どうして私はあなたじゃなくて、
どうしてあなたは私じゃないの?
もし私があなたなら、あの人の事を、振り向かせる事ができるのに。
『運命のいたずら〜見守ってくれた人〜』
「沙織。あなたはまだ行かないの?」
「伊織。。私はまだ、行かないよ。先に行っていいから。」
私は姉の伊織にそう告げて、先に学校に向かってもらった。
そして10分後、私も家を出る。
どうして一緒に出ないのか?それは私が…
「おはよう。伊織!」
「え?」
振り向くとそこには私と伊織と同じクラスの女の子。
「あ。ごめんなさ〜い。伊織は?」
「先に、行きました。」
「ありがとう!」
そう言って笑顔の可愛い(裏は黒いらしい)と評判な伊織のクラスの女の子は行ってしまった。
「ふ〜。」
「朝からため息ついてどうした?」
「え。」
「っと、沙織。おはよう。」
少し考えて私に返事をしてくれたのは、私と伊織と同じクラスの男の子。
「おはよ。伊織なら、もう行ったよ。」
結局皆、伊織。
「?どうして伊織の話になるんだ?」
「…違うならいいの。ねぇ、どうして私と伊織がわかるの?」
だって、私と伊織は、、
「え・・・なんとなく?」
私と、伊織は・・双子。
同じ日に産まれて、同じように生きてきて、着る物は違ったけど。
でもね、双子で顔が似ていても、私と伊織はぜんぜん違う。
伊織は皆の人気者。そして私は・・・って感じ。
みんな学校では私と伊織を区別。
違いは・・髪型とか、いろいろ。
髪は私が長くて、伊織は短い。
背と体重は一緒。
制服の名札。
あとは、性格。
まぁそんなわけで、私の顔を見ても、あまりわからない。
廊下で私を見かけると、皆がバッジを見て、伊織じゃないことを知ると、綺麗に無視。
でも彼はなぜかバッチを見ないでわかったのよね。
伊織もそんな感じで私を見ている。
皆が伊織。私はいらないの。
だけど5人だけ、私達を区別しない人がいる。
一人目は、私の親友の間宮菜緒子(まみや なおこ)ちゃん。明るくて、可愛くて、彼氏もいる。
二人目が菜緒子ちゃんの彼氏。篠塚直己(しのづか なおき)くん。
そして三人目が、部活の先輩、谷河暁(たにかわ さとし)さん。
4人目が、同じクラスメートの今西毅(いまにし たけし)くん。
そして最後の5人目が、今私に話しかけてくれた、龍河樹(りゅうかわ いつき)くん。
考えちゃいけないんだよ。同じだけど、違う事。
考えちゃいけないんだよ。。この差を。。
「ぉり?沙織?」
「えっ?!」
パッと振り向いてしまう。
あ。
「樹くん。」
「え?」
「ん?どうしたの?龍河くん?」
危ないあぶない。
「今・・・」
「今?あっもう15分。遅刻する!じゃ私先に行くから!!」
「おいっ」
危なかった。
誰にも気づかれてはいけない。
心の中で何時も彼の事を、下の名前で呼んでいる事。
危なかった。だって伊織は…
学校ではとりあえず龍河君を避けまくる。
一瞬たりともコンタクトがあってはならない。
今日の総合学習(HR)の時間は、修学旅行の班決め。
4人から6人の班を作る。
「沙織!一緒になろうね!」
「菜緒子ちゃん!ありがとう!」
「直己〜。」
「んぁ?」
「何が“んぁ?”よ。ほら。早く!」
菜緒子ちゃんは、彼氏である彼を手招きする。
菜緒子ちゃんと篠塚君は、付き合ってもうかなりの年月がたつ。
「あと一人。男子誰にする?」
そう篠塚君は、私に聞いてきた。
「決めていいよ。私は誰でもいいから。」
「龍河君!」
私と同じ声が、彼の名前を楽しそうに呼ぶ。
「え?」
「一緒になろう!ね!」
「え。あ。あー。」
彼はうなづく。それをため息を付いて、篠塚君は見ていた。
じゃあ残ってるのは、きっと毅だけだな。そうつぶやいて、彼は毅君を、班に誘った。
「これでOKだね。」
そうして班は決まった。
「沙織さん?」
「ふぇ?」
「どうかした?」
「今西君・・別になんでもないよ?行く場所決めよう。」
「沙織さんは行きたい所ある?」
「行きたくない所ならあるよ。」
私が行きたくない所。それは私が行きたい場所。
そう休み時間に、伊織達の班から離れて話をしていると、彼らは不思議がった。
「伊織と何か似ちゃうから。でも伊織もそう思ってたら嫌だから、聞いて見るね。」
家に帰ってから伊織に聞こう。私はそう思った。
伊織なら、必ず私と同じ所に、同じ時間には、行きたがらないはずだから。
「と、いうわけ。どこに行くか、あとで教えて。」
「んーー。」
返事をすると伊織は携帯電話であの人の元へと電話をかける。
「あ。もしもし?龍河くん?!」
