私は今、とってもとっても困っている。 私の名前は紗枝歌(さえか)。とりあえず、高校3年生。でも付属だから皆勉強はしない。 だから皆、部活だとかバイトだとか、恋愛だとかに時間を使っている。 結構格好いい人とか格好いい子が多いから、カップルがいっぱいいる。 私?私は彼氏はいない。だけど、今、すごく悩んでいる。 「紗枝歌〜。」 そう。原因は、これ。私はいつものように無視して歩く。 「紗枝歌!」 その声の主は私に追いついて、隣を歩いている。 「敦也君・・・。」 「敦也でいいってば。」 「私は彼氏以外は君付けする主義なの!」 「俺が彼氏でいいじゃん!」 「いいかげんな返事はしたくないっていつも言っているでしょ!」 そう。私は敦也君に好きだと告白された。敦也君の性格とかを考えると、嘘じゃないって事がわかる。それに、親友の美枝歌(みえか)にも本当らしいっていうことを聞いた。 美枝歌は私の大事な大事な親友。信じられる、大切な人。 まぁ、美枝歌の話は後でするとして、とりあえず、私は告白された。 結構格好いいし、性格もいいし、運動も出来るけど、問題がある。それは、 「紗枝歌———!」 「ゲッ斡樹(あつき)。」 後ろからかけてきて、私の左隣を歩くのは、斡樹くん。斡樹君が問題。なんでかっていうと、 「紗枝歌は俺のだろうが!」 「いつお前のになったんだよ?」 というわけで、斡樹君にも告白された。斡樹君も格好いいし、性格、運動神経ともにOKだし。というわけで、私をはさんで二人は毎日言い争いをしている。 私なりにどっちが好きなのか、わからない。どちらかが好きなんだってことしか、私にはわからない。だから、いい加減な返事は出来ないのだ。 もちろん、斡樹君の気持ちも嘘じゃない。それは、斡樹君の親友の幹彦くんの彼女の枝里から聞いた。ちなみに枝里は私の友達☆! というわけで、悩んでいる。 二人は私のせいで毎日口げんかに似たようなことをしている。 どうしていいのか、わからない。 「紗〜枝歌!」 「美枝歌!」 急に名前を呼ばれてあせったが、そこにはmy friendの美枝歌がいた! 「美枝歌!」 「「あ゛」」 私は二人そっちのけで美枝歌のところに走った。 「美枝歌〜。」 私は美枝歌に抱きついた。 「「あ゛」」 「よしよし。ど〜したの?紗枝歌?」 「相談乗って〜。」 「いいよ〜。」 というわけで私は(結果的に)二人を無視して美枝歌と共にテクテクと歩いていった。 だれもいないことを確認して、私の友達、紗枝歌は話しはじめた。 紗枝歌と会ったのは、高1のとき。高1のときに、紗枝歌を見て、この子かわいいなって思った。だけど、紗枝歌は幸せそうな顔をしてなかった。 ちょいちょいと探りを入れてみると案の定。かわいいがゆえに、いじめられた経験があるらしい。それも生半可な?いじめではなかったらしい。 ゆえに、精神的にちょっと疲れている、というか落ち込んでいたらしい。 私は紗枝歌と少し話して好感が持てたので、紗枝歌と仲良しこよし。になったのだった。 というわけで、紗枝歌は私になんでも話してくれる。 私は、というと、ひとつだけ話してないことがある。 まぁそれは置いておいて、紗枝歌は話し始めたのだった。 「美枝歌、私ね、絶対に、斡樹くんか、敦也くんが、好きなんだと、思うのね。」 「うん。私もどっちかだと思う。」 といいつつ、どっちかわかってたりするけど。 「でもね、私・・・どっちが好きなのか、わからないの・・・。どうしたら、いいんだろう?」 「うん。私が思うのはね、まず、いい加減な返事をしないこと。」 「うん。私もそうだと思う。」 「で、次ね?いい加減な返事をしないってことは、いい加減なへんじができないことでしょ?