ふった映画日記2001年
ゴースト・ドッグ Ghost Dog the way of the Samurai』
 監督:Jim Jarmusch  (VTR)
 
 ゴースト・ドッグと呼ばれる黒人の殺し屋、彼の愛読書は『Hagakure(葉隠れ)』。アメリカのある街で、サムライとしての生き方を実践し、「主君」と仰ぐマフィアの幹部に仕え、彼のために殺しを引き受ける。連絡手段は伝書鳩。報酬は「秋の最初の日」に一年分まとめてもらう。
 ——この奇妙な設定に違和感を感じるかも知れないが、ジャームシュ特有の「ユーモア」を漂わせる快作に仕上がっている。久々に映画とともにある充実した時間を与えてくれた作品だ。

 「ユーモア」を身にまとっているのは、なにもこのゴースト・ドッグと呼ばれる存在についてだけではない。
 通常「マフィア」と呼ばれて映画に登場する存在のイメージから、あまりに遠く離れた仕方で造形された「マフィア」の面々がかもしだすおかしさ。彼らがつねにみているアメリカの有名なマンガアニメ(ベティちゃん、ウッドペッカー、フェリックスetc)とストーリー進行との平行性のもつおもしろさ。そして、フランス語しかしゃべれないアイスクリーム売りをしている親友と主人公の「会話」。これらがすべて時には声を上げるほどおかしいのである。
 主人公ゴースト・ドッグの殺しの場面においてさえ、その非現実的な様式「美」に、おかしさを感じた。

 プロット(特に結末)もうまく、なかなかみせる。前作ジョニー・ディップ主演の「デッドマン」もよかったが、甲乙つけがたい。初期よりもよくなっていくのではと思わせる数少ない監督だ。(000916)
 
映画のメニューに戻る
ホームページに戻る