I noticed.~love you.~





「冬菜〜」
空耳?
「冬菜〜」
うるさいなぁ。
「冬菜っ!」
「ん〜?何ぃ〜?」
寝かせて。お願いだから。
「いい加減に起きなさい!遅刻するわよ!」

「何時ぃ〜。」
「8:15」
「はぁ?!」
ありえない。
ガバッと起き上がる。
時間を確認しようとするが、時計がない。
「ホントに?!」
「あったりまえでしょ。」
「うそ〜もっと早く起こしてよ“お姉ちゃん!”」
「次から起こさないわよ〜。」
「ごっごめんなさ〜い」
私を起こしてくれたのは、姉の冬瓜菫(とうが すみれ)。
今高校3年生。
あ、ちなみに私は冬瓜冬菜。高校2年生。


「忍くんが待っててくれるんだよ?」
ぴたっととまる私。
「も、もしかして、浩くんもいるの?」
「あ・た・り・ま・え。」

…。
実はちょっとわけありなんです。
お姉ちゃんが忍くんって言ったのは、柊 忍(ひいらぎ しのぶ)。
お姉ちゃんと同じ年で、お姉ちゃんの彼氏。
浩くんってのは、柊 浩(ひいらぎ こう)。
私と同じ年で、お友達で、忍さんの弟。
4人のわけありな関係は、また後ほど。

って考えてる場合じゃなかった。
やばっ。
すぐ起きて支度する。
「お、お待たせ!行こう!早く」
「あらあら。冬菜。今日は早いのねぇ。」
「え゛」
お母さんに時計を示される。
まだ7:30.。。
ちくしょぅ。
「ひどいよ!お姉ちゃん。」
「はいはい。でも、忍くんと浩くんはいるよ?」
「「おじゃましてます」」
忍さんは笑顔で。浩はちょい怒りモードで、私にそう言う。
「…もーだめ。疲れた。」

忍さんは私の様子がおかしくて笑っていて、
浩が怒っているのも、それなりの理由がある。
その理由がわかっているからこそ、何かプレッシャーみたいなものを感じるね。
朝からこのプレッシャーは何?
朝ってもっとさわやかじゃないのか?!

と、突っ込みしながら御飯を食べて、ゆ〜っくりと学校へ(怒)

「さてと、じゃ〜ね〜。冬菜、浩くん。」
「ばいばい。お姉ちゃん。」
「ちっす。」

二人が完全に見えなくなってから浩は息をはく。
「浩、お疲れ様。」
「冬菜。ベランダ。」
「りょーかい。」

私は何事もないようにOKする。
ちなみに、ベランダってのはベランダに出ろってこと。

「ったくよ〜。朝からいちゃつきやがって。」
「ん。しょうがないよ。つい最近だよ?あぁいう関係になったのは。」
告白したのは、確か忍さんだったっけな。
帰って来たお姉ちゃんはやけに嬉しそうで、
そこには浩もいた。
お姉ちゃんは不思議そうに見る私に、忍くんに告白してもらったの。と笑顔で言った。

「オーラは前から感じてた。」
「同感です。」
浩の機嫌が治らない。
しょうがないか。
「菫さん…。迷惑だろうな。言ったらさ。」
「」
何も、言えない。
なるべくなら言って欲しくない次の言葉。
「なんて人を好きになったんだ。オレは。」

…なんで言うかな。
それは私の台詞でもあるんだよ?浩。
でも、それを口に出すことは、できない。
私がしなきゃいけないのは、あなたを悩ますことじゃない。
励ますこと。だから

「じゃあ浩は後悔している?お姉ちゃん…好きになった事。」
「…。ん〜。」
「即答しないってことは、後悔して無いんだよ。
お姉ちゃんきれいだし、優しいし、私は、誇りに思っている。」

いくら、私の大好きな人が、お姉ちゃんの事を好きでも。

「だから、好きになっても、しょうがないと思うよ?
たとえ望みの無い恋でも」

はい。恋してます。望みの無い恋。

「恋しちゃったら、止められないもん。」

私も。ね?

