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二つの顔を持つ女の子が書きたかったんです。でもその子は無理して二つの顔を持ってる。そして、男の子がその子の心を癒して…。そんな考えから出来ました。



There was always that person near me.



ほっといて。
これが私の一番の願いでもあり、一番私をつらくさせるものでもあった。

少女の名前は譜瀬島李李菜(ふせじま りいな)。
今20才。
彼女は、誰からも、愛して欲しくなんてないって思っていた。
それは本心であって、本心ではなかった。

李李菜は大学では一人ぽつんと皆から離れて座り、授業をうけている。
もちろん、それが他の人達の注目を集めている事を、彼女は知らない。そして彼女はとてもかわいいが、ソレも自覚なし。
ほとんど話しをしないのだから、そういう情報も一切入ってこないのだ。

「あの、譜瀬島さん?」
「・・・。」
「今日、飲みに行きませんか?」
「忙しいので、ごめんなさい。」
かならず断り、彼女は去って行く。

ちなみに、男の子達が話しかけてくるのは、誰が李李菜を落としてヤれるかを競っているからで、それをわかっているからこそ、李李菜は逃げた。

李李菜に声をかける男の人の中にも、例外はいた。たった一人だけ。
「よぉ。またナンパされたのか?」
「・・・。」

李李菜の反応は同じ。だけど
「おい。」
そう言って手首を掴む。その男。
「・・・。何か用ですか?翔寿さん?」

燗野宮翔寿(かんのみや かず)は、李李菜の大学の先輩で今25歳。ちょっと人気ある男の人。
初めて会ったのは、入学したての頃。
そのとき李李菜は18で、翔寿は23だった。




「よぉ。お前が譜瀬島か。」
やばいと思ったのはきっと本能。だけどもうすでに周りを囲まれていて逃げる事が出来ない。
この人はきっと、私を落として誰がヤれるかを競うのに参加して強引にってタイプ。
やばい。
李李菜に声をかけてきた強引タイプの人は結構人気があって、何げに護身術を心得ている李李菜であるが今回みたいな数を相手する場合と、相手が人気があるから公衆の面前で投げるのを目撃されると後が痛いのだ。

「ほぉ〜結構可愛い顔してるじゃん。」

いろいろ考えたけど、後ろ3人前1人に抑えられ、しかもその外にもちょっといるこの状況で何をしても無駄だと思った。

よし。ヤられたら自殺してやる。
これでやっと開放されるし。

譜瀬島李李菜。人生の終わりが近づいています。
何も言えない自分が、、もう。嫌

ちくしょ〜見てないで誰か助けろ!

「ちょっと待てよ。」
え。。まじで?やったぁ。助けてくれそう!
「あ?なんだ。翔寿か。今オレはコイツに用があるんだ。ちょっと待ってくれ。」
「そいつに用があるのは、オレのほうだ。」

ちょっと待って?
確かに助けてくれとは言ったけど、これってやばいんじゃぁ。

と思って数秒。私の体が一瞬浮いて、気づいたら目の前に翔寿?さんの顔。
格好いい。。この人。
すとんって私を降ろすと小声でささやく。
「お前逃げるのと、やるのとどっちがいい?やるってのは、お前の特技を使って、オレと協力して倒すって選択肢だけど。」
ようするにこの人は私がそれなりに出来るって事を知ってるんだ。
なるべくなら大学の人気者一味を(しかもこいつらもそれなりに出来るから)ボコボコ…。にはしたくない。
「…逃げたいです。」
本心を言うと、翔寿さんはにっこり笑ってうなづく。
「じゃあ逃げるから。」
「はい。」

翔寿さんは急に私の手を取って走り出す。
「きゃあ!」
「ごめん。急すぎたな。」
「だっ大丈夫です!」

何げに私、足も早い方だから、
巻くのに時間は…かかったんだな。
「車で追って来そうな気がするなっ。」
「現に追ってきてるじゃないですかっ」
本当に追ってきた。そこまでしてアノ競争に勝ちたいか。お前らは。