楽しそうに始まった。今日も。
龍河君と伊織の電話。
私は自分の部屋に入る。
ずるずると座りこむ。。
「双子だからって好きな人まで一緒じゃなくてもいいじゃん・・・」
でも、彼は必ず伊織を選ぶわ。
私には・わかる。
いくら自分の事を嫌っていても、
伊織は私の大切な姉。
あの事実が・・・本当だとしても、私は…何かがあったら、、彼女を守りたい。
小さい。本当に小さい私が、歩いている。
後ろから・・何かが。
押されて、崖の下へ
「きゃあ!」
私は体を起こした。
…夢…
全身汗びしょびしょだった。
「もう・・・いいのに、」
私はお風呂に入る。
服を脱ぎ、自分の体を凝視。
いたるところにある無数の古傷。
私は小さい頃誰かに崖の上から付きとばされた。
それは伊織がやったものだと、私は誰かから聞いた。
もちろん両親は知らない。
私はなんとなく伊織がやったものだとずっと思ってきていたから、その事実に驚く事は無かった。
事実私はあの事件以後、父と母から嫌われるように生きてきた。
私の事はかまわないで。何度そう言って両親を遠ざけただろう。
伊織が大切にされるように。
そう。私が目指したのは、両親が伊織を大切にするように生きる事。
それはまぎれもなく、私の命を守るため。
そしてその考えと行動は見事に成功した。
心から喜ぶと共に、私は悲しくもあった。
学校へ行って修学旅行の班ごとの自由コースを決めて提出。出来上がったコースを見ると、案の定私と伊織の班のコースは別物。
幸せだなぁって気分になる私。
それと同時に一度も彼に会えない事への悲しみ。
私の中にはたくさんの感情が渦巻いていた。
「よ〜。沙織。」
「あ、谷河先輩!?どうしたんですか?」
「明日から修学旅行だろ?」
そうなんです。まさに明日。ちなみにこの人は私の先輩。小学校からなぜかずっと一緒。
「どこ行くんだ?いいポイント教えてやるよ。京都が好きで結構調べてるし。」
「本当ですか!やった〜。私の行くのはこれです。」
と、言う事で私は谷河先輩に、オススメスポットを教えてもらった。
聴くたびに、楽しみだと思っていた。
私は谷河先輩と楽しく雑談をした後、家に向かっていた
「沙織」
「ぇ。龍河くん?どうしたの?」
「お前こそ。」
「?」
ちんぷんかんぷんな私。じっと彼を見ると、彼は静に口を開く。
「ずいぶん楽しそうだったな。谷河先輩と。」
「?うん。あ。はい。コレ。」
「?」
私は伊織のコースのいいポイントも聴いていたのだ。それを彼に差し出す。
「いいポイント教えてもらったの。あげる!」
私はそう言って向きを変えて歩き出した。
「ずっと逢えないな。修学旅行中。」
「ぇ」
彼は私に比較的大きな声でそう言う。
ダメだよ。沙織。押し込めて。
「…伊織がいるよ。」
そう言って、私は家へ走って帰った。
待ちにまった。修学旅行。
彼と逢えない、そんな旅行。
近くの駅で3人で待ち合わせをした。3人ってのは、私と、菜緒子ちゃんと、直己君。今西君は、知らない。とりあえず、私と菜緒子ちゃんが待ち合わせをして、必然的に直己君が一緒に行く事になった。
なにはともあれ集合して、私達は新幹線に乗る。
前にもあったな。そう。それは家族で旅行に行った時。
そして
私が伊織を疑い始めてから3年近くたった時だった。
小さい頃から、私の隣には伊織がいた。見分けが付くように私達は服を変えられた。
普通ほくろ、顔立ちで見るけれど、それすら同じだった。
自分が小さい頃から二人いて、
同じ事を考えていたのかな。
いつからだろう?きっと心の波長近いから、私はもう一人の私が抱く殺意を知った。
そして崖。
やめて。怖いよ。なにするの?
ねぇ。やめて。怖いよ。
—何が・・・あったの?ねぇ私。—
—ただ、怖かった。落ちていく私。—
落ちちゃうよ。 !!
—誰の名前を呼んでいるの?—
「さおり!」
私?
「沙織!ってば!」
「ん・・」
目をあける、寝てたの?さっきのは・・夢?
「菜緒子ちゃん・・・どしたの?」
「・・・。はい。ごはん」
あきれた目で見られたし。
寝てたのか。そう思いながら礼を言ってご飯を受け取った。
「どうしたの?うなされてた見たいだけど。」
「ううん。なんでもないよ。」
言えるわけがない。
もしかしたら伊織が私を殺そうとしたのかもしれないと。
そんなことは言えない。
「沙織?」
「ふぇ?どうしたの?直己くん。」
「大丈夫か?」
「?うん。」
直己君からみても、私は危なかったみたいだ。
だけど、なぜ菜緒子ちゃんとココにいないのだろう?
