恋
「大丈夫ですか?」
「はい・・・。なんとか。」
気分が悪くてふらついていた私に声をかけてくれた。
顔を上げて、笑顔でお礼を言った。
再度顔を上げてその人を見た。
その人は笑顔で「どういたいしまして」といった。
ドキ!
私は恋に落ちた。
私の名前は御坂礼乃(みさか あやの)19歳。とりあえず大学一年生。
愛しい人の名前は茅沼有諒(かぬま なおあき)。後々から同じ大学だってわかった。
教えてくれたのは友人の今生昭一(こんじょう あきひと)。
昭一に私を助けてくれた人の話をしたら昭一の友人だった。
偶然に会ったのか、それとも必然としてあったのか、わかる人はきっといない。
偶然に恋したのか、必然的に恋したのかわからないけど、私は恋をした。
「礼乃!飯食いに行こうぜ!」
「ごめん昭一!私、他の友達と約束しちゃったんだ。ばいばいっ!」
「お〜。」
俺の名前は今生昭一。最近御坂礼乃の様子がおかしい。
どんどんきれいになっている。
きれいになり始めたのは、茅沼有諒に会ってから。
有諒は俺の親友。有諒が女性を助けたっていう話を聞いたすぐ後に礼乃から男性に助けてもらったという話を聞いた。
そのときの話していた状況が同じだったから、紹介してやった。
案の定ふたりはお互いを知っていた。
そして俺は綾乃が有諒に恋したらしい事を知った。
俺はずっと好きだった。
彼女がずっと好きだった。
だからこのまま有諒にとられるのを黙ってみているわけにはいかなかった。
俺はアタックしていくことを決めた。
「礼乃!」
「え?昭一?どしたの?」
「あのさ、どっか行かないか?」
「どっか?」
「ああ、何か予定あるか?」
「え、別にないけど・・・。ってあった。」
「は?」
「レポート明日までなの。ごめんね」
私は家の扉を閉めた。
レポートが明日までというのは嘘ではない。
ただ、もう書き終わっていた。
有諒さんの名前が判明してから、昭一の様子がおかしい。
多分、私のことを好いてくれてる。
私が昭一の思いに気づいたのは、数日前。
「礼乃!」
「え・昭一?」
「俺・・・」
「何?・・・ってあ!電車行っちゃう!またね!」
そのときの昭一の目はいつもとは違った。
すごく真剣で、気づいてしまった。
今までずっと気づかなかった。
ずっと友達でいたかった。
昭一の気持ちがわかってしまったけど、私は昭一を好きになれない。
性格とかじゃなく、昭一は昭一で、友達だから。
だから理由を作って、断ってる。
きっと昭一は私が誰を好きなのか知ってる。
だからこそ・・・。
「雨?最悪!」
走っていた。大雨の中走っていた。
そしたら倒れた。記憶が途切れた。
記憶が途切れる寸前、昭一の家の近くだったことに気づいた。
雨が急に降ってきた。
やがて大雨になった。
運良く傘を持ってて家に帰ると、家の近くに綾乃がいた。
たっていたのではなく、倒れていた。
俺は急いで彼女を抱き上げ、家に運んだ。
濡れたままだと風邪をひく。
でも脱がせるわけにはいかない。
だけど、風邪を引かせるわけにもいかない。
結局的にタオルケットを彼女にかけて、見ないようにしながら、服を脱がせた。
「ん・・・」
目を開ける。
見覚えのある昭一の部屋だった。
ふと体を見ると、下着以外、着けていなかった。
「キャ—————!!」
「どうした!」
「昭一!あんた!」
「違う!誤解だ!聞け!」
「何が誤解なのよ!馬鹿!馬鹿!馬鹿馬鹿!」
「誤解だっつの!」
必死で事情を説明した。
数回殺されそうになった。
だけど納得してくれた。
「そうだったんだ・・ありがと。で、服は?」
「洗って乾かした。」
「へぇ。ありがとう!」
「全自動。」
「感激も半分ね。」
「(笑)」
彼女が着替え終わるまで部屋の外にいた。
しばらくして扉の開く音がした。
「ありがとう。じゃあ私帰るから。」
「・・・。」
「え」
急に後ろから抱きしめられた。
「ちょ。昭一?」
外に出ると雨はやんでいた。
大きく伸びをした。
「礼乃さん?」
「ぇ・有諒さん?」
「今、昭一の家から出てきたよな?」
「ぇ?うん。」
「そっか。昭一と、できてたのか。」
「違っ!」
誤解されたと悟る。だけど、家から出てきた昭一はとんでもないことを言った。
「彼女がどう思ってるかはわからないけど俺は綾乃が好きだ!」
「昭一!」
「・・・俺には無関係だ、な。」
「俺には無関係」
その言葉が重くのしかかった。
私は有諒さんの視界には、はっきりいないってことがわかってしまった。
我慢しようと思っても涙が出てきた。
「礼乃・・さん?」
「・・・。」
「礼乃!」
私は涙を流して、逃げることしかできなかった。
サヨナラ。私の愛しい人。
「馬鹿野郎!」
「なんだよ?」
「なんであんな事言うんだよ!好きなくせに!」
「!」
なんでこいつが知ってる?
