の横にしゃがんだ。
石塚の下を探っていた両手に抱え込まれた古そうな桐の箱を、そこから慎重に引き出しあらかじめそばに広げていた
白い布の上に静かに置いた。
その様子を20人程の同じ崔英学院日本古代史研究所の学生が、周囲から固唾を呑んで見守る。
「ふぅーっ」と大きく息を吐き出した後、一瞬安堵の表情を浮かべすぐにまじめ腐った顔を、ビデオカメラを構えている一
人の学生に向けた。
「剣、今日はテープ、入ってるんだろうなっ!」
ファインダーを覗く剣 英雄は顔を仰け反らせながらも、カメラは微動だにさせなかった。
英雄は撮影を継続しなから肩をすくめた。



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