菜緒子ちゃんは私が寝ぼけ眼だったため、他の班の友達の所へ行ってしまっていた。
「さっき」
「さっき?」
「いや・・・あまり、元気出ないかもだけど。」
「????」
「沙織がうなされてた時、樹が心配そうにしてた。」
「・・・ほんと?」
私は嬉しくてにこにこしていた。。だが、ある事実に気づく・・・
「も、もしかして・・寝顔見られた・・・とか?」
「あ・・・・・」
しまった。その事を考えるのを忘れていた。と言うような顔をした直己くん。
「で、でも、かわいいな。って言ってたし。」
「・・・ハズカシ・・・。」
「よ。沙織。」
「龍河くんっ?!」
私はあわてて顔を隠す。恥ずかしい。
ぼそぼそと小声で話す声が聞こえた。多分直己くんが、なぜ私がその行動をしているかを教えているんだと思う。
「ご、ごめん。沙織。」
「も〜やだ。見ないでよ。」
私はそう言って彼が去るまで顔を隠していた。
「ふぅ・・・。」
「俺も見たけど・・」
「・・・ひどいよ。。」
「でもどうしてアイツだけ…」
私は口を小さく動かして、いおりとつぶやいた。
「それ以上は言えない。ごめんね。」
私はそこで話を止めて、ご飯を食べ始めた。
彼が私のそばにいるのは嬉しいけれど、彼が私のそばにいると、伊織に何をされるか、、怖い。
そう。私は血をわけた姉が・・・怖い。
なにはともあれ私達は現地に到着。もう午後だから、クラス全員で観光して、んで班行動は2日目。
そして私はある作戦を決行した。
「沙織!降りなよ!写真撮るよ!沙織〜〜!!」
そうなんです。全員そろっていると決まってるんだから、クラスで写真をとらないわけがない。それが嫌だった。
だから寝たふりをしたんだけど…
「先に行ってろよ。俺待ってるし。」
「え〜一緒に行こうよ〜。」
「しょうがないだろ?他の女子と体制合わせてないと、何言われるかわかったもんじゃないぜ?」
「直己・・・うん。わかった。じゃあすぐ来てよね!」
菜緒子ちゃんがぱたぱたと走って行って、おそらく見えない位置まで行った時、直己君は、私に言った。
「寝たフリしてないで行こうぜ?お前行かないと俺も行かないぜ?」
「な!…あ」
寝たフリをしてた事を知られていた事にびっくりして、目をあけて見てしまった。。あ〜も〜ばか。。
「なんでわかったのよ。」
「なんとなく。あんま対した意味はない。」
「伊織と写真を撮るのが嫌なのよ。どうしても。」
「じゃあなんとかしてやるから、早く来いよ。」
「・・・・うん。」
私が行くと、菜緒子ちゃん達は私の存在に気づいていない。そんな時、私はしゃがめ。と言われた。
言われた通りにしゃがむと、私はいろんな人の影で映らないですんだ。
私の気持ちをちゃんと菜緒子ちゃんに言ってくれてたから、沙織!こっちこっち〜。とかって頑張って、さも私がいるように装ってくれた。
「ごめんね。二人とも。ありがとう。」
「良いってことよ〜。にしてもひどいわ。私じゃなくて直己に言うのね。」
「だ、だって〜。」
「嘘よ。冗談冗談。あ。ここでも何か買えるみたいだよ。アイス買おうよ〜。」
いろんな生徒が集まっているところを指して菜緒子ちゃんはそう言った。
「うん・・・ってあ!バスだ。お財布。取ってくる!」
「・・・あんたねぇ。なんで貴重品を忘れてくるのよ〜。おばか。」
「う。。ごめぇん。待ってて!!」
あきれられながらも、少し楽しそうで、私はダッシュでバスへ戻った。
「あった。あった〜。」
早く行かなきゃ。菜緒子ちゃんが待ってる。
「沙織。」
「ふぇ・・・・って・・・龍河くん・・。」
見るとバスの入り口に、龍河くんがいた。
「オッス。」
少しはにかんだ笑顔。格好いい。。。
「ん。」
「・・・」
「・・・私さ、菜緒子ちゃん待ってるから、出たいんだけど。」