ずっと前から好きだった俺の気持ちを何故知ってる?
俺が彼女を助けたのは偶然じゃない。
もっとずっと前から見てたんだ。
昭一に初めて彼女の名を聞いて彼女を見たのは、高校の時だった。
彼女をじっと見てるうちに彼女があまり丈夫じゃないことを知った。
助けた日は、彼女のつらそうな姿を見ていられなくなったから。
なんで知ってるんだ?
「お前見てりゃ馬鹿でもわかるさ。」
「昭一・・・。」
「ば〜か!」
俺はケリをつけるために最後になるだろう言葉を言った。
「有諒!俺は彼女が好きだ!お前が追いかけなきゃ、絶対にお前にも、誰にも渡さない!」
「昭一・・・。・・・さっき彼女が出てきたのは・・・なんでだ?」
最後にならなかったな、と苦笑しつつ、答えてやった。
「彼女が俺の家の前で倒れてたからだよ。」
「・・・昭一・・・ごめん。ありがとう。俺・行ってくる。」
それだけ言うと有諒は去っていった。
もう諦めなんてついている。
さっき、彼女を抱きしめた後・俺はきちっと言ったんだから。
「好きだ。」
「昭一?」
「綾乃が好きだ。」
「昭一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん。私、やっぱり、有諒さんが好き。昭一のことも大好きよ?でも昭一は・・・友達なの。」
「・・・・・・・・・やっぱりかなわなかったか。」
「ごめんなさい・昭一・・・。」
「いいってことよ。何もしないで諦める事だけは嫌だったんだ。」
「・・・昭一?」
「心配するな。俺は一生、お前の友達だ。」
「昭一・・・ありがと!」
for all time 永遠に
Good byeさよならだ
My dear愛しき人
In future, これから先
your my best friend一番の友達だ。
俺は走った。昭一から勇気をもらってから。
彼女の家にたどり着き、彼女を呼びながら扉を開けて、中に入った。
「綾乃さん!入るぞ!」
ガチャ
彼女を探した。
そしたら彼女は寝室で泣いていた。
ためらうことなく、手が伸びた。
「ぇ」
「ごめん・・・ごめん。さっき言ったこと・・・本心じゃないんだ。ごめん。ごめん。ごめん。」
抱きしめてひたすら謝った。
しばらくしたら、彼女は泣き止んでくれた。
「ごめんな?」
「ううん。平気。大丈夫。」
「じゃ・・・あ!」
「え?」
決意が揺るがないうちに言おうと思った。
なるべくサラッと。
「言い忘れてた。俺、君が好きだから。じゃ。」
それだけ言うと有諒は部屋の扉から出て行った。
私は唖然としつつも意味を理解し、追いかけた。
玄関で靴を履き終わったところだった。
今にも出て行きそうな有諒の後ろから抱きつく。
「え?」
大きな有諒の背中に顔をつけて静かに言った。
「私も。あなたが好きです。」
そのあと、喜んで赤くなってくれた。
今、私は幸せ。
だけど
恋をすることって、難しいね。
その思いを言うこととか、思いがかなうこと。
だけど、両思いなら、
すごく幸せになれる。
それが恋をすること。