そう思ってると翔寿さんがタクシーを止めて○○まで。って言った。早すぎて聞き取れなかったけど。


翔寿さんが止まったのは私の家の近く。
なんでやねんっって思ったけど、タクシーが止まったところのまん前の家に翔寿さんは私を引っ張って入っていく。
表札は燗野宮。

「ただいまっ!」
「?おかえりなさい。あら。可愛い子ね。」
笑顔で私達を向かえたのは話からすると、翔寿さんのお母様だろう。
「今から同じ大学の奴が来るけど、絶対に入れるなよ。ついでにオレも手伝うから追っ払うの手伝ってくれ。」
意味がわからない。いったい・・・ただ、かくまってくれることは事実らしい。それだけでも、随分心が楽になる。
「見るからに、いかつい人?」
「そう!」
「あらあら。可愛そうに。原因はこの子ね。」
「ん。」
「母さん一人で大丈夫よ。20人もいないでしょ?だから側にいてあげなさい。」
「サンキュ〜。」
わけの判らない会話が終って私を引っ張って2階にあげようとしたため、とりあえず
「おっおじゃまします!?」

礼儀だし?

私は(多分)翔寿さんの部屋に入れられるとちょっと気抜けした。

「あ、ありがとうございます?」
「ん。どうしたしまして。と、はじめましてだよな?オレは燗野宮翔寿。お前が譜瀬島李李菜だろ?」

「…はい。」
私の名前はどうやら有名らしい。でも…と思い直し一歩後ろへ

「?どうした」
「あの人達と協力して、私を家に入れた…って可能性もありえると思ったので。」
一瞬すごく寂しそうな顔をした翔寿さん。

「…ぇっ?!」
私の腕をとった翔寿さんは、私を引き寄せるんじゃなくて、彼の方から寄ってきて包み込むように、優しく抱きしめてくる。
よける事は出来たけど、あまりにも予測出来ないことで、そして、なれてなくて…
「・・・やっ!」
そう思って突き飛ばそうとするけど、優しく抱きしめてくれている割には結構しっかり…
「離して下さい!」
ごめん。そんな風に思っちまうってのは俺らのせいだな。ごめんな。でも、世の中、そこまで悪い奴が多いわけじゃないから。  今日みたいな感じの奴だったら、また、助けるから。頑張れ。
「ぇ・・・」
パタパタと階段を上ってくる音が聞こえて彼は私を離す。
囁くように言われた言葉。
そんな感じの事を言われたのも、抱きしめられたのも初めてだった。放心状態の私は、翔寿さんを見つめることしか出来なくて、

「翔寿〜。終ったわよ。あ。もう出て大丈夫だからね。」
「あ。ありがとうございます!お邪魔しましたっ」

そう言って李李菜は俺の家から出て言った。この近所にある彼女の家に。

「翔寿、あの子が例の子?」
「そう。」
「なるほど・・・ね。」
「なんだよっ」
「別になんでもないわよ。」


この事件以来、私は翔寿さんにことごとく話しかけられた。
何度も何度も無視しても、なんども何度も…。

「なにか用ですか?は、ないだろう?」
そして苦笑して私に一歩一歩近づいてくる。あのときの恩があるし、あの時も助けてくれたから、この人は私に対してひどいことはしないと私は考えている。だから?安心とまでは行かないけれど、私は壁を少しだけあけて、彼と話す。

「特に用事もないけどさ。もう帰りか?」
「?はい。そうですけど?」
「家ってもしかしてオレの近所だったりするか?」
急にそんな質問をされて、はっきり言って困った。だけど、なぜなんだろう?私はさらっとなにも考えずに「そうですけど」と口にしてしまった。
どうしてなんだろう。だめだよ。李李菜。心を開いちゃ・・・・・・・だめだよ。

「一緒に帰らないか?」
「申し訳ないのですが、急いでますので、失礼します。」

大丈夫。大丈夫だよ。まだ、頑張れるから…頑張ろう?