龍河くんは、バス特有の一本の中央にたってるから、私は外に出れないでいる。待ってるのに。。
確かにこの状況はおいしいけど、、怖い。
「…」
「?行くね。」
通り過ぎようとした時、「ごめんな」って声と共に、私は肩を捕まれて、その通路に座らされる。
「った〜…どうしたのよ。」
「……俺といるのは嫌か?」
「え…」
何を…言ってるの?この人。
「今朝から、避けられっぱなし。気分悪いんだけど…。」
「そ、そんなことあるわけ」
「じゃあいつもあんなに冷たかったか?お前。」
あなたを避けるのは、伊織が怖いから。あなたといると、私の命が危ないの。
「そんなこともないけど…っごめん!」
「沙織!」
私は急いでバスから降りた。そして菜緒子ちゃんの所へ向かう。
ただ、途中でバスに向かう伊織を見たから、何か嫌な予感はしてたの…
「沙織!危ないっ!」
「え?!きゃっ!!」
私は菜緒子ちゃんの言葉に対応しきれずに、上から落ちてきた何かに腕をかすった。
「沙織!大丈夫?!」
「う・・・うん。」
少しかすっただけ。だけど、、あの感じは・・・
「沙織、大丈夫なの?!」
心配そうな顔で近づいて来た、同じ顔。
こないで・・・
「伊織…」
「何も無い見たいね!よかったわ〜。」
そう言って私に抱き付いてきた。
「あの人に手を出してみなさい?どうなるかわからないわよ。今のだって。ねぇ。沙織?」
伊織はそれからすぐ離れた。私の体に、冷や汗が走る。
「沙織?」
「…っ大丈夫。。なんでもない。」
あの人の側にいたいけど、それは、許されないの。
自分の命と引き換えならば、愛せるけれど、生きるためには、愛してはいけない。
とりあえずその日は全員でご飯をたべるなりして、私達はホテルについた。
「今日沙織あぶなかったよね。直己。」
「あー」
菜緒子と直己は同じクラスの子や、違うクラスの子達が集まっているロビーにいた。
大体いるはずなんだけど、何かが・・・
「あれ?沙織は?」
「…」
トゥルルルと電話がなる。
ちなみにこの学校。修学旅行に携帯電話を持ってきてOKなのだ。(ありえないし)
「沙織だ。もしもし?……どうしたの?沙織!』
「菜緒子。ボリューム落とせ。」
『で、どうしたの?・・・・・・うん。いけるよ。待ってて。』
「どうした?」
菜緒子の尋常じゃない声が直己にそう聞かせた。
「なんか、怖がってる。部屋に来てって。行ってくるね。」
「俺も行く。」
菜緒子と直己は二人で出て行った。
樹は沙織がそこにいないことに、ほとんど始めから気づいていた。
だけどなんとなく、沙織は伊織に近寄って欲しくない雰囲気だったから、
もしかして、俺がさけられてる原因もそれなのか?そう思っていた。
そんな時、菜緒子と直己が、ロビーから出た。
俺も立ち上がる。
「え?どこ行っちゃうの?」
隣にいた伊織にそういわれる。
俺は便所。そう答えて、そこから出た。
「直己!」
「樹?!…。菜緒子。先に行け。」
「?…うん。」
直己がそう言うと、菜緒子は先に行った。
「沙織だろ?アイツに何かあったんだろ?」
「・・・きっとアイツは、お前が来てくれたら嬉しいと思う。だけどな、樹。
俺はお前に、あいつの所に行って欲しくないんだよ!!」
「直己?」
「どうして彼女の誘いを断らなかったんだ!!」
「な…おき」
「お前の気持ちって、中途半端なものじゃないだろ!
その気持ちが嘘じゃないなら、もっと考えてやれ!」
だから、お前は来るな。
そう言うと、直己は去った。
直己は気づいてる。
どうして断らなかったのか。
それの方がいいと思ったから。
断って彼女を選んだら、彼女の身に、何か起きそうな気がしたんだ。
ふと後ろに誰かがたった気配がした。
「え?うわっっ!!」
頭にするどい痛みが走った。
バン!
