登場人物
海子(かいこ)・・・高校2年
雄太(ゆうた)・・・高校2年
海から吹いてくる風は心なしか塩の味がする。
高校2年の海子は、海沿いの道を歩きながらそう感じた。
海子の左側には雄大な海が広がっている。
海子のいる街は海に面している。
ここにすんでいる住人すべてが海が大好きだ。
ただ好きなだけではなく、海の怖さもよく知っている。
そして、ここで生まれた子供達は、海にちなんだ名前が多い。
もちろん海子もその一人だ。
誰が見ても分かるだろうが、文字に海という文字が入っている。
海子は海が大好きだから名前は気に入っていた。
海子は、きれいで雄大な海が大好きだ。
そして
いつも隣にいるこの人も大好きだ。
と。隣にいる人を見て思った。
隣にいるのは彼氏の雄太。幼馴染でもある。
今二人はただ歩くだけのデートを楽しんでいる最中だ。
雄太はとても活発だ。それは小さいころから変わりない。
海子は昔はよく雄太と一緒にいた。
だが、雄太の背中、背、手の大きさ、声変わりを迎えた彼の声などを聞き、
少年から青年になった雄太に恋をした。
一時期、愛するということを意識した二人が気まずくなってしまったこともあったが、
雄太が海子に告白することで、その気まずさは解決した。
あのときの雄太の
「海子が好きだ」
という言葉を自分は一生覚えているんだろうなと海子は今も感じている。
今日海子は雄太にデートに誘われた。
そしてそのとき「あんまりお金ないから、遊園地とかは駄目だけど。」
と雄太は言っていた。
だから海子は、海沿いの道を歩くことを希望した。「そんなんでいいのか?」と聞かれたが、十分だった。
雄太は海のように雄大で、やさしい。
彼には一生隣にいて欲しいと思った。
「さっきから何考えているんだ?」
やはり昔から一緒にいたためか、
雄太は海子に関してかなり小さいことでもわかるらしい。
「ん〜。いろいろとね。考えてた。」
海子は『雄太のことを愛しく思っていた』とは言えず、いろいろといった。
二人が付き合うようになったのはつい最近だから、その言葉を言うことが恥ずかしかったのだ。
よくよく考えれば海子は雄太の告白にうなづいただけであって、好きだとは言ったことがなかった。
だが、雄太はそんな答えで満足するような人ではない。
海子にはそれが分かった。
「いろいろって?」
やはり聞き返してきた。
海子は、なんだかとてもうれしくなって笑ってしまった。
「なんだよ?」
雄太が少しむくれながら聞き返してきたので、海子は本当のことを話した。
「なんでもないよ。さっきは、本当にいろいろなことを考えていたの。
この街のこと。この雄大な海のこと。あと・・・」
「オレのこと?」
「なんでわかったの?」
海子はびっくりして、聞き返した。
「マジでオレのことだったのかぁ。照れるなぁ。」
雄太は笑いながらそういった。
「まさか、あてずっぽうだったの?」
海子はこんどこそ本当にびっくりした。雄太はそんな海子を見ながら、笑っていた。
「・・・。」
海子はむくれながら、雄太の前を歩き始めた。
だが、すぐ雄太に追いつかれた。
そんなことは当たり前であり、普通だ。問題は次。
「ゎっ!・・・・ぇ?」
海子は雄太に引っ張られ、彼の腕の中にいた。
こんなことをされたのは初めてだった。
雄太の腕の中は暖かく、彼のコドウが聞こえた。
こころなしか彼のコドウは、はやかった。
きっと海子のコドウもはやいはずだ。
「ど、どうしたの?」
彼の腕の中でしゃべっているから、聞こえたかどうか不安だったが、すぐに返事をくれた。
「いや・・・実はオレも海子のことを考えてて、、
おまえが先に行くのを見たら、
俺の前からいなくなっちまう気がして
・・・こわかったんだ・・・・。」
そんな雄太の言葉がとても暖かく、心にしみた。
そして自分のことを考えてくれていたことをうれしく思った。
「行かないよ。どこにも行かないよ。
・・・・行きたくないだけかも知れない。ずっと側にいたいもの。」
海子のコドウはどんどん大きくなっていた。
まして、雄太に対してあからさまに気持ちをいうのは、初めてのことだったので、ものすごくドキドキしていた。
すると、雄太は海子を離した。
雄太の腕の中はドキドキするが、居心地がよかったので、少し残念だった。
「海子・・・。」
雄太は海子の唇に唇を重ねた。
海子はびっくりして眼を見開いたが、瞳をゆっくりと閉じた。
二人は海沿いの道を、今度は互いの手のぬくもりを感じながら歩いていた。
「な・なぁ海子」
キスの後だからだろうか。雄太の声はいつもと違った。
といっても海子も同じだが。
「な、なに?」
「そういえば、まだ好きだって言ってもらっていなかったんだけど・・・。」
「なんでそんなこと急に思い出すの?」
「ぇ・・・だって・・・」
「言って欲しいんだ。」
微笑みながら言うと、照れながらも素直に答えてくれた。
「まぁ・・・な。」
海子は胸のコドウを押さえながら、雄太の頬にキスをした。
「なっ」
「大好きだよ」
海子は眼を丸くしている雄太に言った。
われながらすごく大胆なことをしてしまった。と思いながら。
二人の顔は真っ赤だった。
海子に頬にキスされた雄太は顔を赤くしたままで海子に聞いた。
「ずっと側にいてもいいか?」
海子は驚いたが、満面の笑みを浮かべてうなづいた。
そして二人はまた互いの手のぬくもりを感じながら、海沿いの道を歩いていた。
ばっく