なにに対してなのか、なにを思ってなのか、私にはぜんぜん…わからなかったけれど、自分を励ます言葉を他に思い浮かべることはできなかった

家に帰ると、私を待っていたのは…

「お帰り!李李菜ちゃん!」
「ただいま。暁美(あけみ)ちゃん」

少し小さい、私のいもうと。
大切な・・・大切ないもうと。

「今日は一緒に公園に行きたい!」
「じゃあ、行きましょうか。暁美ちゃん。」
「うん!」
最高の笑顔で彼女を私は受け入れる。壁を作らないように、精一杯の努力を重ねて生まれた私の最高傑作。
私の笑顔を見られるのはこの子だけだと言っても、それは嘘にはならなかった。

「あれ?譜瀬島李李菜?」

公園で暁美ちゃんと遊んでいると、そう話しかけられる。後ろから話しかけられているけれど、誰が私にそう言ったのか、私にはすぐにわかった。

まずった。これは…

「ごめんね。ちょっとこのおにいちゃんとお話があるから、先に暁美ちゃんのおうちに帰って居てくれるかな?」
「?うん!わかった!」

暁美ちゃんは、まっすぐ家に向かって行った。

「何か用ですか?翔寿さん」
「えらい変わりようだな。新たな一面の発見てとこかな。」
そう。私を呼んだのは、翔寿さんだった。
「私、急いでますので。」
「待てよ」
たち去ろうとする私を、彼は呼び止めるだけではすまなくて腕を掴まれる。
「嫌!」
すぐに振りほどくけど、彼は私をじっと見ていた。その目があまりにもまっすぐで、どうしていいか…わからなかった。

「どうしてあそこまで違うんだ?俺の前と!あの子の前で!」

関係ないから・・・
「あなたには何も関係ない!」

今度こそ、私は去った。何も話せないことを悪いとは思うけれど…ごめんなさいも、私には言えない。



「いい加減うざいのよ!」
ダンッという音と共に叩きつけられる。壁にあたった背中が痛かった。
理由は簡単。また賭けに勝とうとした人が、私に言いよったから。ただ運が悪かったのは、その人には彼女がいた事。
どうして人間のクズみたいなあんたが!生きてるのよ!」
どうしてこんなところにいるのよ?!」

「なんで譜瀬島家なのよ!?」

ワタシガイチバンシリタイ。

譜瀬島家…。金持ちの家庭。なにもフジユウなく、そして世の中低迷しているのに、譜瀬島家は、それを微塵も感じさせない。批判の対象でもあった。


「おいっお前ら?!なにやってんだよ!」
「あ。燗野宮先輩…」

「あ!李李菜!」


なにも聞こえないわ。何も。
聞こえないの。


彼女がひどい目に会わされているのを見たのは、偶然だけど、とてもよいことだと思った。
オレがとめに入ると、彼女は真っ先にその場を離れる。きっと向かった先は家。あの笑顔が出せる家庭だから、きっとソコに帰ったはずだ。俺は彼女の後を追った。
だけど、彼女は家の前を通り過ぎた
そして、人気のない方向へ向かっていく。どうしてだ?どうして家に戻らない?そんな疑問を抱えながら、俺は彼女を追った。


「ふ・・・」
やっと見つけた彼女は、顔を覆って河原にいた。時折聞こえる少し高い声は、彼女が泣いている事を、オレに教えてくれる。

「どうして家に戻らない?」
彼女の隣に腰を降ろすと同時に、オレは彼女にそう聞いた。
一瞬ビクッとなったけど、彼女はいつもの口調で…だけど少し涙声で、ただ単にこういった「あなたには関係ないです」と。
それ以後、彼女はなにを聞いても口を開かなかった。
なんて…なんて弱いんだろうコノ子は…。
そう…心から思ったんだ。