「そうなんだよな〜。もう好きだね。菫さん。
そういえば誕生日近いよな?」

私の誕生日は?浩。私の誕生日も近いんだよ?
菫の誕生日の丁度10日後が、冬菜の誕生日。

「近いね。今年も、何かあげるの?」
「ん〜。兄貴いるしなぁ。おめでとう。は、言うけどな。」

私には?何も言ってくれないのね?
いいよ。別に。
寂しくなるから、言わないで欲しいかも。
いくらさびしくても、私は…閉じ込める。この思いを。
いくら心が暗闇になってしまっても、
もう二度と光が入らなくても、
私は後悔しない。どうしようもないもん。
浩。浩ならわかるよね?この気持ち。。



「冬菜っ」
冬菜は今しがた終った授業の道具を片付けているとき、誰かに呼ばれた。
振り返るとそこには、冬菜の女友達である雪がいた。
「ん?どうしたの?雪ちゃん?」


「あのね、話聞いてくれないかな?」
「いいよ〜。私も聞きたい。」
こうして私達は廊下にでて話をする。
さすがに、外は寒いから。。
さっき出たけどね。

雪には彼氏が出来た。その彼氏との話を聞くのが、冬菜は好きだった。
誰かが大好きな人との話をしてくれると、
誰かと、大好きな人との絆や愛がわかる。
そして、幸せだというオーラが出ていると、冬菜は幸せな気持ちになる。
だけど、お姉ちゃんに彼氏が出来たとき、私は、幸せだとは思わなかった。
大好きな人が失恋する瞬間を、目の当たりにしたから。

決して自分には訪れない幸せ。
だけど求めるから、他の人の幸せで、代用しているのかも、しれない。



「冬瓜さん。ちょっと良いか?」
「?はい。」
私が雪と話をしているとき、クラスの男子(革延 正也 (かわのべ まさや))に呼ばれた。
「何?」
「ここじゃちょっと・・・。次の休み時間、ちょっといいかな?」
結構良く話す奴だけど、呼び出すなんて、、どうしたんだろうか?
「?うん。いいけど?」
「サンキュ。じゃあまたあとで。」
「おっけー。」
いったいなんの用事だろう?

次の休み時間、革延くんに人気のないところに誘導される。
革延君は、ぴたっと止まり、私に向かって真剣に言った。
「冬瓜冬菜さん。オレと付き合ってください。」

え?

ちょっと?ビックリする。
急に言われるなんて・・・。
今まで意識なんて、これっぽっちもしていない。
だが、意識をしても変わらないものも、ある。

「ごめんなさい。私、付き合えません。
 革延君の事、好きじゃないから。」
「そっか・・・。ありがとな!」

冬菜は首を横にふる。
大切な友達だからこそ、つらい。

「そんな悲しそうな顔すんな。
 あいつの側にいるときみたいに、辛そうな顔、しないで欲しい。」
「え?」
言われた意味が、わからない。
あいつ・・・って誰?
誰の側にいると、つらそうな顔するの?
意味不明の私に、革延君はちゃんと言ってくれた。
「柊浩の側にいると、革延さんは、辛そうだよ?」
「!っ。ね、ねぇ!それって誰でもわかる?」
「んや。多分判らないと思う。俺も気づいたの最近だし。」
ほっとする。
気づかれてたら、と思うと怖かった。
「そ、そっか。じゃあ、いいや。」
「ごめんな。困っただろう?」
「う、うん。ご、ごめんね!」
「だいじょうぶ。ありがとな。」
彼の優しさに触れた瞬間だった。
「っうん。」
そのあと革延君は、冬菜って呼びたいって言ったから、OKして、私は革延君の事を、
正也と呼ぶ事になった。
恋愛対象から外れた私達は、今まで以上に素晴らしい友達になれるだろう。
ただし、
雪から言わせれば、付き合ってるように見えると言われた。

そしてやはり、それは浩も思っていたらしかった。
「な〜冬菜?」
「ん?」
「お前さ、正也と付き合ってるんだろ?」
思わずため息がこぼれる。
「違うってば。付き合ってないよ。」

浩はすごいびっくりしてる。
そこまでびっくりするの?
そこまで?
ねぇ浩、浩は、私が正也と付き合うほうが、いいの?