当たり前だけど。」 「?うん。」 「だから、二人をいくら待たせても、紗枝歌は、この人が好きだ!って言い切れるようになるまで、返事をしないこと。私、紗枝歌が出来るのは、そのことだけだと思うよ。」 「美枝歌!」 「わっ!」 急に紗枝歌は私に抱きついてきた。 「紗枝歌?」 「ありがとう!」 「うん!」 紗枝歌は私に2回くらいお礼を言ってくれた。そして、用があるからと、私の元を去っていった。 「ふぅ・・・。」 私が紗枝歌に隠してること。それは、私が敦也君を、好きだって事実。 紗枝歌にはどうしても言えない。 もし、敦也君を紗枝歌が選んだら、それは敦也君にとって幸せなことだから、いいと思う。 だから、言えない。 紗枝歌には、紗枝歌の気持ちに素直になってほしいから。 そう私は思った。 私がいったい誰を好きなのか。 そのことに気づいたのは、いや、気づかされたのは、今日、この日だった。 今日、私と美枝歌と斡樹くんと敦也くんは、4人で出かけた。 ちょっと体調がかんばしくなかったけど、本当にちょっとだから、いいと思った。 私は主に美枝歌と話し、斡樹くんと敦也君は、二人でパソコンのことや、勉強のこと。遊びにいくという話などをしていた。 私に話しかけられないということで(隣に美枝歌がいて、私は美枝歌とずっと話しているから。)意気投合したらしい。 私たちはあるデパートの7階に向かうため、エレベーターに乗った。 学校の入試があるから今日私たちは休みなのだが、そのせいだろうか?人はまったくいなかった。 エレベーターに乗る前から少しだけ感じていた違和感。 大丈夫。大丈夫。そう思っていたのが、ピークに来た。 一刻も早く。一刻も早く、ここを出たかった。 ふとエレベーターを見ると現在2F. 私は急いで3階と4階のボタンを押した。 「紗枝歌?」 運が良かったのか、タイミングがよかったのかはわからない。エレベーターは3階で止まった。 私はくずれるように、エレベーターの外に出て、座り込んだ。 「紗枝歌!」 いち早く斡樹くんが、私の後を追って出た。 「だい・・・じょうぶ。美枝歌たちに、先に行ってもらって・・・。」 「ああ。」 斡樹くんは、私の頼みを聞いてくれた。 美枝歌たちは了承し、上へ上昇した。 エレベーターの扉が閉まり、上昇を開始した。 私は敦也君に見えないように、5階と12階を押した。 「紗枝歌のところ、行かなくて良かったの?」 「紗枝歌が、斡樹のこと。好きなのなんて、見てればわかるから。」 その言葉を聴いて思った。 この人は本当に、紗枝歌が好きなんだって。 私のことなんて、ぜんぜん見ててくれなかったんだって。 そこでエレベーターは5階に止まった。 俺は疑問を感じた。 俺たちが向かうのは7階。誰かが押したんだろうと思ったけど、扉が開いても誰もいなかった。 となれば、押したのは美枝歌しかいない。 「美枝歌?」 「敦也君・私が誰を好きなのか、知ってる?」 「え?」 美枝歌は扉の外に出てから、そう聞いた。 「いや・・・。」 俺が戸惑っている間に扉がしまりそうになった。 俺はあわてて開くほうのボタンを押そうとした。 だけど、押せなかった。 そのときに放たれた、とんでもない言葉。 しまる直前に言われたその言葉。 揺れる瞳で言われたその言葉。 瞳から一滴の涙が落ちて言われたその言葉。 「あなたよ。」 そして扉は閉まった。 押した覚えがないのに上昇している。 俺はもうどうでも良くなって、エレベーターの端に背をつけて、考えた。 あなたよって・・・なんだよ。 私が誰をすきなのか知ってる?・・・一言も、何にも言わなかったじゃねぇかよ。 俺のこと、好きでいてくれたのか・・・美枝歌? 