ぎゅ

身体に急に感じる圧力。私より大きい人の感触。翔寿さんに抱きしめられているということを私は知る。
不思議と嫌ではなかったけれど、この空間に落ち着きたくなかった。

手も回さず、私は無反応を決め込んだ。

「ったく、無理やり開かせるぞ。」
そう言うと、俺は座っていた彼女を地面に押し倒す。平和的な方法じゃないことぐらいわかっていたけれど、俺は知らなければならなかったから。
「ゃっ!」

私が多少デキルのを知った上で、足、腕の攻撃を防ぐように、押さえつけられる。

「なんで家に帰らないのか言わないと、キスするぞ。」


いくらそう言っても、彼女は顔を背けたまま、俺の言うことを聞こうとはしなかった。


「じゃあいいんだ。」
そういうととても器用に片手で私の両腕を押さえながら、あごに手をかけられる。


少しずつ、だけど確実に、翔寿さんの顔が接近してくる。
嫌がらせ?私には、わからない。


だけど、このままだとキスされてしまう。
だけど・・・



吐息が…かかる……


「やめてっ!」

寸前で、私は彼をとめた。

彼女を一度凝視してから、俺は彼女からどいた。
ただ、手は離さなかったけど。(もちろん握手みたいな形で、さっきのとは違う。)

「手は…離してくれないんですね。」
「まーな。」

もう逃げられない。そう思いながら私はずっとココに居た事を思いだす。早く帰らなければ、譜瀬島家の人間が心配するだろう。だけど今は・・・帰りたくない。
嫌だけれど、目の前のコノヒトにお願いするより仕方がない。

「今日、泊めてもらえません?」
「……………………は?!
思いっきり大きな声を出して、彼は驚いた。
「っ!」
その顔がいつもと違いすぎていて、思わず笑ってしまった。
「おいっ!」
「ごめんなさ・・・っ」

久しぶりだな。こんな風に、笑うのは…。いつから笑えなくなった?いつからこんな風になった?
…それはずっと昔から。


とりあえず翔寿さんから了承をもらった私は、翔寿さんの家にあがらせてもらった。
「お邪魔します。前はありがとうございました。
「いいえ!気にしないでね!」
「いえ・・・ありがとうございます。ところで、お電話お借りしてもよろしいですか?」
「いいよ?」
後ろから突然言ってくれたのは、翔寿さん。私は普段はめったに見せる事のない微笑を彼に向けて浮かべながら、深呼吸して、受話器を取った。


「もしもし。李李菜です。…ハイ。すみません。…はい。…っはい。失礼いたします。」

私は不信そうに見られているのを判りながらも、翔寿さんと翔寿さんの部屋に向かった。

「どうしたんだ?さっきの電話。」
「今日は家には帰りません。心配かけてすみませんっていう、電話。」

んなこと一言もいってないじゃねぇかよ。そういう声が聞こえてくるようだった。
実際、そうなのだから。

私が帰りませんと言ったわけじゃない。
「もう帰ってくるなとか言われたわけか?遅いから?」

「ぇ」

嘘…な…んで?

「だってよ〜。譜瀬島家の長女がこんな時間に帰ってたのを見られたら、家名にかかわることじゃねぇかよ。」

なるほど。世間一般の常識ってやつか。でも…嬉しいと、思ってしまったよ。
窓際へ向かう私。窓を、あけた。
「譜瀬島李李菜?」
「李李菜で、いいです。」
「じゃー李李菜。中が見えるから、閉めろ。」