「そうなのか〜。いや。付き合ってるなら教えてくれても。と思ったんだけど、違うのか。」
「ん。」
「じゃあなんで付き合わないんだ?」

やっぱり、付き合うほうがいいんだ?
「浩は、私が正也と付き合うほうがいいんだ?」
「ばっ!ちげぇよ。」
「何が違うのよ!」
「だって正也いい奴じゃん?なんでお前付き合わないんだ?」
「やっぱりそうじゃない!」
「だ〜も〜。違うっつの!
 勝手に解釈するぞ?お前好きな奴いるんだろ?!」

ドキ!
ご、ごまかすこと=最高♪

「正也〜〜。」
「おいっこら!」
聞こえないフリ=完璧♪

私は正也を誘って廊下に出る。
「ごめんね。急に。」
「別にかまわないけど、そっか〜。」
「え?」
「お前好きなのあいつだろ?」

まさか、気づいた?

「あいつって?」
「浩。柊浩だろ?」

気づかれた。だけどね。

「まっさか〜。ありえないし?
 なんかずっと近くにいすぎて、対象外。」
「そうなのか?」
「うん!」

正也はそれで納得してくれた。
ありがと。それと、ごめんね。だまして。







日がたつにつれ、オレは冬菜を頼りにして言った。
ある日は、
「ったくよ〜。毎日さ〜。」
「・うん。」

またある日は、
「いい加減にしろって思うんだ。」
「うん。」

他の、ある日は、
「あ〜むかつく!」
「うん。」

別の日も
「でも似合うんだよな。二人。」
「ん。」

他の日も
「幸せそうなんだ。二人。」
「ん。」

って、いろいろオレは冬菜に言って来た。
冬菜は励ましてくれたり、静かにオレの愚痴を聞いてくれたり、
いろいろしてくれて、

だんだん、なくなってきたんだ。
菫さんが好きだって気持ちが。

あと少しで、オレはふっきれそうなんだ。

そんな時だった。

「ただいま。」
「?どうしたんだ?兄貴。」
兄貴は菫さんの所から帰ってきて、妙に不機嫌だった。
「別に。」
兄貴は明らかに怒って部屋に入って行った。
オレは冬菜に電話した。
『もしもし』
『冬菜?』
『浩?』
『あー。どうしたんだ?』
そう言うと冬菜はため息をついたんだ。

やっぱり何かがあったんだ。
『よくわかんないけど、喧嘩したみたい。
 でも多分、すっごいささいなことだよ。』
『そっか。』

そのあとすぐ電話を切って、俺は自分の部屋でぼーっとしている。
菫さんがすっごい好きなときだったら、喜んでたと思うけど、、
今は、どうだろ。。
なぁ。オレ?


次の日の朝、菫さんのところには行かないで、
兄貴は先に行った。
「もう別れる。」
そう言い残して。
しかたなくオレは一人で菫さんと冬菜のところにいた。
「・・・。」
すごく気まずかったとき、冬菜が急に、言ったんだ。
「ごめん。先に行く!」
「「え」」
オレと菫さんは驚く。すると冬菜は菫さんに耳打ちして、
そしたら菫さんがわかった。って言って、冬菜は先に行った。

「・・・。」
「・・・。」
「私達、もう駄目かもしれない。別れると、思う。」

そう切り出した菫さん。
オレは、どうしていいか判らずに、しばらく黙っていた。
すると菫さんはまた言う。
「で、でもね。私、やっぱりね、まだ、忍君が、好きなんだよ。っ。」
そう言って泣き始める。

・・・。
あぁ。そうだったのか。
そうだったんだな。なぁ冬菜。

菫さんは顔を、オレの肩に埋める。
そしてオレは菫さんの頭と背中をぽんぽんとたたく。
—大丈夫。きっと、大丈夫ですよ。—
そうつぶやいたら、菫さんは、いっそう涙を流して、ありがと。と言った。


学校につくと、菫さんは先に行った。
「おい。浩。」
俺を呼びとめたのは兄貴。
「んぁ?」
「ちょっと来い。」
だいたい判るけど、オレはだまってついていった。
終わりに、するために。

「お前、菫に何したんだ?」
「なんの事だよ?」

「今朝、抱き合っていただろう?」



時はきた。

「オレは菫さんがずっと好きだった!」
「!!」
「でも、わかったんだ。今日。
菫さんの心の中には、兄貴以外、いないんだ!」
「!!」
そしてオレは笑いながら言う。
「菫さんを幸せに出来るのは、兄貴だけなんだぜ?
 すっごいよな。」

