深町正が中学時代から書き溜めた詩と小説を載せてます
005 丘の上の樹
丘の上の樹
丘の上に一本の樹がもう百年も根をおろしている
まい年春になれば花が咲き
夏になればせみの声がきこえ
秋になれば赤い枯葉が舞い散り
冬になれば雪にうまる
その樹は百年もの間丘の上から町を見下ろしている
僕のおじいさんが生まれた時は
ちょうどあの樹でせみがないていたそうだ
僕のお父さんがよくあの樹の下で
遊んだり樹のぼりしたりしたそうだ
僕の小さい頃は春になれば
いつもその丘でつくしをとったり
すみれをつんだりした
僕は大きくなって自分の道を
歩くようになった今
ちがう町にくらしているが
ときどきあの丘の上の樹のことを思い出す
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