秋空の下で

「うわぁ。きれいな空…。」
空きの空はとてもすんでいて美しい。
伊織はそう思った。
最近の人々は毎日をとてもあわただしく過ごしている。
もちろん伊織も。
そんな毎日に疲れ果てて、だけど、どうしようも出来なくて、
そして気が抜けなくて。

そんな毎日に逆らいたくて、伊織は一人、とてもゆっくりと
自分の生まれ育った街を歩いている。

伊織には見つけて欲しい人がいた。
彼氏でも、気になる人でもない。
自分が胸をはって親友と言える人。
だけどその人は来てくれない。
その人だけじゃない。
すべての人は、来てくれない。
マンガじゃないんだから。
もしその人が現れたら、偶然が引き起こした産物に過ぎない。

「あれ?」
見知った人を見つけて伊織は声を出した。
無意識に近いその声は、その人に届いた。
「あ、君は…」
その人も伊織に気づく。

私が見つけた人。その人はたった一度だけ会った事のある人だった。
名前は知らない。
「お久しぶりですね。」
「はい。でも名前も何もしらないのに、また会えるとは思いませんでした。」
私もびっくりだ。
これこそが、偶然の産物。

「びっくりしました。本当に。偶然ですねぇ。」
「二度ある事は三度あるんでしょうか?」

え?
…でもどうなんだろう?

「ん〜。前回も、今回も。偶然ですからね。3度目もあるかもしれませんね。」

ありそうな気がする…そう思っていた私の思考を中断させたのは
目の前の人。
「2度目が偶然ではなかったのならば、どうでしょうか?」

二度目…
今回のコト。
私は気まぐれに街を歩いた。
歩き始めてから、かれこれ20分以上になる。
とりあえず私は偶然だ。
てことは…

あなたが、偶然を作り出した??

そんな思いをこめて見つめる。
するとその人は目をそらす。
「あ、すいません。なんの意味も無いんです。忘れてください。」

んな分けないだろう!
心の中で突っ込みながらも口を開く。
少しだけ記憶のある暖かさを感じながら。
「覚えて居ますか?」

そして私はこの晴れわたった大空を見つめる。
秋は空気が澄み切って、空がいっそうきれいに見える。

「何をですか?」
私に問いかけるその人の声も、空を向いている事が私には判る。
「私達が、偶然の産物で出会った時のことです。」

偶然の産物。
本当に偶然なのか。そう思うときはいくらでもある。
偶然こそ、必然のような気がする。
そして必然は偶然か…

「もちろんです。」
忘れない。
あれは、とてもとても、印象的な出会いだった。
「オレが今みたいに空を見上げているあなたに話しかけてしまったんですよね?」


そう。
前にもこんなことがあった。
私が一人、空を見上げていたとき
「何しているんですか?」
と急に話しかけられてビックリした。
確か、
「好きだから。好きだから、見ているんですよ。」
と答えてすぐに空に視線を戻したはず。
そしたらその人は
「そうですか」
と言って、しばらく私と一緒に空を眺めていた。


「でも、ソレが何か?」
私は空を見つめたまま答える。
「今日もきれいです。そう思いませんか?」
するとその人は少し笑って
「そうですね。あのときよりきれいに見えます。」
そう言った。

だから私は目をその人の方に向ける。
空から離して。

「?!」
すばらしく驚いた顔をしている。
当たり前だ。
何も言わずに視線を空から外すことはめったに無い。

動揺しているその人を気にせずにマイペースで進める私。
「はじめまして。私の名前は本宮伊織。伊織で結構です。
 年齢はもうすぐで19になります。」
「あ。はじめまして。オレは津山秋夜です。秋夜でかまいません。
 年齢は19になったばかりです。」

そして私はにっこりと笑い、その人に告げる。
「ではまた今度。」
「え」
私はクスクスと笑いながら問いかける。
「嫌ですか?私とまたこうして会うのは。」
「い、いいえ!」
今度は私がビックリする番だった。
「だって俺。」
そういう言葉の先は…
「ストップ」
「え?」
「良い用に勝手に解釈させていただきます。」

背伸びをして…
キスを
触れるだけのキスをした

「っ?!」
一度やってみたいと思っていたふいうちキス。
まさかこんなところで出来るとは思っても居なかった。
この人になら、ファーストキスをあげても…。と思った。

すると秋夜さんは私を引っ張り、人気のまったくない池の前につれて行く。
笑いがとまらない。そんな大げさな笑い方ではないが。。
クスクス程度…。
「殺す気ですか?」
「そんなわけ無いでしょう。」
「そうですか?」
いまだにクスクスと笑い続ける伊織。

「くやしいですよ、俺としては。」
「そうですか?」
「はい」
「…(汗)」

「好きです。」
そう言うと秋夜さんは私にキスをした。
最初は一瞬。
だけど数回触れるだけのキスをして。
だんだん長いものになって行く。
そして私達は唇を離して、一緒に笑う。

「今度もあるよな?伊織。」
「なかったら怒るよ〜♪」

大丈夫。次も、逢えるよ。
今度は約束しよう?
そして一緒に空を見よう。

偶然が引き起こした産物は
必然と言う名を持った。



読みにくすぎてすいません。