オレのコトバにあっけにとられていた兄貴は
一度下を向いて、
「サンキュ」
とだけ言って去って行った。
きっと謝りにでも行ったんだろう。
でも、いいんだ。

オレは、もう、先に進める。
そして、心から、二人を応援できるんだ。

それが誰のおかげか、オレは手に取るように、わかったんだ。

だけど・・・。

兄貴はそれから菫さんと仲直りをして。
冬菜も喜んでいて。
だけどなんだろう?
冬菜の様子がちょっとおかしい気がするんだ。

オレの予感。それは、的中した。


「あれ?」
いつものように兄貴と一緒に冬菜と菫さんのところに行った。
「どうした?」
「ん?なんでもない。。」

冬菜が、いない。。
いつもある靴がない。
いつもカーテンが開いてるのに、開いていない。

まぁいいや。

でも、その選択肢は間違っていた。

学校に着いて何かやるせない感じを受ける。

そうだ。いつも冬菜がいて、
いつもオレの愚痴を聞いてくれた。
でも、なんで皆勤賞の冬菜がいない?
どうしてだ?

わけがわからない俺に、正也が話しかけてくる。
「おい。」
「ん?どーした?」
「今日、冬菜がいないよな。」
「おー。俺も不思議だったんだ。朝行ったら、靴もないし、カーテンも開いて無いし。」

あっけにとられた感じで、正也はオレを見る。

「まさかと思ったけど、おまえ、何も聞いてないのか?」
「・・・え」
「あいつ、もう、ここにはいないんだぞ?」


「は?」

冬菜がいない?ここに?どういうことだ?

「おいっ浩!ホームルーム始まるぞ!!」

オレは呼び止めるのもお構いなしに、兄貴の所へ行った。

「兄貴!」
「え・浩?」
ホームルーム中だったが、兄貴と菫さんは教師に外に出て話すことを許された。
きっと菫さんが教師の所に行った時に、言った「妹のことだと思うのですが。」
という言葉に、教師はOKを出したのだろう。

なんなんだ?どうして?
どうしてなんだ?


「どうしたんだよ?浩。」
「どういうことだ。。。」
「え?」
「どうして冬菜がここにいないんだ!!」

「え・・・浩・お前まさか・・・」
「やっぱり。。」
「菫?」

「ちゃんと話すから、昼休みに屋上で。」
「菫・・・さん?」
「お願い。」
「・・・。」

オレは了承してクラスに戻る。
昼まで授業に集中できなかった。


昼休み、オレは屋上へ駆け上がる。
どういうことなのか、オレははやく知りたかった。

バン!
屋上の扉を開くと、二人はすでにそこにいた。
「早かったね。浩くん。」
「・・そんなことはどうでもいい!どうして!」

「・・・。お前、何も聞いてないのか?」
「え?」
「多分・・・あの子は言ってない。」

そういう菫さんは、更に続けた。

「言いたくないって、言ってたから。。
浩くん。冬菜はね、あの子は、私の妹じゃなくて、いもうとなの。」

「え」

「冬菜は、私と、血がつながってないの。
冬菜だけ、別の家の子。」

「そのことを知らなかったのは、あの子だけ。
でも、私と忍くんが付き合う事になった日の夜、
あの子は気づいてしまったの。
本当の事に。」

「ずっと悩んでいたけど、両親がすでにいないことも知った。
そして、あの子は祖父、祖母に当たる人に会いに行ったの。
面影がそっくりだった見たいで、泣きだしちゃったって言ってた。
そして、祖父祖母に当たる人が、残り少ない人生を、一緒に暮らしたいっていったの。」

「そしてあの子は、私達が引き止めるのも聞かないで、
向こうで暮らすって決めちゃった。
出発したのは、昨日の夜。」

オレは、どうしていいか、
いや、どうしてなのか、
判らなくて、
判りたくなかった。

オレにだけ言わなかったんだろう。
だって正也は知っていた。
きっと雪さんも知ってる。

どうしてオレにだけ言ってくれなかった?
オレが、菫さんの事、ずっと悩んできたのを知ってるからか?
オレに、悩ませまいって思ってたのか?
オレは、お前の苦しみを、増していただけか?
冬菜・・・っ。



「本当にいいの?」
「いいの。お姉ちゃん。」
「ん?」
「大好きだよ。いままで、ありがと。」

さよなら、
さようなら。

浩。




冬菜がいなくなってからもうどれくらいたっただろう・・。
オレは成長し、兄貴と菫さんは結婚する事となった。
そして、今日は結婚式だ。
身内だけど、いまさら感動なんてものは、オレには無かった。