「沙織!」
「な、菜緒子ちゃ〜〜ん!!」
半泣き。もうだめ。
菜緒子ちゃんが救世主に見える〜。
「どうしたのよ。」
「ごっゴキブリが〜〜っっっ!!」
「え?・きゃあ!っとびっくりした〜。」
菜緒子が下を見ると、ゴキブリがいっぱいいた。
「どうした!菜緒子!!!ってゴキブリ?こんなに?」
「とりあえず殺すよ。手伝ってね。直己。」
「別にいいけど、お前ゴキブリ平気だったんだな。」
「ま〜ね〜。あ!殺した数が多い方が、少ないほうに命令ね。決定〜。さぁレッツらゴー!!」
「コラ!菜緒子!!」
なんか愛をそこらへんに撒きながら、ゴキブリを殺してるんだけど・・・。
結局勝負は直己の勝ちで、少し二人で廊下に出て、しばらくしたら菜緒子ちゃんが赤い顔で息を乱してたってた。
深いキスをされて、胸らへんに、キスマークをつけられたってハズカシそうに、だけど嬉しそうに言ってた。
何げにこの二人はラブラブ。お互いが浮気しないってこと。お互いしか愛さないコトを、わかってる。
「で、おかしいね。」
「うん。なんか入ってきた時はいなかったんだ。だけどしばらくしてから出ようかなって思ったら、ソコの扉から入ってきたの。」
そう言って指差したのは、廊下に面した扉だった。(ようするに菜緒子、直己が入ってきた扉。)
「だれかが?」
「あ・・・。」
「「沙織?!」」
私は二人の間を縫って、廊下に出た。
嫌な予感がした。とてつもなく。
「っ!龍河くん!!」
「どうしたんだよ。沙織って・・・樹?」
「先生呼んでくる!!」
「・・・私、部屋に戻るね。」
「沙織?」
不思議そうな直己の声を無視して沙織は部屋に戻った。
菜緒子が先生を呼んですぐに、伊織が来た。
わかってた。すぐに来るってことが。
そして彼女は先生と樹と一緒に、医務室になっている部屋に行った。
「…」
「どうしたの?直己。」
「・・・なんでもない。大丈夫。何?もっとキスさせてくれるのか?」
「〜〜〜っばか!!」
一人、震えていた。
-怖い。今まで耐えてきたじゃない。どうして?耐えられない。-
-怖いの。-
-何が?-
-自分の…-
-自分の?-
-…自分の気持ちが・・・。怖い。。-
-誰に対する?-
-龍河…樹くん。-
-抑えるの。-
-わかってる。〜っだけど!-
-抑えて。生きていたかったら-
その日、先生は龍河君が襲われたと思って彼に色々問いただしたらしいけど、
もし本当のことをいったら、中止になる事がわかっていたから、ちょっとめまいがしたって言っていた。
いい判断だと思う。
だけど私は、私の精神は、
そろそろ限界だった。
ずっとずっと耐えてきて、
ずっとずっと…。そして、龍河くんが、襲われた。
それはきっと私のせい。
私が生きてるから、、皆に迷惑をかけてしまう。。
どうして・・・。
朝、菜緒子ちゃん達に起こされたけど、私はもう起きれなかった。
自分のせいで傷つけてしまった。
そしてそれを、
伊織は知ってるはず。
どうして彼が、襲われなければならなかったのか。
私もなんとなく、誰がやったかわかってる。
だから、余計に・・・。
「起きれる?ご飯食べれる?」
「ごめん・・無理。」
「今日、回れる?」
「…ごめんね。無理みたい・・先生、呼んでくれるかな?」
「うん。」
菜緒子ちゃんは先生を呼んできてくれた。
そして、私の意思で、同室の女の子を外に出してもらった(朝食を食べなきゃって事もあったけど)
そして実は、この先生、私の知り合い…というか、親戚だったりする。
そして、私が崖の下にいるのを発見してくれた人でもある。
つまり、伊織の本当を知っている。
「沙織…」
「先生…もう駄目です。私。一人にしてください。」
「…わかった。」
私は暗に、先生を残さずに、私を一人にしてくれるように(私一人をココに残してください)とお願いした。
そしてしばらくしてから、皆が出発したらしい。
寝よう。そう思った時、携帯が揺れた。
「メール?」
「なに・・・これ…」
誰か、嘘だと。そう言って…。
『僕は沙織が好きだよ。誰にも渡したくない。
だから君のそばにいる樹が憎いんだ。
そして君を苦しめる伊織もね。
好きだよ。愛してる。まかせて。
君を誰からも、守って見せるから。』
嫌な予感がした。今日、この人が、伊織に手を出すのではないかって・・・
そしてそれは案の定…。
バタバタバタと、走ってくる音で目が覚めた。(あの後寝た。)
バンッ
「沙織!!」
「・・・っ伊織?!」
伊織がズカズカと部屋に入ってきて、起き上がった沙織の頬を叩いてから押し倒し、首を絞める。
「ちょ・・・伊織・・・っ?!」
「あなたのせいよ!あなたが生きてるから!私も怪我したし!龍河くんが襲われたのも・・・っ皆あなたのせい!!」
楽にしてくれるなら…やっていいのに。。
「伊織!!」
そう言って部屋に入ってきた声。
その声の後ろから、先生の声もした。
伊織はぱっと手を離した。
「…とりあえず、出ろ。」
先生に言われて、伊織は部屋に戻ったみたいだった。
「ゲホゲホッ。」
いまさら・・・もういいよ。
目を閉じる。
「沙織…」
え・・・
「龍河…くん?」
目を閉じたまま、私は、彼に問う。彼なのか?と。
「沙織は、、悪くないから。」
「伊織は怪我したの?」
「・・・あー。」
「伊織の側に…あなたはいて。
伊織には、あなたが…必要だから。」
「沙織は俺を…必要としてくれないのか?」
「…私より、伊織を…」
「沙織。」
「…必要よ。だけど、今は伊織。
伊織の怪我は・・・誰かがやったもの。
不安定になっているだけ。
側にいてあげて。
伊織が・・・喜ぶ。」
私は、目をあけて、微笑んだ。
本当はそんなこと望んでない。
だけど…
「ごめんな。」
「え?」
彼はそう言うと、顔を、私に寄せて、
私のおでこに、キスをする。
「俺は、沙織の方が、心配だから。それだけは…わかってほしい。」
彼はそんな台詞を言って、出ていった。
…あなたを…守るから。
夜、私は起きだした。携帯を片手に持って。
誰もいない所。
騒いでも先生に見つからないところ。
温泉だった。
女湯に、私はいた。
「会いたい。あなたに、会いたい。
すべてが・・・聞きたい。女湯で。待ってる」
さっきメールを送った。
もちろん私は、服を来たまま、そこにいる。
人が来た。
誰?