「じゃあ家の中を暗くしましょう。それで、いいですよね。」
すがっていられるのは、もう星空だけ…

「ったく」
そういいながら彼は部屋の電気を消してくれた。


「私が、彼女達に言われた言葉を、覚えてますか?」

ずっと考えてきた疑問


「私も、疑問に思ってました。ずっと」

どうしても、嫌だった


「そして、ずっと…ずっと譜瀬島李李菜が嫌いだった」

つらかったその名前が






「私の家を知っていて、私の家族構成もだいたい把握しているあなたならわかりますね。」
「ばれた?」
「勘だったんですけどね。」
「な・・・」

「嘘ですよ。ちゃんと知ってました。でも、あなたが興味を持つ子は、私じゃなくて暁美ちゃんじゃなきゃいけなかったんです。だって






私は養子だから」

「ぇ」


言ってしまうと、結構あっけなかったこの事実。だけど私は、それを暁美ちゃんにすら言う事は出来なかった。

「私が養子だから、父と母は私には冷たく、暁美ちゃんには優しかったんです。暁美ちゃんは私が養子だという事実を知りません。だから、一種私のよりどころでもあります。実際暁美ちゃんは大好きです。だけど、父と母は、やっぱり私をいらないと言います。だったらどうして引き取ったんですか?そう尋ねる事は、一度も出来ませんでした。」

「じゃあどうしてオレとか、他の人の前ではあんなに?!」
あんなに冷たいのか。どうして接触をさけるのか。

「私が“譜瀬島李李菜”だからですよ。」
わけがわからないといった顔で私をきっと見ているだろう翔寿さんに答えるように、私は静かに口にした。私の中で絶対的なタブーだった言葉を。

「私をいやいや養子にした人の名前は譜瀬島。そして私は譜瀬島李李菜。その苗字を使う事が私にとって枷だったんです!だけど、養子でも!私の苗字は譜瀬島。誰もが聡呼びます。そう呼ばれるしかなかった・・・だけど私は…っ」
養子としてひきとられた先で私は自分と言う人格を否定し始めて、
養子としてひきとった人達は、私がにくくて、だけど私はその苗字を使うしかなかったから。
そして、笑顔だったのは…
「暁美ちゃんと一緒にいて笑顔だったのは、心配をかけないため、です。」
月明かりの下でよかった。夢のように感じられるから。
どうか私を隠して。本物の光の下に、おかないで…

「旧性は覚えてるか?」
急に尋ねられる。今どうして、と。
「僑逆。僑逆とかいて、キョウサカと読みます。」
忘れるはずがない。大切な・・・私の。

「君はオレに話してくれた。だからオレも話すよ。どうしてオレが君の住所、家族構成を熟知していたか。」
「…どうしてですか?」
「その僑逆夫妻は、もうこの世にはいない。」

「ぇ」

もういない…ずっと、逢えるかもしれないって。ずっと逢えたらいいのになって。一度で良かったのに。もう二度と会えないんだ。。本当の…本当のお父さんとお母さん。。しかもその事実をあっさりと告げられてしまった。。

彼は机の鍵のかかった引き出しから封筒を出した。
「ほれ。見るのは後にしろな?」
「…はい。」


ついにこの時が来たかって、思った。やっと彼女に堂々と近づけるんだ。

「オレが小さい頃、僑逆夫妻は、俺らの家のすぐ側にすんでいた。実際奥さんの方は、うちの母親と仲が良かったし、二人とも護身術とか、いろいろやっていた。俺とお前にそういう才能めいたものがあるのは、そのせいだ。だけどあるとき、もう二度と会う事はないだろうけどって、引っ越して行った。だけどその後もオレはその人達と文通してたんだ。」

思いだす。あの優しかった夫妻との楽しい時間を。実際オレの両親も優しかったから、俺は幸せだった。

李李菜が知らないのも無理はない。そのとき李李菜はあまり外へ出てこなかった。体調がかんばしくなかったらしいし。

「ある時、手紙が来て、もうすぐ死ぬと思う、そしたら親戚の家に預けるって言ったんだ。占い師っぽい才能もあって、そういうのがわかったらしいんだ。そんなオレに預けたのが、ソレ。」

「中味はもうちょっと後でな。」


「知らなかった。私の父さんと母さんが……生きてた時に、翔寿さんの知り合いだったなんて」
「いつも手紙に書いてあるのは李李菜の事だったよ。幸せだって。自分達の死を知ってしまっても、この子には申し訳ないけど、私達は、幸せだったって。だって李李菜に、