そんなときだった。

「冬菜?」

冬菜に似たきれいな女性が一人いた。
嫌そうな顔をして。
不思議に思って見ると、目の前に男がいた。
きっとナンパでもされたんだろう。。
でも、ナンパしたくなる気持ちが、よくわかる。
もし冬菜ならば、あの頃より、きれいだと思うし、
髪も伸びてた。

どっちにしろ、助けなきゃな。

「おい。お前。」
「あ?」

「その人から離れろ。嫌がってるじゃないか。」
「んなことないよなぁ?」
そう言って顔を近づけようとしたから、俺はそいつを止めた。
「やめろって。」
「うっせぇな!」
そう言うと俺に殴りかかってきたけど、
オレ、何げにいろいろ武術やってるぞ?

一瞬後?
そいつは地面とキスしてた。

「大丈夫か?」
「え。あ。はい。ありがとうございます。」
「とりあえず、そいつ起きるとまずいから、離れるぞ。」
「あ。はい!」

とりあえず、俺達はそいつから離れた。

「ありがとうございます。助かりました。」
「なぁ、君、名前は?」
「え?」
「ちょっと確認したい事が、あるんだけど?」
「・・・。冬菜です。慶坂冬菜(けいざか ふゆな)」


苗字は違っていたけど、声とカンで、オレは冬菜だって確信する。
「やっぱり冬菜か〜。」
「え?」
「オレ、柊浩。」




「え・・浩?」
「お〜元気だったか?」
「いいの?」
「?」
「結婚しちゃったよ?」
ちょっと意味不明。
だけど、すぐに意味がわかった。

「大きい喧嘩したろ?お前いるときに。」
「うん。」
「そのときに、もう、ふっきれてるから、平気。」
「・・・。」
「お前、彼氏は?」
「え?」
「彼氏。今、ナンパされてたろ?
ってことは、人気あるんだろ?」

「浩は?いないの?」
「いないぜ?別に。」
「そっか。」
「で、いるのか?彼氏。」
「・・。」

その後も何度かつつくが、答えようとしない冬菜。
オレには言えないか?何も。
何も言えないか?冬菜っ!
ドン

「きゃ!」

オレは冬菜を壁に押し付ける。
「オレには何も言えないか!冬菜!」
「こ、浩?」
「オレにだけ何も言わないで消えやがって!
オレには言っても無駄か?!冬菜!」
「そ、そんなことは・・・」
「じゃあいるのかいないのかぐらい、教えたっていいだろ?!」
「・・・。」

「っ!言うまで帰さないからな!」





「じゃあ、言わなければ、ずっと、側に、いてくれるんだ。。」

「え」


「嘘だよ。嘘。嘘だから。」

「本当に嘘か?」
「うん。」

「冬菜〜〜〜!?」

俺らの緊迫した空気を破るような声で、乱入して来たのは、知らない女。
とりあえず、オレは、あわてて冬菜から離れる。

「美樹ちゃん・・・」
「美樹ちゃん?」
「あ。はじめまして〜。冬菜の友達の美樹です。
菫さんのいとこの友達の姉の友達の妹です!」
「長いな・・・。」
「あはは。ところで、あなたは、ココでの友達?」
「ココでって?」
「だって、冬菜、ココから今のところに来たんでしょ?」
「そういうことか、あー。そうだけど?」


「てことは、冬菜!この人が例の好きな人?」
「は?」
「バっ違うよ!!」
「本当?!えっと、お名前は?」
「浩。柊浩ですけど?」
「な〜んだ。やっぱりそうなんじゃん。って、冬菜?」

冬菜はいなかった。俺は急いで探す。

好きな人?オレが?冬菜の、好きな、奴??