俺が紗枝歌のこと好きなコト知ってて・ずっと・・・? 俺が見てないの知っててずっと? 紗枝歌にも言わず、たった一人で俺に対するその想い。抱えててくれたのか? でも、俺、答えらんねぇよ。 好きだとか、嫌いだとかってコトじゃない。 紗枝歌も言ってた。 あいまいな答えはしたくないって。 俺も、あいまいな答えはしたくないんだ。 お前をお前としてみるためには、時間が必要なんだよ。 言うべき。だよな? 俺は考えを整理して、決意をした。 だから、美枝歌の降りた5階までエレベーターで降りた。 5階まで降りると、俺はあいつをさがした。 どこにいるのかわからないけど、とりあえず探した。 俺はふと階段の側を通りかかった。 「や!」 「?」 女の子の声がする。 「いいじゃん。なぁ?」 「やだ!」 どうやら半強制的なナンパらしい。 「いいじゃん?一人なんだろ?」 「嫌!」 「一人ってことは、誰も連れがいないってことだよな?」 「ちょ!やだ!離してってば!痛い!」 俺はその話し振りを聞いて、放っておくと、半強制的なナンパ(脅し?)をされてるほうが、やばいことになりそうだったから、声をかけることにした。 「おい!」 「ぇ。」 「ん?」 男に腕をつかまれている女の子をじっと見た。 「美…枝歌?」 「敦也…くん?」 「ちっ野郎ずれかよ?まぁいいや。おい!そこのお前!こいつ、借りるぞ?」 「は?」 「いいじゃん?どうせ女なんて、俺らのためにいるんだし?」 俺はそのときの男の言い方に逆上し、怒りバロメーターがMAXになった。 「てめぇ!」 俺は美枝歌の腕をつかんでいた男の手を振り払い、美枝歌を救出した。 そして、面倒なことになりたくないから、美枝歌を引っ張り、エレベーターに乗り込んだ。そして当初の目的地7階を押した。 「大丈夫か?」 「え?うん。多分平気。」 「そっか・・・。」 沈黙が流れた。 ふとエレベーターの操作ボタンの側を見ると、7階まではあと少し時間がある。 俺は自分の正直な気持ちを、言おうと思った。 「あのな、さっきのことだけど、俺、正直に言うと、お前のこと、見てなかった。だから、気持ちがわかんねぇ。」 「そんなの・・・知ってる。」 「だから、これからは俺、お前を見たいんだ。」 「?」 「お前を見ていたい。だから、お前見て、気持ち確かめて返事するから、待っててくれないか?」 「敦也・・・くん。」 俺の目の前の美枝歌は再び涙をこぼした。 「はやく、わかんないと、他の人になびいちゃうから。」 「努力します。」 「ん。そーして。」 そうして、美枝歌は涙を拭き、笑ってくれた。 そして、こちらは、エレベーターを降りたすぐあとの二人。 「大丈夫か?紗枝歌。」 「・・・ん。大丈夫・・だから、斡樹くん、7階に行っていて、いいよ?」 好きなやつのそんな声を聞いて、七階に、俺は行くことが出来ない。 だから、休めそうな場所を探すために見回した。 ふと見ると、近くに椅子があった。 斡樹くんは、私の言葉に何の返答もくれなかった。 だからふと疑問を持って斡樹くんを見た。 すると、斡樹くんと目があった。 斡樹くんは急に顔を赤くしたが、顔を左右に振った。 「どうしたの?」 そう紗枝歌が聞いてきた。 気持ちはずいぶん前に打ち明けている。だからといって、いえる言葉といえない言葉がある。 君のかわいさに照れて赤くなりました。 とは絶対に俺には言えない。 ついでに言えば、その後左右に顔を振ったのは、そんな場合じゃないってことに気づいたからだ。 俺は、なんでもないと答えて、考えていた行動を実行した。 「なんでもない。」 斡樹くんはそういった。 なんでもないようには見えないけど、と心の中で思っていると斡樹くんは、ごめん。