ふったのへろへろ書評(短評)
 
 南伸坊『顔』
 (98) ちくま文庫
 この本、おもに朝の通勤混雑列車の中で読んでいた。表紙にでかく「顔」と書いてあり、各ページに必ず顔の図版があるので、よく視線があつまった(ような気がする)。そのたびに、なんとなーく「こういう本は不謹慎かな」などと思いながらも、おもしろいのでやめられなかった。

 「顔面学」あるいは「顔面科学」事始とうたわれたこの本、決して「人相占い」のたぐいではなく、むしろそういうことを求める人間の顔に対する視覚構造と心理に、面白く、フカークせまっている。一つ一つのテーマが、見開き2ページで、合成写真のや巧妙な顔の配列写真などの視覚的資料をふんだんに提示されつつ、話題にされる。文章はエッセイ調。とっても笑える・楽しめる本なのだ。

 おもえば、人間は「人の顔」に興味をもち、面白がり、批評し、気持ちよくなったリ気持ち悪くなったりするなんとも奇妙な存在だ。かく言う私も例外ではない。電車で街で、人の顔ばっかり見ていると言っても過言ではない。なんだかやはり根本的な興味なのですね、「顔」は。自分自身の顔は、鏡で反転したものか、写真・ビデオなどの記録媒体でしか、見えないのにね。そうだからこそなのかも知れないが。

 とにかく、この本はリッパな<現象学的顔学>になっていると、おおげさな評価をしておこう。こういうガクモンっていいな。 (001218)
 
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