逢えたから

って」

「泣けば?泣きたいときにないとかないと。。な?」
「泣きたくなんか・・・ないですから。」
「そんなわけ、ないだろ?」

ぐぃっという音と共に引き寄せられる。抗議のため顔をあげようとすると、顔を翔寿さんの胸に押し付けられた。

あったかい…

今まで抱えてきたものは、きっとそれなりに大きかった。それに気づく事は、しないようにしていたから。そして私は今、それをもうやめていいんだよ?って言われたんだよね。お父さんとお母さんのこともあったし、譜瀬島家の人のことも、もういいのかな・・・

ふと気づく。これが安心するって事だって。もう、いいよね。

いったん流れ出た涙は、しばらく止まる事はなかった。



しばらくしてから、もう大丈夫です。そう言って私は翔寿さんから離れる。
「恥ずかし…。」
「どうしてだ?」
「きっと目、真っ赤だと思うからですよ。」
「どうせ暗いんだからわからないよ。」

オレがそう言うと、彼女は微笑む。

彼女は近くにあったベッドに腰をおろした。
「で、なにがいいたいか、わかるか?」

李李菜は首をふる。
そりゃそうだろう。わかったらものすごい。

「ずっと見てきたんだ。李李菜だけを。見守ってくれって言われたしな。」
「?」
おいおい。まだわかんないのか?オレの…

「で、言いたい事がある。なんだと思う?」
「さっきだってわからないって言ったじゃないですか。」

「こういうこと。」

「?!」

彼女の隣に座って、オレは彼女を抱き寄せる。わけがわからないという顔でじーっと見てくる。きっとまだ状況が把握出来ていないから。

俺は、彼女の肩に顔を埋める。ずっと、ずっとこうしたかった。。

君が、李李菜が
「好きだ」
から。

「ずっと見てきた
つらそうにしている李李菜を見て口に出せない悔しさもあったけど、俺達は接点がなかったから接触すらできなかった。
二度と君に接触できないかもしれないと思ったけど、君はオレと同じ大学に入ってきてくれた。それに何の作為もないって判ってるし、君がやりたい事をやるためにはあの大学がよかっただけだって事も判ってる。
だけどオレは
李李菜…、君が…好きだよ」

「だから、オレと結婚してくれ。そして、オレと同じ苗字になろう。」






どうか…
「嫌…」
そう。そういうことだけは言わないで欲しいと・・・ん?




嫌…か。ま、しょうがないか。


「そっか…ごめん。」

オレは、叶う事のない思いを抱えながら、彼女を離す。





え?



目を疑った。彼女はオレの告白に嫌だって言った。

なのに

どうして?


泣いている…。


まさか
反対?


「本当に、オレと結婚するのは嫌か?」
「・嫌。」

「本当に?」

「やだ。」


何度聞いても彼女は嫌だとしか言わない。
だけどその涙は…?




もし、本当にその意味が真実で…
君を傷つけたら
もう二度と君の前には現れないから。



オレは彼女に顔を寄せて


かるく触れ合うだけのキスをした。







「本当に、オレと結婚したくない?」



「本当。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なわけ、ないよ。。」


「え」

多少期待はしていたけれど、まさか本当に…?



「ずっと、ずっと好きだったの。ずっと翔寿さんが好きだった。誰よりあなたが好きだった!今まで生きてこれたのも、今まで耐えてこられたのも、、すべてあなたのおかげ。それを認めちゃいけないって思ってたから!すべて隠してた!自分自身も気づかないように、一瞬も気持ちを出さないで!だけど私は…私は…っ?!」


衝撃的な告白をうけたオレはいてもたってもいられずに、彼女にキスを送った。最初は触れ合うだけのキスを。そして深いキスも。


君が好きだよ。だから、、
いつでもオレの隣に、いてほしいんだ。


Fin.