といった。 「え?きゃ!」 急に身体が宙に浮いた。 「斡樹くん?」 胸が高鳴った。なぜならお姫様抱っこをされているから。 「ごめんな。ちょっとだけ?我慢してくれ。」 「え?え?」 斡樹君はそういうと、私を抱いたまま、歩いていった。 そのときに見た横顔が格好よかった。 少したつと、斡樹くんは私を下ろしてくれた。 そこには椅子があった。 —あ— 斡樹くんの真意を知り、私は隣に座った斡樹くんに礼を言った。 「ありがとう。」 「急にごめん。それとごめん」 「え」 急に私の頭の後ろに斡樹君の手が回され、そのまま斡樹くんの肩に顔が当たった。 そんな経験が一度もなかった私であるから、ドキドキはとまらない。 「あ・・・つきくん?」 「肩貸すから、少し休め。」 「・・・・・・でも」 「俺ならいいから・な?」 「・・・・・・ありがとう」 わたしはお礼を言って、斡樹くんの肩に顔を乗せて、目を閉じた。 しばらくすると、今まで感じていた気持ち悪さだとかが、消えた。 それは休んだだけではないのかもしれないと思った。 それと同時に、私は誰が好きなのか、わからされた。 斡樹くんと敦也くんのことを考えるときに、必ず斡樹くんをはじめに言っていたことに私は気づいた。 それに、敦也くんのときは結構格好いい。という説明が、斡樹くんのときには格好いいとなっていたことにも私はきづいた。 どうしてわかっていたのに、気づけなかったんだろう? 私の中で疑問は広がったが、軽く流すことにした。 となれば、敦也君には悪いが、今のうちに言うべきだと思った。 人に告白されたのも初めてだったが、人に告白するのも初めてで、かなり緊張した。 だけど、ずっとずっと待たせたから、一刻もはやく、言いたかった。 私は肩に顔をつけたまま、斡樹くんの服をつかんだ。 「紗枝歌?」 「わたしね、わかった。」 「え?」 「わたし・・・気づいたの。斡樹くんが・・・」 「俺が?・・・何?」 「斡樹くんが・・・・・・・・・・ん〜〜。ごめん!やっぱ恥ずかしい!」 そう。やっぱり恥ずかしい。だから、斡樹くんなら、わかっていくれるという方法で思いを伝えることにした。 紗枝歌がさっきからおかしい。何だろう? 俺は紗枝歌を感じながら待った。 「・・いいたかった言葉、恥ずかしくていえないけど、代用して言うね?」 「??」 ますますわからない。だけど、紗枝歌は俺に告げたんだ。 俺がずっとほしかった言葉を代用して、告げてくれた。 「・・・・・斡樹。」 と。 斡樹。そう呼ばれた。ということは、俺と敦也という二人の人間から、俺を選んでくれた。そういうことで、まぁ訳せば、好きです。という意味になる。 「まじで・」 紗枝歌は俺の肩に顔をつけたまま、こくん、とうなづいてくれた。 俺は紗枝歌の背中に手を回した。 紗枝歌は最初びくっとしたけど、少しずつ俺の背中に手を回してくれた。 「さんきゅ。まじうれしい。」 「本当に?」 「え?」 「だって、私、代用した言葉でしか、いえなかったのに・・・。」 「それでもいい。いつか言ってくれれば、それでいい。」 「斡樹・・・」 「やべっ!まじうれしい。さんきゅ。紗枝歌。」 「・・・うん。」 俺たちはそれからすぐに抱擁をとき、敦也たちのまつ7階にむかった。 その先で俺たちが見たものは、あきらかにさっきと違う二人の姿。 俺はなんとなくだけど、二人の気持ちに気づいた。 まぁさすがに敦也は少し残念そうだった。 (敦也たちは俺のことを斡樹と呼ぶ紗枝歌を見て、俺たちが彼氏彼女の間柄になったことを知ったのだ。) まぁ、とりあえず、二人もうまくいきそうだし、俺たちもうまくいった。 だから、また、いつもの4人組で、大学へ行きたいって思ったんだ。