冬菜がいた。逃げているように、見える。
んじゃなくて、多分、逃げてる。。
冬菜・・冬菜・・・・・・冬菜っ
「冬菜!」
「ゎ。」

冬菜の事を捕まえる事に成功したのは、俺。
逃げ切れなかったのは、冬菜。

「冬菜。」
「っもう、わかったでしょ!!」
俺が名前を呼ぶと、冬菜はそう叫ぶ。
冬菜のいい方に圧倒されて、手を離した。
「もう、いいから。じゃぁ。」

なんだろう。胸騒ぎがする。

もう二度と、冬菜に逢えなくなりそうな…

「ぇ」

オレは冬菜の手を掴んで、冬菜を、抱きしめる。

「ちょ!やだ!」
冬菜はオレから逃げようとする。
だけどオレは、離したくなかった。
離しちゃいけないって、オレは思った。

「やだっ離して!!」
「いやだ。」
「なんで!!」
「もう、永遠に、冬菜に逢えなくなりそうな気がした。
そんなのは、いやだった、」

冬菜は今まであふれそうだった涙をついに流して、
そして、また、叫んだんだ。

「好きじゃないのに、こんなこと、しないで!!」
「いやだね。」
もう、二度と会えなくなるなんて、いやだから。
予感にしても。なんにしても。
「もう浩なんて・・・・だいっ嫌い!」


グサ・・・


「俺は、多分、冬菜が、好きだぞ?」


多分じゃ、きっとないから。冬菜
「今、一番、俺の人生で一番傷ついた。
それだけじゃなくて、冬菜の笑顔見ると安心するし、
いつも笑っていてほしいし、
なにより、そばにいてほしい。
・	・・
俺、やっぱ、冬菜が、好きだ。」

好きだと自覚すると、恐ろしいもんだ。
今抱きしめてることに、すごい幸せを感じる。

「なんか、幸せ、だ。」
そういって、俺は抱きしめる力を強める。
もう二度と、離してやるもんか。そういう気持ちがこもってたかもしれない。
「こ、浩?!」



「冬菜〜?」
「みっ美樹ちゃん?ちょ。浩?離して!ってば!!」
冬菜はもうきっと逃げないと思う。だけど、離したくなかった。
心地よすぎるから。
「え。いやだ。」
「ちょっと、浩!お願い〜〜。」

「あ、うまくいったんだ。熱々だね。」

俺はとりあえず、幸せにひたっていたけど、次の言葉で、かなり怒りを覚える。

「でもよかったじゃん。冬菜。これで、お見合い断れるよ?」


「見合い?!」


親友の美樹ちゃんは私の一番口にしてない言葉を口にした。
だから浩が〜〜・。

「冬菜。ちょっと来い!」
「え」
「あ、私がどっかいくから平気〜。」
「え」
「そっか、悪いな。じゃ。」
「え」
「うん。」
「えーーーー」


ちょっと・・・どういうことよ。親友!!
親友〜〜〜〜。


「で?どういうことだ!冬菜!!」
かなり怒りモードの浩。
怒りモードをさらに悪化させないために、私は話すことを決める。

「おじーちゃんと、おばーちゃんが、死ぬ前に、結婚式が見たいって言い出したの。
それで、見合いをしろっていうんだけど、
どうしても、いやで・・・。」

「なら、なおさらかえすわけにはいかないな。
よし。俺の親に言うから、お前今から彼女な。」

「え゛」


もう離す気なんて、さらさらないし。
さてっと。

俺は冬菜を引きずってあるいた。
「え。ちょ。やだっ歩く!歩くよ!!」
「じゃあ歩け。ほい。」

俺は冬菜に腕を出した。
「なにこれ?」

「うで、組むもんなんだろう?」



「やだ。」
「?」
「手、つなぎたい。あと、もう一回、言って?なんか、流された。」
「ほい。」
俺が手を差し出すと、冬菜はそれをにぎった。
「冬菜が好きだ。だから、俺と、付き合ってくれ。」

「・・うん。」


私たちは手をつないで歩き出した。

そしてそのままやっぱり浩の家直行で、久しぶりに浩の両親にあった。
浩の両親は懐かしがってくれて、私も再会を喜んでいたけど、
「冬菜、俺の彼女だから。」
「え・・・。あんたなんかでいいわけ?」
「どういう意味だよ。母さん。」
「え、だって冬菜ちゃんかわいいじゃない。」
「ねぇ。」
「そんなこと、ないですよ。。」
「冬菜は俺がいいし、俺は冬菜がいいんだよ。」
「ほんとにうちの浩なんかでいいんですか?」
「え?あ。はい。浩が、いいです。」
恥ずかしかったけど、そういうと、浩の両親は、うちの浩をよろしく。そういった。





しばらくたってから、結婚したって話は、
わざわざしなくても、いいよね?







end