ガラッ
「今西・・くん?!」
「あれ?こんなところで、何をやってるんだ?沙織さん。」
「あなたなのね。すべて。。」
「ははっ。いいわけ出来ないか〜。女湯だもんね。ここ。
そうだよ。君が好き。君を・・・愛してる。」
「私は、あなたの気持ちに答える事はできないわ。」
「どうして?」
「独占欲のために、クラスメートを傷つけるなんて、最低よ!」
「きゃっ?!」
今西が急に向かってきたと思うと、座らされ、浴槽に顔を入れられた。
少しだけ、抵抗する沙織。
「君が俺のものにならないのなら、君はいらないんだ。」
ガラッ
「なっ?!」
「沙織っ!」
登場した人。
ソレは直己だった。
実は菜緒子が起きていて、沙織が出て行くのをみた。方向からして女湯だけど、どうしたんだろう?
と、メールをしていた。
直己は菜緒子に、そこにいろ。と言って、自分だけ女湯へ行ったのだ。
「バカ野郎!!」
直己は、今西をどかして、沙織を助けた。
「アホが。こんなことして、ナンになる!!
本気で好きなら!!幸せを願ってやれ!!」
「…その当たり前の事を、気づかせてくれる人は、僕にはいなかった。
ありがとう。もう、しないよ。ただ・・」
僕は言おうとした。これはすべて、あの人がからんでいること。
だけど、沙織さんは、俺に向かって首をふって、内緒。って口に人差し指をあてた。
「ただ・・なんだよ。」
「いや・・・なんでもないよ。じゃあ。」
今西は、立ち去った。
そして沙織は少し濡れた服をそのままに、部屋にもどった。
今西君に口止めはした。
もういい。
沙織は、もう、伊織から?わからないけど…生きていくのが限界だった。
明日は最期の日になる。
だから・・・彼のそばに…いたいな。
最後の夜を楽しみたかった私はベランダに出る事にする。
そして星を見ながら周りの人に、たくさんの感謝をして、そしてその人達にたくさんの幸せが訪れるように、私は願っていた。
「ぇ。」
後ろに誰かたつ気配がして、ふと振り返ったけれど、私はその時宙に浮いていた。
(ベランダから突き飛ばされた。)
「きゃあ!!」
落ちていきながら目の端にうつったのは………伊織。
「い…おり」
ズササササって音がした。4Fくらいから落ちたはずなのに、私には意識があった。
それは、私を受け止めてくれたのが、木だったから。
ありがとう。
変かもしれないけど私は木にそうつぶやいて、そこにいた。
どうやって戻ろうかと思った時、玄関から先生が出てきた。
「もう良いんじゃないか?沙織。」
「わーびっくり。気づいてらしたんですか〜?」
「沙織。」
「………部屋に戻ります。」
ソレ以降は完璧に無視をした。
ごめんなさい。先生。
これ以上どうにかしたいわけじゃない。
私一人が死んですべてが終わるのなら、この身を投げ出しましょう。
アナタに。
昨日夢の続きを見た。小さい頃の夢の続き。
真実を知って、あまり愕然とはしなかった。
ただ、私達の差はなんだったんだろうと、今でもわからない。
何もしてないはずなのに・・・なぜこんなことになっているんだろ。
私達は最終ポイントである清水寺に行った。
クラス写真を撮って、最後の自由行動。
何かが起こることはわかっていた。
よく人がとびおりた清水の舞台で、私はその光景を見てしまった。
「離してよ!!」
伊織が彼に向かってそう叫んでいる。伊織を、付き落とそうとしている?
「今西くん!伊織!」
かけよって間に入る。
「やめて!今西くん!伊織には手を出さないで!」
そしてまだなお私の後ろで暴れる伊織。
後ろに、引っ張られる感触がした。
押されるのではなく、引っ張られる感触。
「沙織さんっ!!」
最後に聞こえたのは、今西君が私をよぶこえだった。
「沙織…さよなら…」
「沙織っ沙織〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「沙織!」
「沙織!!」
なぜか3人一緒にいた菜緒子、直己、樹は沙織の名を呼ぶ。
周りの人も
『きゃーーーーーー』
と悲鳴をあげる。
あたりはパニックの渦だった。当たり前。女の子が一人、清水の舞台から落ちたのだから。
伊織も叫んでいるが、口元は笑っていた。
「沙織!」
樹は沙織が落ちたところに向かった。
たどり着くと、沙織は、人に囲まれていた。
「通してください!沙織!!」
「あ。君、知り合いかい?この子!息をしてないんだ!!」
「っどいてください!!」
沙織!君を…俺は助ける!!
