「好きです。」 「…え?」 俺は信じられなくて彼女をじっと見つめる。 彼女は下を向いていたが頬は赤く染まっていた。 信じられないと思った言葉は事実。 それを知ったときから、俺は言葉を失った。 あたりには静けさが漂う。 木々の間から差し込む光をまぶしいと思っていたことすら忘れた。 彼女は幼馴染で、俺の好きな人だった。 いつも強くて、明るくて、一人でいるのが好きだったみたいだけど、結局的にいつも友達といた。 彼女は小さいころ俺の家の近くに引っ越してきた。 当時はやっぱりいじめられていたけど、俺が側にいて守ってからは、そのいじめは少なくなった。 もちろん。今はまったくない。 そんな彼女と二人きりで森の中にいるのは事情がある。 その事情を話す前に、俺が彼女に持った“すき”という思いに気づいたときのことを話しておきたい。 彼女に対して持っていた“すき”という思いは少し前に気づいたばかりだった。 彼女はよくもてていた。 そして、よく告白もされていた。 そんな中、少しだけむかつく出来事が起きた。 「今日の授業、本当に必要ないことばっかりじゃなかった?」 「ったくだよ。授業料払ってんだから、もっとまともな授業をしろって感じだよな?」 その日も俺は彼女と一緒に帰路についていた。 話題は、3限目にあった、むかつく教師の話。 まったく関係のなく、身にならない話ばかりを話し続け、一時間を終えた。 その教師にやめろ!というブーイングが飛ばなかったのは、 ① 俺らみたいに起きていたやつが少ない ② おきていたとしても、まったく聞いていなくて、話をしている。 だからだ。 だが、彼女は違った。話が変わることを望み、ずっと聞いていた。 それなのに、必要のない話で一時間が終わった。彼女はかなりいらついていて、友達に愚痴をこぼしていた。 というわけで、彼女の怒りは収まらなかったらしく、今、俺も愚痴を聞いている。 きっと彼女に恋しているやつらは、この状況をうれしいと思うのだろう。と後々思った。 でもそのときの俺はいつもと同じだったから、べつにうれしいとか、そう言うことは思わなかった。 家までの距離があと残り半分になったとき、俺は見知った男を見つけた。 クラスの中で結構もてる分類に入る男(俺は嫌いだが)、金盛 和(かなもり あつし)だった。 「あれ?金盛くん、どしたの?」 「あの…話があるんですけど?」 「私?」 「…。」 彼女は意味不明という顔をしていたが、俺はなんとなくわかった。 金盛和は、彼女に告白をしに来たのだ。 その事実がなんとなく俺をイライラさせた。 彼女に告白する人物は少なくない。 いつものこと。 それなのに、イライラした。 「何?」 「ここじゃちょっと…。」 「…。じゃ、ちょっと待ってて。」 俺にそう言うと、彼女は金盛和と俺の側を離れた。 待っている間、なんということもなく、イライラしていた。 なぜなのか。 それは彼女が帰ってきたらわかることだった。 「おまたせ。」 「なんだったんだ?」 俺は歩きながら問う。 「ん…。告白、された。」 やっぱり思ったとおりだった。 じゃあなんでこんなにイライラするんだろう? 「おまえよく告白されるよな。でも金盛和、結構人気あるから、な。俺から見ても多少かっこいいし。」 そう。俺は間違いなく彼女が金盛和の告白をOKすると思っていたのだ。 断らないはずがない。そう思っていた。 「…。断ったよ?」 「やっぱな……え?」 「な、何よ〜?なんでそんなに驚く必要があるの?」 驚かずにはいられないだろう。 断る理由が思いつかない。 「なんで断ったんだ?」 「え…。」 「なんだよ?教えてくれたっていいじゃないかよ?」 「えー。」 「あれ?」 俺は先ほどまで持っていたイライラの気持ちがなくなっていたことに気づいた。 「どうしたの?」 「いや…。あ、なんで断ったんだ?」 「え…言うの?」 「あたりまえ。」 「んーーー。」 彼女はずいぶんと粘り、言いたくなかったようだった。 でも結局的に、俺に教えてくれた。 「好きな人が、いるからだよ?」 「…へ?」 「あ〜もー言わないからね。」 「いや…それは…ええ?誰だよ?」 驚き少しイライラした気がした。 「教えないー。」 「うちのクラスのやつか?」 「…そだよ?」 「金盛よりいいやつか?」 「当たり前。」 「え…金盛よりいいやつなんかうちのクラスにいないぜ?あれ〜??」 「ぜ〜ったいに、わかんないよ。特にキミにはね。」 「…。ちぇ、」 「でも平気。いつか必ずわかるから。」 「…。」 俺はすばらしくイライラした。 そしてその日の夜。気づいたんだ。 金盛に、彼女をとられてしまうことがいやだった。ってことに。 彼女と、ずっと俺は一緒にいたかったんだ。ってことに。 彼女が、ずっと好きだったんだ。ってことに。 自分の気持ちに気づいてからは、彼女に接した後、すごく幸せな気持ちになれた。 そして、今まで以上に彼女が他のやつらから告白されることに、イライラした。 だけど勇気がなくて、彼女に気持ちを伝えることができないから、彼女に近づいてくる男を遠ざけることができない。 そんな時俺は、自分自身にイライラした。 俺は彼女が好きだと気づいた。 だから、彼女に接する時、少しだけ今までと違った。 少しだけ緊張したし、少しだけ照れた。