ねぇ、知ってる?
この学園って普通じゃないんだって。
ねぇ、知ってる?
この学園が出来た理由を…
ねぇ、あなたは真実を知ってるの?
BAG GAME
〜プロローグ〜
すっかり日が落ちたある日の夕方。
薄暗い部屋の中で男は目の前で書類に目を通す主人に近づく。
「理事長…例の物の配布が終了いたしました。」
そして、事務的に告げられる言葉。
その一見冷たくも聞こえる言葉にも主人は怒ることなく、書類に目を向けたまま不適に笑う。
「そうか…では、あとは彼らがアクセスをするのを待つだけだな…」
「はい…ですが…本当に彼らでよろしかったのですか?」
しかし、男の方は今回の一件で不安があるらしい。
その歯切れの悪い言い方に主人はやっと書類から目を離すと心外だと眉をひそめる。
「ん?何か問題があるのか?」
「…ありますよ…この対象者のほとんどはまだ学生の子供ではありませんか。」
そんな主人に呆れたようにため息をつく男の手には今回の計画の対象者のデーター。
その対象者は教師や生徒などの学園関係者且つ…どこにでもいる一般市民たちばかり…
それに今のところ計画への参加が決定している対象者は皆年端も行かない学生ばかりで中には小学生までいる。
「いくらハッキングに影響されないといっても『バグ』を相手にするのは危険です。」
最近世間を賑わせているあるゲーム。
それは魔法と科学を組み合わせ人間自体を仮想空間に送り実際にプレーするというもの。
仮想空間プログラムと呼ばれるそれは普通に使う分には何の問題もないのだが、それを悪用するものが出てきた。
プログラムに不正にアクセスし、バクを送り込む彼らはバグハッカーと呼ばれ、検挙は困難を極めた為に政府はある決断をする…それは…
バグハッカー専門の人間養成する機関…つまりバグハッカー専門の探偵学校。
それがこの主人が理事長を勤めるこの”四葉学園”である。
「だが、適性検査の結果。ハッキングに抵抗力を持っているのは今のところ彼らしか確認されていないだろう?」
「ですが。もしも、中で何かが起こった場合はどうなさるおつもりですか?そこは、仮想空間なのですよ?」
人間自体を取り込むこのプラグラムはハッキングを受けたさいにプレーヤー自身も影響を受ける。
故に元凶のバクを捕まえようにも抵抗力のないものが入るとプログラムに取り込まれ、文字通り”ミイラ取りがミイラ”になってしまう。
その為にプログラムに抵抗力を持つものを必要とするのだが、そこは現実と切り離された空間。
何かあった時に子供だけで対処できるか不安があると言う男に主人は笑う。
「…子供が無力だと誰が決めた?それとも俺の目が信じられないのか?」
何処か無邪気に笑う姿は告げる声の冷たさと相反して恐ろしい。
笑みを作る表情とは別に笑っていない瞳は彼の自信が伺われて…
「…申し訳ありません。愚問でした。」
もう自分の言えるべき言葉はない。
そんな主人に男は溜息を一つ吐き、話を終えるとそれがたいそうお気に召したらしい主人はさっきとは打って変わり楽しげに笑った。
「そうかい…やはり君は賢いね。それは君の美徳だ。大切にするといい。」
「…お戯れを…では、失礼いたします。」
何処か喰えない笑顔を言葉で交わし、一つお辞儀をして部屋から出て行く男。
その後姿を見送り、離れていく靴音を聞きながら主人は苦笑する。
「…本当に喰えない子だねぇ?…でも、だからこそ君を選んだんだけどね…」
そして、傍にあるパソコンを見れば”アクセス”の文字
どうやら対象者がアクセスしてきたようだ。
「さぁ、これから忙しくなりそうだねぇ?」
誰も聞いていない小さな呟き。
それは、静かな部屋の中で静かに消えた…
Mission Stert…
Back.
*アトガキ*
プロローグですが…なんでこんなにブラックなんでしょう?
理事長様をお出ししつつ…謎感を出そうとしたんですが…謎過ぎです。
本当に微妙…さらにこれのSecret Cloverバージョンもあるんですが、そっちは両方とも女性になります。
…ただ、内容がちょっと変わってるだけで雰囲気は一緒です。
でも、中身は大半がギャグだと思いますのでお間違えのないようにお願いします。
2003/08/16