実は樹は丁度数日前、応急救護のやりかたを教わっていた。
人工呼吸と心臓マッサージを繰り返す。
「ふ・・・」
「沙織…っ」
ほっとして、力が抜けた。
ちなみに周りにいた人達は全員を救急車の誘導などに使った。
要するに口付けしなければならず、それを見られるのが嫌だったんだ。
でも…
樹は息を吹き返した彼女に、そっと唇を重ねる。
しばらくすると救急車が来た。俺は付き添いとして、それに同乗することになった。
「おにーちゃん?」
「え?」
振り向くとわりと小さめな女の子が一人いた。
「はい。コレ。」
「あ。俺のカメラ・・・ありがとう。」
「ううん。ただ、ゴメンね。2枚くらい、使っちゃった。」
俺はその子と同じ目線になるようにしゃがむ。
「いいの、撮れた?」
「うん。おにーちゃん、私の分も、幸せになってね。」
そういうとその子は去っていった。
俺はその子が幽霊だってことをなんとなく承知していた。
彼女は助からなかった。だけど、同じように突き飛ばされた沙織は、俺が助けた。
だからきっと、嬉しかったんだと思う。
ごくごくごくごくたまに、俺はそう言うのが見えた。
ただ、彼女が何を取ったのか、俺にはわからないから、現像を待つことにした。
でも、
沙織が無事で
何よりも良かった…
「…っ」
「沙織?!」
声が聞こえる。誰の声?安心できる声。優しい声。
私はこの声を知ってる。
そう。すごく嬉しいことばを言ってくれた声。
「俺は、沙織の方が、心配だから。それだけは…わかってほしい。」
そう。樹くん……
は?!
パチッ
「っきゃーーーーーーー!!」
目をあけて叫ぶ。だって目の前に樹くんの顔。
やば…目ぱっちり。
ガラッ
「どうしました?!!」
「…なんでも、ないです。」
樹くんは、そう言った。耳を押さえながら。
「なんでもなくないわけないでしょう?」
「イや・・・動いたから覗きこんだら、目を開けて・・・」
看護士さんが・・・あきれてる。
「ぷっ」
「え」
「あははははっ」
「お前のせいだろうが!」
「あははははははっ」
面白い。
楽しい。
っ!
私は急に身構える。そのとき既に看護士さんは、外に出ていた。
「もう大丈夫だから。沙織。」
「?どういうこと?」
「伊織と、今西は、殺人未遂罪で、捕まったよ。」
「っどうして!!」
「今西から、全部聞いた。」
「っ?」
話しを聴くところによると、
1.伊織が私を付き落とすために、わざと今西くんを挑発していたこと。
2.私を襲った上からの落下物は、伊織がしくんだもの。
3.私を殺そうとした事を今西君は白状し、それは伊織にたたきつけられたこと。
4.伊織が、精神的威圧をしていたこと。
5.がけから転落したのは、伊織につき落とされたこと。
等などをすべて今西君(と、先生)が白状し、問い詰めたところ、伊織が白状して、罪になった。ということらしい。。
「・・・伊織は何も悪くない!警察行って来る!!」
「っ」
「え。きゃっ?!」
ベッドから出ようとした私を、樹くんは、後ろから抱きしめる。
「やっやだ。離してよ!」
「お前落ちたとき、心臓とまるかと思った…」
「…っ」
「ずっと近づけなくて、、つらくもあった。」
「…」
「すべて伊織のせいだった。」
「違っ…」
「沙織…」
「なに…よ」
「俺がどれだけ心配したか、わかってんのか?」
「し、心配をかけたのは申し訳ないけど…伊織は…私の大切な、姉だもの…
同じ日に産まれて、同じ顔をしてた。だから」
「じゃあ本当に、伊織が沙織の姉であるという証拠は?」
「え?」
「警察の調べと、沙織の両親の証言が得られた。」
「伊織と沙織は双子なんかじゃない」
「え?」
「伊織の本名は、永相良 美久(ながさがら みく)彼女は十数年前に、両親を焼き殺して行方不明になっている。
沙織の両親は、その事実を知らなかった。」
「じゃあどうして!私と伊織の顔が!!」
「伊織には、3歳とか5歳の時からすでに裏の世界に部下がいた。それほど伊織の放つ黒いオーラは周りを巻き込んだんだろう。その関係で、伊織は両親を焼き殺した後、沙織を見つけた。」
「っ?でも私と伊織の違いは…わかったはずよ。」
「実は沙織には本当に伊織と言う姉がいたんだ。ただ、その姉は生まれて数年たってからすぐ行方不明になっている。そして、行方不明になって1週間後、同じ顔をした女の子が、家の前で倒れていたら、誰でも伊織だと思うだろう?」
「まさか…」
「そう。伊織、もとい美久は、沙織の本当の姉を誘拐させ、殺して、同じ身なりにして、お前の家にもぐりこんだ。」
打ちのめされていた。
今でも気をぬいたら、半狂乱になるかもしれない。
ごめんなさい。本当の伊織。
あなたは嫌いじゃない。怖くも無い。
あなたと同じ姿をした人が、怖かっただけなの。
「で、血液検査とかした所、伊織は実の娘で無い事が判明したよ。」
「わっびっくりした。ありがと。龍河くん。・・・?どしたの?」
むすっとしてる。私は何かやったっけ??