そして、少しだけ幸せでもあった。 だが、女性は些細なことに敏感だということを聴いたことがあるが、その通りだったらしく、彼女は俺に聞いてきた。 俺に話しかけずらかったのかは、わからない。だけど彼女は俺が一人になったのを確認して、声をかけてきた。 振り向いたときに彼女がいたのでドキッとしたが、その様子を悟られないように努力した。 「ねぇ、なんか最近・冷たくない?」 「え?冷たいか?俺、」 「うん。冷たいよ。」 彼女は寂しそうにそう言った。 「そんなつもり…ぜんぜんないんだけど…。ごめん。」 心から謝った。彼女のことが好きなのに、冷たくあしらったように見られてしまった。 “友達”にそういう行動をとられたら、さすがに少しは傷つくだろう。 だから、傷つけてしまった俺自身に多少怒りを感じた。それと同時に彼女に申し訳なかった。 「そんな、あやまんなくてもいいよ。私も変なこと聞いてごめんね。」 「いいや。俺が悪いんだし、ごめん。」 「…ありがとう。学園祭、楽しみにしてるね。」 「ああ。一緒に回るんだろ?」 「!うん。覚えててくれて、ありがとう。じゃあばいばいっ!」 「ああ。」 そう、書き忘れていたが、この日、学園祭が明後日に迫っていたのだった。 俺は彼女に一緒に回ろうといわれ、それを了承した。 だから、一緒に回るのだ。 学園祭は二日間あり、二日とも一緒に回ることを約束済みだった。 そして、今日にいたるのだ。 今日俺は彼女と一緒に回った。 彼女と一緒だから、楽しかった。 そして、学園祭終了時刻まで、あと30分という時だった。 「あ〜あと30分で終わっちまうな〜。」 「ん〜。そうだね。ちょっと暗くなってきたね。」 「そ〜だな。…。今日は楽しかったな。」 「うんっ。」 「明日も、楽しみだな。」 「うんっ…!…あの…」 「?どした?」 彼女の様子はいつもと変わらなかった。だからこそ、彼女が口ごもった時の驚きはいつもの3倍だった。 「あの…ね、ちょっと…一緒に行って欲しいところ、あるんだ。」 「え?」 「…やだ?いやならいやで…いいんだけど。」 「べつにいいぜ?どこ行くんだ?」 「あそこ…。」 「…木々の森?」 そう、そこは別名木々の森。 木々があるから森なんだが、俺達は木々の森と呼んでいる。 ずっと前の先輩達がそう呼んでいたから、俺らも呼んでいるだけだけれど…。 俺は意味不明だったが、断る理由もなく、彼女についていった。 「?どうしたんだよ?いつもこんなに置くまでこないだろう?」 「まぁ…。うん。聞かれたく…なかったから。」 「?」 「大切な…話が…あるの。」 ひとつ深呼吸してから彼女は言った。 「私…………ずっと決めてた。ずっと。ずっと。」 遠い目をして彼女は言った。 「ずっと?」 「うん。ずっと。今日。言おうって。」 彼女は少しうれしそうに言った。 「何を?」 「……………まじめだからね。」 少し笑いを含んで彼女はそう言った。 「え?」 「うそじゃないよ?」 「は?」 「ちゃんと、聞いて?」 俺はなに言ってるんだよ?と言おうとした。だけど、いえなかった。 彼女のまなざしは真剣そのもので、俺も真剣に聞かなければ、と思った。 「わかった。」 「私は、キミに言いたかったの」 「…。」 「好きです。」 「…え?」 というわけである。 俺は愛しの彼女に告白されたのだった。 「まじで?俺のこと…。」 「…うん。ごめんね。迷惑だよね?」 「迷惑?!」 迷惑なんてあるはずがない。 とっさに俺は大きな声を出してしまった。 「え?」 しまったと思って口を押さえた。 とりあえず俺は彼女に、心を決めた。 「俺は、君が…好きです。」 「え?」 「俺も♡ってこと。」 「だって、だって、ずっとそんなそぶり…。」 彼女は困惑していた。あたりまえだ。俺が好きだと認識したのは、つい最近だったから。 「おまえ、金盛に告白されたろ?」 「?うん。」 「そん時…からかな。」 彼女は目を丸くした。 「うそだ…?」 「ホントだよ。」 「本当に?」 「うん。本当だよ。」 俺がうなづくと、彼女は涙を流し始めた。 「え。え?」 「ごめ…うれしくて……。」 彼女は顔を覆った。 「ずっと・気づかなくて、ごめんな?」 「ううん。ありがと…。」 彼女はしばらくして涙を拭いて笑顔でにこっと笑ってくれた。 そして俺達はいままでと違って彼氏彼女の間柄。となった。 だが、 その後、俺たちは二人で並んで楽しく話をしながら教室へ向かっていた。 その時に、なんと言うことも無く、結構くっついて歩いていた。 パシャ 「「え?」」 ふと前を向くと、そこには同じクラスで新聞部の竹沢がいた。 もちろん手にはカメラ。 「やりぃ!一面トップ!」 「「あ゛」」 竹沢は俺達が唖然としている間に、逃げていった。 そして、二日目に俺らが二人で回っていると、いろんな人からおめでとう。といわれた。 竹沢は空いている掲示板すべてに俺らの写真を載せた新聞を貼り付けたせいだろう。 ちなみにタイトルは、 俺は苦笑したが、彼女がうれしそうにしているからいいか。と思ってみたりしたのだった。 超大物カップル!! だった。 ちなみに俺も結構もててたりしたり、しなかったり・・・ 突然の告白に戸惑ったけど、最終的にはハッピーエンドだから、よかったよかった。