徒歩の旅は二日目を迎えた。今日は白滝から丸瀬布まで(いずれも遠軽町)のおよそ20キロの旅だ。昨日に比べればずいぶん緩い。日焼けにだけは気をつけ、日焼け止めと帽子でしっかりUVガードする。
朝7時頃起床し、朝食を食べてから、取るものも取りあえず7時半頃出発。出発時に白滝グランドホテルからスタンプカードをいただく。1泊するごとにスタンプが1個押され、10個たまると次回の宿泊が無料になるという、嫌がらせに近いようなスタンプカードだ。こんなものためることができるのだろうか。当然今後泊まることはないと思われるので、すぐにゴミ箱に捨てられたのだった。
まずは、白滝の中心部にやってきた。天気は実にいい。自転車の小学生が、わたしに「おはようございます」と声をかけてきてくれた。ほほえましい。田舎の子はしつけがしっかりできているという印象がある。この白滝という共同体が狭いから、年配の人と接することが多いのだろう。そうなると必然的にしつけも学ぶことになる。かつての白滝村は北海道で2番目に人口の少ない村だったのだから(一番少ないのはもちろん音威子府村)村民同士のつながりも強かったのだろう。車から小学生に声をかけるおじさんも見た。不審者なんかとは無縁の世界。これぞ理想の世界ですね。
白滝駅を訪れる。白滝の中心駅であるが、無人駅となっている。駅のホームから山の自然が見渡せる素敵な駅。
駅前の自動販売機でアクエリアスを購入。汗をかいた身体にはアクエリアスのようなアイソトニック飲料がふさわしい。個人的にはポカリスエットよりアクエリアスの方が好きだ。
遠軽町役場白滝総合支所。自然に囲まれた田舎町の中にある実に立派な建物。特に中に入るということはせず、通過のみ。
白滝の中心部を過ぎると、すぐに田舎道が続く。ひたすらまっすぐの道。
しばらく行くと旧白滝集落に到着。その名のとおり、かつての白滝の中心であったところから「旧」を冠しているらしい。
その旧白滝駅。ホームに木造の待合室がある小さい駅である。JRの駅の中で、「新」とつく駅は数あれど、唯一「旧」とつく珍しい駅名の駅なので訪れたかったのだが、何やら作業中の様子。 ホームの土を掘っているような感じだったので、邪魔をしては悪いと思い、訪問することなく先を急いだ。
しばらく歩くと、4キロほどで今度は下白滝駅が見えてきた。相変わらず周囲は緑溢れるど田舎だが、駅前には牛舎があり、人も働いていた。駅前に犬がいて吠えてきたのにはびっくりしたが(鎖につながれていなかった)、襲われることはなく、駅舎に入ることができた。
立派に創られた木造駅舎は風格を感じる。ゆっくり休憩する。
下白滝駅前。駅前にはすさまじい廃屋がある。
歩道のある国道を歩いていくとトンネル登場。当然トンネルの中を通過しなくてはならない。この旅の中で何度かトンネルの内部を歩いたが、トンネルの中は音が増幅されるのでかなり怖い。 軽自動車の接近に恐怖を覚えるなんて滅多にない。トラックなんかが近づいてきたら恐ろしい。 かなり遠くからでも音が聞こえ、いつまで経っても車は現れず、耳をつんざくばかりの轟音が聞こえ始めてきたころにトラックが現れるのだ。これは怖い。
相変わらず何も人工物のない自然溢れる景色が続く。疲れはあるものの、あまり苦にはならない。
よく小説家や漫画家は、登場人物の性格や設定を決めると勝手に動き出すというが、旅行記もそんな感じだ。地図を見ながら旅のことを思い起こすと文章が頭の中に浮かんでくる。不思議なものだ。もちろん、旅行作家や文学者のように気のきいた文学的な言い回しなどを使用する文才がないので、浮かんでくる文章も、所詮“この程度”であるが。
道の駅まるせっぷにやってきた。周囲はそこそこの集落。昼を少し過ぎたぐらいだったので、道の駅で昼食。みそラーメンを食す。
食事をして休憩し、丸瀬布駅に到着。丸瀬布駅は交流館と一体化したなかなかの駅舎。まだ時間は3時であるが、事前に調べておいた駅前の旅館に電話をし、空いているかどうかを確認するが、なぜか留守電。旅館で留守電はねーだろ。面倒くさいので特にメッセージは残さず。
仕方ないので、丸瀬布駅ホームの待合室で横になって休憩。時間はたっぷりあるので横になってゆっくりできた。足に優しい時間を過ごした。
休んでいると、携帯電話に着信が入った。旅館からだった。オバチャンからの電話で、どうやら買い物か何かで留守にしていたようだ。とりあえず旅館は空いているとのことでほっとする。
この旅館に訪れたところ、電話中のオバチャンが出迎えてくれた。オバチャンは当たり前のように電話を続けながら、わたしを部屋へと案内してくれた。宿帳への記入もせずにである。大丈夫なのだろうか。
後でオバチャンに「宿帳への記入とか受付はしなくていいんですか?」と訊ねてみたが、「顔を覚えているから、それが受付になるから大丈夫」との返事。いやいや、大丈夫じゃねーだろ。
このオバチャンは気さくな人だったので、いろいろ話しかけてくれた。歩いて旅をしているといってもそれほど驚かなかったのが意外だった。わたしのように歩いて旅をする人が珍しくないのか、それとも歩くことの大変さに頭が回らないのか。おそらく前者であろう。
「1時間で6キロぐらい歩くのかな?」とオバチャン。
「3〜4キロぐらいですかね?」
「それは遅いね」
こういうやりとりをした。確かに昔の旅人や軍隊の進軍は1時間6キロぐらいのペースだったらしいが、今の交通機関が発達した時代の若者がそんな早く歩けるわけがない。やはりこのオバチャンは後者だったか。
この日の歩行距離はそれほどでもなかったので、夕食と明日の朝食もここでとることにした。
さて、この日の歩行歩数を確認しようと思ったのだが、万歩計をポケットに入れていたら、よくわからないがリセットがかかったらしく、数値が0になっていた。多分3万歩ぐらいは歩いたと思うんだが。
なんにせよ、自分の歩いた記録が途切れたような気がして、とてもショッキングな出来事であった。ショーーーーック!!!