「で?俺はずっと避け続けられた理由を、聞く権利があるよな。」
「…伊織はね、龍河君が好きだったの。だから、私が近づくと、私に被害が及ぶから…
「ふぅ…なんでだか・・・それを考えた事がある?」
「え?ない。」
「じゃあ考えて。」
—伊織が、私を近づけないようにしたのは、私に、樹くんを取られないためでしょう?
あれ?なんで私がとるんだろ・・・
私の気持ちに気づいてたの…それはなんとなくわかるけど・・・
私と伊織を並べたら、絶対に、樹くんは、伊織を選ぶわ。だったらどうして…—
考えがまとまらない。どういうこと?
思い悩む沙織の脳裏に浮かんだのは、あの台詞。
—俺は、沙織の方が、心配だから。それだけは…わかってほしい。—
—あ。そっか。樹くんが私の方が好きだから、近づいたらいけなかったんだ。そっかそっか。—
「え?」
「わかった?」
沙織は樹を見つける。すこしだけ顔が赤いのは気のせい。
「わ、わかんない。てかありえないよ。うん。だからこれは違う。」
「顔赤い…」
そう言って少し笑う彼…
「〜〜っ」
「だからわかったんだと思ったんだけど?」
「ぇ?」
「沙織が、好きだよ。俺と付き合って欲しい。」
「ごめん。今雑音が聞こえた。もう1回。」
「沙織が、好きだよ。俺と付き合って欲しい。」
「今度は耳鳴りが…ぇ?」
そういうと、樹くんは、私の耳元に唇を寄せて、
好きだよ。
とささやいた。
「嘘…」
「本当。好きだよ。だから…」
一度私を離すと意味深な目で見つめてくる。
なんとなく自惚れてみて、目を閉じる。
唇に当たる感触。
キス…
ふれるだけのキスを終えると、私を抱きしめてくれた。
嘘じゃない。絶対に、違う。。
「ありがとうございます。。私も…好きだよ。」
「言ってよ。ずっと、読んでくれてたんだろ?」
「っ樹くん?」
「はい。よく出来ました。」
カンの鋭い人だった。
愛してるよ。
こんな私でいいのなら・・・
永遠に私を
愛してください。
追伸
「っ?!」
俺、龍河樹は、一人で真っ赤になっていた。
沙織とも付き合い始めて、修学旅行の写真を取りに行って、帰り歩きながら見ていた俺の目に飛び込んできたもの。
それは人工呼吸のあとのキス。
っあのコ、こんなもの撮るなよな…
「よぉ樹!な〜に見てんだよ!」
「なっなななななおき!!」
「おっそのあわてよう。面白そうなもの持ってんじゃん〜??ん〜。」
「あ〜。直己〜。樹もいんじゃん!!沙織〜コッチにいたよ。」
沙織は、なんとも女の子らしい服を着ていて、それはとっても似合っていて、、見惚れたのが間違いだった。
「っも〜らい!」
「あ!!」
「あらあらあらあら。まだ返事も聞いてないのに、襲っちゃうような人なんだ〜。樹は。」
「直己!!」
真っ赤になって否定する俺。
とは言っても、物的証拠があれば……
ふふふふ
と笑い声が聞こえて、
「あんな〜お前、あんなもの撮るなよ!恥ずかしいじゃん。」
「いいじゃ〜ん。じゃねぇ〜。」
「こら!」
「あ、あと、樹くん、」
「え?」
「妹をよろしく。」
多少なりともぼやけてた。それがくっきり見えた時、俺は悟った。誰なのか。
「了解です。」
そう言うと、彼女は消えた。
「お、おま・・・今だれと話してたんだよ。」
「内緒。」
ホテルで付き落とした時も、沙織が助かったのは、あなたのおかげだったんですね。
沙織にあわしてくれて、ありがとうございました。
安心してください。
守ります。
この命に変えても。
そして愛し続けます。
彼女を愛しているから。
さようなら…
伊織さん。
end...