蔵書紹介

ここは、アンタッチャブル図書館に所蔵されている本のうち、館長のオススメの本を紹介するページです。何冊か本を読んでいるが、おもしろい本に出会える確率は非常に低い。読んでいる最中はそこそこ面白くても、読了後も心に残る作品などは限られている。こういうおもしろい本ばかりなら、人生楽しいだろうなあ、って思ってこの蔵書紹介をさせていただきます。みなさんもたまには本を手にとって読んでみてください。きっと心に残る素晴らしい本に出会えるはずです。


6.『秘境駅へ行こう!』、『もっと秘境駅へ行こう!』/牛山隆信
もともと鉄道には興味があった。旅をするならJRを使ってというのが定番だったわたしが、偶然書店で手に取ったこの本に魅せられたのだった。世の中には、「なぜこんなところに駅が?」という駅が多数存在する。この本はそういった駅をたくさん紹介している。この本を読んで以降、そういった駅に立ち寄ったりするようになった。長閑で静かな時間を堪能でき、なんともいえない時間を味わうことができた。しかし、この本に掲載されている駅のうち、上雄信内駅はすでに廃止。智東、張碓も近く廃止される。秘境の駅は常に廃止と隣り合わせなのである。なんにせよ、駅という小さな建物に刻まれた様々な歴史、周辺住民の生活と願い、鉄道にかける希望など様々なものを感じ取ることができるはず。ただ、惜しまれるのは、作者がただの一般人であるということで、文章力がイマイチなことである。旅行作家が書けばもっと秀逸な内容になっていたかもしれないね。


5.『家族八景』、『七瀬ふたたび』、『エディプスの恋人』/筒井康隆
相川七瀬のファンだったころに読んだ、筒井康隆の七瀬三部作。氏の作品はかなり個性的で、作家の中では独自の世界を歩んでいる感じがする。田中芳樹氏には、名言や言い回しに魅せられ、筒井康隆氏にはセンスに魅せられるという感じ。どちらも大好きな作家さんです。さて、このシリーズですが、『家族八景』は、テレパシーが使える美貌の超能力者・火田七瀬が、それによって他人の心の中を覗きこむことでストーリーが進む。とにかくいろんな感情乱れうちという感じで、生々しい。『七瀬ふたたび』は、同じ超能力者の仲間が集い、組織に狙われるというよくあるタイプのストーリー。おもしろいし、エンディングは泣いた。『エディプスの恋人』は、ちょっと挑戦的すぎるかな? あまりに飛躍しすぎた内容と展開、文章構成だったので、前2作に比べてわたしとしてはいまいちだったかもしれない。でも、好きな人は好きだと思うので是非。


4.『死神くん』/えんどコイチ
なぜか漫画をご紹介。えんどコイチといえば、同時期に連載していた『ついでにとんちんかん』のおバカ感の方が印象的でギャグ漫画家としての印象が強いが、この『死神くん』もなかなかに見逃せない。内容は一話完結型のヒューマンドラマ。今ではあまりはやらないタイプの作品だが、それだけに実によくできた内容にもなっている。絵柄はギャグ絵柄なのだが、なぜかホロリと泣かせる。死神ということで、死を扱う漫画だから、必然的に死に向き合うシーンが多い。そういうシーンを通じて、人が強くなっていく、変わっていくという姿が感動を誘うのだ。おそらくえんど氏の漫画家生命がすべてここに凝結しているといってもいいので一度は読んで欲しい。そして泣いて欲しい。


3.『銀扇座事件』/太田忠司
少年探偵狩野俊介シリーズの一つ。小学生でも読めるような平易な文で、オチもなんかつまらなかったりするものが多いのだが、シリーズを通して読んでいる人が、この作品を読んだときの衝撃はきっと大きいと思う。これまでは一冊完結だったのに、なぜかこの作品だけ上巻と下巻に分けたというのは、内容を見れば納得のいくほどの挑戦性だった。なかなかによい。でも、最初に読んだときの素直な感想は、「これは反則だ!」という一言に尽きる。いきなりこのシリーズを読むのではなく、他のシリーズを何作か読んでからこのシリーズにチャレンジするといい。どうせすぐ読めるのだから。


2.『十角館の殺人』/綾辻行人
ミステリーの中で、何が一番面白かったかといえば、やっぱりこれではないでしょうか。これだけは正直ネタバレしたくてしょうがありません。でも、読んでいない方もきっといらっしゃると思うので、ここではネタバレしませんけど。まあ、おおまかに内容を言うと、孤島にいったミステリー研究会の面々と、本土にいる二人の青年とのやりとりで場面がころころ変わりながらストーリーが進んで行き、孤島では次々と殺人事件が起こるというもの。とにかく最後のオチを聞いたときには「やられた」と思った作品。なるほど、あいつが○○だったのは、××が○○だと気づかれないようにするためだったのか! □□と○○を対比させていたのも、なまじ知識があるだけにうまいひっかけだったなあ、ってここまで言うと結構ヒントになってるか? あともう一つ、この作品を映像化するのはまず無理。これも結構謎解きの大きなヒントかも。気になった人はまあ読んでみてちょうだいな。


1.『夏の魔術』、『窓辺には夜の歌』、『白い迷宮』、『春の魔術』/田中芳樹
おすすめの本は何かと言われれば、真っ先にこれを挙げるというぐらいに好きなシリーズ。主人公の能戸耕平君が19歳、来夢(らいむ)ちゃんが12歳と、ロリコン小説っぽいが、けっこういい組み合わせなんだよね、これが。内容はホラーなのだが、決して怖くはないところがいい。なんといってもわたしのツボをくすぐるのが、無人駅のホームで列車の到着を待っているというオープニングシーン。この日常感の中に、壮大な冒険の始まりを感じるのはわたしだけでしょうか? ちょうどこの本を初めて読んだのが大学1年のときだったんで、余計に感情移入できたのかも。ところどころにある、田中芳樹特有のひねくれた台詞や名言なども見逃せない。4冊で完結のシリーズだが、やはり第一作『夏の魔術』が最もよい。『窓辺には夜の歌』もまずまず。だが、後の二作はちょっとだれてきた感は否めない。でもやはり田中氏の物語を生み出す力は素晴らしいと思うよ。伊達に遅筆ではない。とにかく四の五の言わずに読むべし。

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