メールから始まる恋愛物語



「はい。これ。」
そういわれて私はひとつのメモを受け取った。
「なにこれ?」
私が聞き返すと親友の由良は『アドレスだよ。』と言った。
「そんなの見ればわかるわよ。ただ、誰の?もしかして由良?」
「ううん。違うよ。水雲くんっていう男の子のアドレス。」
私は大いなる疑問を抱いた。
なぜなら私には好きな男の子、山内くんがいるからだ。
もちろん由良も知っている。なぜ好きな人がいるのにわざわざほかの人のアドレスをもらわなければならないのか?
「あのね、この人私の彼氏の友達なの。それで、どうしても撫子とメールがしたいんだって。」
「もちろん言ってくれたよね?私には好きな人がいること。」
「言ったわよ?だけどね、その人、そのことも知ってるらしいの。山内武だろ?って聞かれたもの。」
私はほんの少し顔を青ざめた。
もし本人に言われたらどうしよう?
その思いがとても強かったからだ。というわけで私は由良に聞いた。
「大丈夫よ。言ってないみたいそのことは。でも友達みたい。」
「マジで?」
「うん。とりあえず受けとってメールしてあげて?ね?」
私は由良の頼みとあっては断れないのでしょうがなく受け取った。まったくなんで私が。と思いながら。

その夜そのままほっておいたら、由良からメールが入った。
『メールしてあげた?』
私は少し脱力してメールの返事を返した。
『今からするわよ』
そして私は例のあて先に向かい、送信した。

『なんで私なんかとメールしたいんですか?あと、年齢教えてください。撫子』
しばらくすると返事が返ってきた。
年齢は私とタメだった。本文には、
『今はいえません。だけど、いつか必ず教えます。俺とメールすることに了承してくれてありがとうございます。』
みたいなことが書いてあった。
悪気はないらしいから、とりあえずメールをしてあげることにした。

数日たち由良に会うとさっそく「どう?」と聞かれた。
「結構趣味とか合うみたいで、楽しいかも。」
「そっか〜。よかったね。」
そして由良は笑顔で去った。
由良に言ったことに間違いはないし、本心だった。
だけど、そのときはまだやっぱり山内君が好きだった。

でも、あったことないからかな?
それとも、優しいからかな?
わかんない・・・だけど私は、、
水雲良(みずくも まこと)くんと、たくさんたくさんメールをして、
たくさん相談もした。

しばらくたってから必然的な?気持ちが生まれて、
そして、私は…

「島崎さん。俺と、付き合ってくれませんか?」
「…ごめんなさい。私、好きな人がいるから…その、、ごめんなさい。」

その夜、メールが来た。
『おまえ、どういうことだよ。武ふるなんて、、』
『良には関係ないでしょ。好きな人がいるからふった。それだけ。』
そう。私に告白してきた人は、山内武。
大好きだった人。

好きだった人だよ。
だった人。



『そーだった。気をつけて。』
『は?何に?』
急に言われたその言葉。
私にはよく意味がわからなかった。

しばらくしてから実感する事になる。


『今どこにいる?』
良からのメール。結構切羽詰まっている気がするのは気のせいだろうか?

『近くのUZってスーパーだけど?』
素直に答えるけど、その後返事は来なかった。

「んん!」
そして私は意識を飛ばす。
急に口を押さえられたと思った。
そのすぐ後のこと。


「ん・・・」
気づくと目の前には知らない男の人。
最近拉致がはやっているって言ったけど、、まじですか?

何も言わずに見つめられる。
いい気分じゃない。
何も言わず、動けもしない。
押さえつけられ、ずっと見られる。
しばらくすると、男の人は私の口にキスをしようと顔を少し近づけた
そのときだった。

私の携帯が鳴る。
男の人はびっくりしたけど、すぐに戻って、またキスをしようと
口を近づけられる。
「やだ!いや!!」


バン!
「ここか!」

扉が開いたのと、その声がしたのは同時。
入ってきたのは男の人。その人と目があった。
「てめぇ!」
入ってきた人は、私を押さえつけていた人を蹴り飛ばして、私の手をとると
走って外に出た。


「だ、、大丈夫?」
「え・・・あ。はい。」

—でも、、怖かった。—

「ごめん。遅れて…。」
そう言ったのと、その人が私を抱きしめたのは、同時。
さっきの人と同じような人かもしれないのに、
安心できた。

「でも、無事でよかった。撫子さん。」
「え!?」

怖かったのも忘れるくらい、びっくりした。

「な、なんで私の名前・・・。」
「あ、ごめん。始めまして。俺、水雲良です。」
その人は私を離してぺこりと礼をしてから、そう言った。

「あ…なたが…?」
「ん。ごめ…」

良だったからなんだね。安心できたのは。
言ってしまおう。
終るかもしれないけど・後悔はしない。



「大好きです。」









「はぃ?」

「大好きです。」

私は、
あなたが、

「良のことが、大好きです。」

うつむいて、そう言った後、すとんって音が聞こえた。
あれ?と思って見ると、良が座り込んでいた。
地面なのに。

「汚れちゃうよ?」
そう言ってよく見ると、顔が赤かった。

「良?」
「な、んだよ。お前、武のこと、振ったのによ。」
「だって、好きになったんだもん。良のこと。だから、ふったんだもん。」



「ばかやろぅ。」



「私の選択は正しかったよ?」
「…ずっと好きだったっつーの。」
「誰が?」
「俺が、お前を。」
「良が、私を?」
「ん。だから!嬉しぃんだよ!」
そう言って、彼は立ち上がった。

「俺は、撫子が好きだから、付き合って欲しい。」

「…喜んで。」




ありえないはずの恋が、
始まった瞬間だった。